沈黙のユダヤ人―ソビエト・ロシア旅行から帰って (1978年) (白水叢書)

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  • スターリンが最晩年に発布しょうと考慮していた決定の1つに、ユダヤ人をシベリアへ大量流刑する計画があった 。

    ソビエト連邦でユダヤ人生活が消滅するとすれば、それは青少年がユダヤの生活を引き継いでいることを拒んでいるからだ。だからこそ、ユダヤ人の学校も出版社も図書館もクラブもないのだ。マルクス主義国においては、ユダヤ教は時流に逆行している 。

    ソ連の新聞雑誌上ではイスラエルに対して組織的に悪罵が浴びせかけられ、イスラエルが世界中で最も罪状の重い国に仕立てられても、ユダヤ人はそんな中傷をあまり真面目に取りすぎたりはしない。侵略政策だの、植民地主義の狙いだの、領土拡張哲学だの、警察国家体制だの、人種差別立法だの、労働者階級に対する搾取だのと、あらゆることが言いたてられている 。

    ソ連のユダヤ人が逃れる先はただイスラエルのみ。他に行く先はない。アメリカは彼らの気持ちをあまりそそらない。西ヨーロッパも同様である 。

    クレムリンは、ユダヤ人が自分自身の価値体系に即して自らの文化を発展させてゆくことを妨害することによって、ユダヤ人を完全同化の道へ押しやっているように見える。ところがユダヤ人はすべて、ロシア社会に溶け込んでいこうとすると、とたんに諸々の難関に衝突することとなる。したがって、それらの難関がこの同化過程の妨げになっている。矛盾した政策である。その結果、問題はつねに尖鋭さを失わない。ユダヤ人はユダヤ人であることも非ユダヤ人であることもできない 。

    ソ連ではユダヤ人であると人種差別も横行している。職場で昇進しようとすると、ユダヤ人はウズベク人、アルメニア人、タジーク人の同僚の知らないような障害に衝突することとなる。陸軍部内の高級将校はごく僅かしかいないし、外交畑では上級幹部はさらにいっそう少ない。ソビエト連邦はユダヤ人がいなくても構わないのだということだ 。

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