経済発展の理論〈上〉―企業者利潤・資本・信用・利子および景気の回転に関する一研究 (1977年) (岩波文庫)

  • 1977年9月16日発売
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  • 以前からずっと読もうと思っていたシュンペーターの「経済発展の理論」である。

    以前岩波新書の「シュンペーター」を呼んだときにも触れたことであるが、この著書は、シュンペーター本人の「壮大な経済学の体系」である。彼自身も「この本を索引的に読むことはできない。(中略)それは実際に長い思考関連の一環として独立のものではない。孤立してこれを読んでも、未解決の問題や明白な意義を跡に残すに過ぎない。この書物の中から何者かを獲得できるとおもうほどの人は、これを熟読しなければならない。」と書いている。実際にこの本は、本当に難解で、一見すると冗長であるかのような言い回しを多用している。所々は、「字面を追ってめくる」かのような状況にもなりかねない。しかしながら後からそういう事だったのかと思わせるところも少なからずある。

    第一章は経済現象の平板な解説である。彼の経済学に対する姿勢と基本的な見解が述べられている。彼は独特な経済学の体系を持っていると評することがあるようだが、彼自身は「経済学は科学であり、科学に学派はありえない。」と考えていたので、彼自身の学派は存在しない。故に彼は彼なりの考えを持っていたがために、結果的に孤立してしまったのかも知れないが・・・。
    彼は「利潤は矛盾・不完全より生まれる。」と考えているようだ。

    第二章ではついに彼の経済発展の根本現象について触れられる。彼の云う経済発展とは「与件の変化による経済変動ではなく、経済の循環条件そのものが変化する」ことによる経済発展のことを指し示す。これは彼の経済発展の「五つの条件」のことだ。「①新しい財貨」「②新しい生産方法」「③新しい販路の開拓」「④原料の新しい供給源の獲得」「⑤新しい組織の実現」である。しかしながら経済内の新結合の要件は天から降ってくるわけではなく、生産手段のストックから生まれるとし、彼曰く「卵と鶏の関係に等しい」としている。少しよく分からないといえばよく分からないが、なんとなく普段から企業家はやっているような気もする。現に彼もよく「実学的に」「通俗的に」といって、議論を煙に巻いているような気もするが、現に起こりえているようにも思える不思議でもある。

    第三章では彼の信用と資本に関する意見が書かれている。シュンペーターは基本的に等価交換を前提としているようで、現に企業家に融資しているのは銀行であり、結果的に銀行が経済発展に欠かせないと云っているようである。また信用自体が資本主義の円滑な遂行のためには必然的に存在し、ないとはってんはいちじるしく困難になるであろうと推測している。故にこのような考え方はマルクスのそれに近いようにも思う。現に商業信用は必要となる貨幣も少なくて済むのである。
    また資本についても触れているが、それは「いつでも企業者の自由に委ねられる貨幣及びその他の支払手段の金額」と定義しており、その「生産手段を持っていること」について際立たせるとキリがないから、本来的に「資本であるそれ」はないのだ、としている。確かに生産機械も商品だし、資本はしばしば貨幣で存在する。そしてその機械の価値が生産された商品にしたたり落ちるなんという表現もされる。確かにその意味では貨幣の代替物だから、本来は貨幣なんだ。ということであろうが、あまりに議論を平板化しすぎていはしないだろうか。

    以上のように、彼の文章は非常に難解で、一度では全て読み取ることはできなかったように思う。冗長な文章となってしまったが、以上上巻を読んだ雑感である。

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