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感想・レビュー・書評
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高給を得ながら、屋根裏のような質素な部屋に住み続ける山名耕作。そこまでして溜め込んだ貯金はなんのためなのか?横溝正史らしいといえばらしいが、探偵色が少なく、怪談やSF、はたまた純文学的作品も含む短編集。
ミステリ風の作品は、小噺という感じの軽いオチが多いのだが、純文学風の「夫婦書簡文」や「丹夫人の化粧台」といった作品の余韻がなかなかよろしい。乱歩の作品と同名同テーマでほぼ同じストーリーである(そこがミソなのであろう)「双生児」や、正体不明の夫人に魅入られる「カリオストロ夫人」という、SFがかった作品の暗さが、なんとも味わい深い。
横溝正史の短編というと、どうしても悪ノリがすぎる物が多かったが、本作は大人向けと割り切って書かれている作品ばかりのため、落ち着いた雰囲気である。
時々使われる書簡文や遺言状は、書体が古臭くてお世辞にも読みやすいとは言えないが、それ以外は現代でも通用するのではないか。
☆一つマイナスにするのは、どうしてタイトルは子供向けや、悪ノリの時と同じなんだろうかね?というところ。
電子書籍での読書におすすめです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
イメージ参照(http://kentuku902.seesaa.net/article/387160273.html)
(収録作品)川越雄作の不思議な旅館/山名耕作の不思議な生活/鈴木と河越の話/ネクタイ綺譚/夫婦書簡文/角男/双生児/片腕/秋の挿話/二人の未亡人/カリオストロ夫人/あ・てる・てえる・ふいるむ/丹夫人の化粧台/ある女装冒険者の話