萩尾望都作品集〈13〉11人いる! (1978年) (プチコミックス)

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著者 : 萩尾望都
  • 小学館 (1978年5月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)

萩尾望都作品集〈13〉11人いる! (1978年) (プチコミックス)の感想・レビュー・書評

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  • 萩尾作品を読めるだけ読もう計画第二弾。

    前半の『11人いる!』は萩尾先生の傑作と謳われる作品の一つとのことで、期待に胸ふくらませつつ本を開いたら、なるほどちょっとびっくりしてしまうぐらい面白くて、一気に作品のとりこにされてしまった。SF、サスペンス、ミステリーにラブロマンスと、様々な要素がうねるように絡み合って衝撃のラストへ持ち込まれる展開がすごい。話の筋自体は、今ではそう大して珍しい類のものでもなくなってしまったけれど、当時としてはこれを少女漫画で真剣にやったというのが衝撃だったんだろうなぁ。猜疑心を抱えたまま、孤立した閉鎖空間に閉じ込められたみんなの不安と緊張が痛いぐらい直に伝わってくる。読者が「11人目」ではないと分かっているはずの主人公のタダですら、連発する異常事態を前に自らの存在に疑問を抱き始める。最初から丁寧に伏線が張り巡らしてあるので、よくよく読めば最後のオチを言い当てるのはそう難しいことではない。にも関わらず、個性豊かなキャラクターたちと一緒に考え、悩み、約束の53日目が来る時までどきどきしてしまうのは、やっぱり作者によるキャラや読者の追い詰め方が上手だからなんだろうと思う。とにかく臨場感が素晴らしいのだ。さんざん焦らされ心配をさせられて、最後の最後まで読まないと結局安心することができないせいか、ラストのオチを確認できた後の安堵感と爽快感は筆舌に尽くしがたい。読後感の良さ、という意味では萩尾作品の中でも群を抜くのではないか。それとも、私があまり幸せな萩尾作品を読めていないというだけだろうか。
    他にも語ろうと思えば語れることはいくらでもあるものの、とにかく「フロルが可愛い」。これに尽きると思う。タダとの体格差を気にするフロル、王さまにこっぴどく叱られるフロル、みんなを心配して発病を隠していたフロル…。元々「両性体」というワードに強烈な魅力を感じていたのが(だからヌーもお気に入りのキャラだ)とりわけ最後の「オレ、おまえがそういうなら女になってもいいや」のフロルの可愛さには自分の中の何かが爆発した。タダもこれにやられきってしまったのだろう。お幸せに!二人が結局くっついたのかどうかは分からないけれど、どうやら続編があるそうなので、それを読むまではいろいろと想像する楽しみを残しておきたい。とはいえ、くっつかなくても二人は一生良い友人同士でいるのだろうなと思えるところが彼らの実に微笑ましい部分ではある。

    一方で、後半の「精霊」シリーズは、可愛らしい雰囲気の中に一抹ぞくりとさせるものを含んだ不思議な連作だった。第三次世界大戦を経て世界の記録がいったん消滅した後の世界で、超能力を持ち人間の倍以上の寿命を持って生まれてくる「精霊」という存在。彼らは自分たちがどこから生まれたのか、何のために生まれたのか、そしてこの世界において何をなすべきなのかも分からずに、いつしか子どもを身ごもり、家族を作って、新たな生命のフェーズへと移行していく。「新人類」というのはSFにおいては(最近ガンダムを見終わったばかりなので、この話には真っ先にニュータイプの存在が頭をよぎった)頻繁に取り沙汰されるテーマではあるけれども、新しい生命、これからの生命という問題に対して、萩尾先生が強い関心を持っていたことがよく分かる。竹宮先生の『地球へ…』に出てくるミュウもそういった「新人類」に当たる存在だろう。そうして、竹宮先生と言えば、恒例のコマの内外に書き込まれる落書きで「ダーナ:萩尾望都、リッピ:増山法恵、カチュカ:竹宮恵子」という風に書いてあったのだけれど、これはキャラクターのビジュアルとしてこの二人を参考にしたという意味?それとも性格的なキャスティングということだろうか、だとすればダーナを自らに当てはめた萩尾先生はずいぶん奔放な人と言うイメージを持たせるけれど…。それ以外にも、各所に竹宮恵子先生の名がこっそり落書きしてあって、二人の仲の良さを窺わせる。この頃は確か大泉サロンもまだ機能していた頃だろうし、同じ志を持つ仲間たちと協力し合いながら作品を作りあげていく体制ができあがっていたのだろうなと勝手に一人でしみじみしてしまった。
    とはいえ、正直なところ自分の中でもうまく消化しきれていないシリーズだとは思う。「精霊」というのが一体何を象徴しているのか、ダーナの息子が第二のイエス・キリストかもしれないというくだりも、聖書を斜め読みした人の妄想のようで多少げんなりしてしまったところもあるし……それでも科学とファンタジーが一緒くたに混在する独特の世界観は、新鮮な感情を掻き立てると共に、どうしようもなく後味の悪いものを読者に残す。それは多分、ファンタジーとしてこの作品を楽しむ以前に、自分たちもまた「精霊」たちにとっては滅びいく旧人類の側に属する人間だからで、その日を実際に目にする時が来るかどうかは別にしても、いつの日か人類はこうした大きな変化と対峙しなければならなくなるんだろう。そんな遥か先の未来の可能性について深く考えさせられる作品だった。

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