経済発展の理論〈下〉―企業者利潤・資本・信用・利子および景気の回転に関する一研究 (1977年) (岩波文庫)

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  • シュンペーターは、「孤高の哲学者」と言われるが、得てして彼の理論は独特である。それと同時に、常に「個々の具体的な事象」には惑わされないし、かつそのような言語に反駁を加え続ける。シュンペーターは「経済学とは科学だ。」を信念に持ち続けたし、この本からも徹底した客観的な分析が述べられ続けている。

    とはいえ、同じことを何度もいっているような気がしたり、「あの時の言葉はこういうことだったのか。」と思われることも多い。本人もそれを自覚しているのか、上巻のまえがきでも「この書物の中からなにものかを獲得できるとおもうほどの人は、これを熟読しなければならない。」といっている。たしかに冗長で複雑な言い回しが多いし、結局何が言いたいのか分からないことがおおい。おそらく原作(英語ないしドイツ語)で、関係代名詞を多用しているのであろうと推測するが、これはかの大哲学者カントにも当てはまる。おそらく執筆しながら思い出しつつ書いてるのかもしれない。
    そのような学者は、得てして講義が面白い人が多いようだ。個人的にもシュンペーターは、理論の正当性や私の彼の理論の理解の程度はともかくとして、彼の「経済学とは科学である。」という姿勢には大いに共感を呼ぶところであるし、むしろ尊敬している。一重二重にも叶わぬ願望であるが、(時代的に、また英語とドイツ語が堪能でないなどの要因で、)彼の講義やゼミには参加してみたい。

    内容についてだが、彼も土地や利子に関しては悩んだようである。「土地それ自体に価値はない。産業機械などと違って、それを見いだす機会が正常な経済循環のもとでは起こりえない。その用役が売買されるに過ぎない。土地の価値を意識することがある唯一の機会は、土地の売買によってのみである。それでもなお土地が売買されるというのは、偶発的で、浪費癖とか経済外的要因によるものであろう。」と云う。
    また利子についても、「貨幣額の所有は大きな貨幣額を生むための手段である。またこのため、人々は営利生活において現在額を将来のそれに比して高く評価する。これは一種の打歩である。経済発展においては信用の授与と信用の獲得とは経済過程の本質的部分である。」とする。実際に商業信用は、自分の資本の限度を超えて事業を拡張したい時になされるわけで、その意味に於いて、正しいようにも思える。ただし手形割引などがこれに当てはまるのか・・・とも思うのだが、どうであろうか。

    となかなか、難しい。ただし経験に基づく実体経済を具に研究しているのだ、と思う次第だ。なかなかどうして、現代資本主義を測るための指標の一つとなろう。

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