コカコーラ・レッスン (1980年)

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感想・レビュー・書評

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  • 抜けるように真っ青な空が
    キラキラその色を海に反映させて
    世界中が輝いて見えるとき、

    隣りに連れがいる人はラッキーだ。
    「キレイだね。」
    「キモチいいね。」

    その後は微笑みあうだけで、
    透き通った宝石みたいに変化した自分の心を
    (ほら)と、見せ合う事が出来る。

    おそらくは、その行為で99パーセントの満足は得られ、
    頭も心もリセットしたかのごとく軽くなれる、はず。

    海と世界と自分の距離は、果てしなく近づき、
    (いいんだ。これでいいんだ。)
    と、何かに納得してしまうかのような、
    自分を顧みる事が出来る…はず。

    が。

    ひとりの時。

    残りの一パーセントがどうしても腑に落ちないのだ。

    「青く光る海」は「青く光る海」としてしか網膜に、その像を映そうとはしない。
    海を僕はどうして「海」だと知っているのだろう。

    僕を僕はどうして「僕」だと信じる事が出来るのか。

    どうせ、答えも出ないし、
    誰かに問う事も出来ない思考は、

    ひとりきりの時を狙って、襲ってくる。

    少年は
    その時、言葉の恐ろしさを知った。

    「海」が、海が、海が・・・

    確かに言葉としての「ピース」は持っている。

    でも、

    パズルにはまらない。

    おかしいな。

    いつもはピタッとはまる場所があるのに、

    何故今ははまらないんだろう?

    「僕」と言うピースも形を変えて、この世界にいつしかはまらない形に変形していた。

    どうしよう?

    コカコーラの栓を抜くことも出来ないくらい、
    少年は言葉の真の意味に怯える。

    すざましい
    言葉の威力が、この詩のなかにある。

    それを「レッスン」と軽く飛ばしてしまう辺りもたまらないのだ。

  • 言葉を紡ぐ天才だと思います。

  • シュールレアリズムの欠片を拾ってきて1つの箱に無造作に入れてあるような本。なのにその断片一つ一つに妙な存在感というか生々しさがつきまとう。ありえないのに確かにリアルタイムでそれを体験している、夢の中の物事の感触のようでもある。

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