秘密組織 (1971年) (創元推理文庫)

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感想・レビュー・書評

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  • 読んだのはグーテンベルグ21による電子書籍だが一ノ瀬直二訳なのでこちらで登録。クリスティのおしどり探偵トミーとタペンスの最初の事件というか前日譚。タペンス(一ノ瀬訳ではタッペンス)のスペルに関する説明は確かに覚えているけど他はまるで記憶になかった。政治的・時代的背景も地名も知らず主人公たちにぶんぶんと振り回されて読んだ(であろう)小学生にはちょっと難しい内容だったか。

    第一次大戦の終戦からしばらく経ったロンドンで失業中の幼なじみ二人が偶然再会し、悲劇のルシタニア号から持ち出されたと信じられる極秘文書の行方を巡るスパイ戦に頭から飛び込んでいく。

    もちろん現代のシャープな本格推理に比べたら粗はあるし現代では成立しない冒険譚だけれど、この時代ならではの荒唐無稽さがクラシカルで楽しい。電話が各家庭に普及していなかった時代に、電報を打ち、伝言を託し、タクシーと列車を利用してイギリス中を駆け回る二人とその協力者たちの行動力には恐れ入る。(当時としてはそれが当たり前だったんだろうけど。)
    「おそまつだが、見て気持ちのいい顔」で仕立がいい着古したスーツを着たトミーと、「とても美人とは言えないものの」「個性と魅力」があり短髪で「非常に短い、いささかみすぼらしいスカート」をはき、煙草を吸うタッペンスの外見描写の組み合わせや、土壇場でのトミーの「イギリス的なくそ落ち着き」、「死ぬのは馴れてますから」とにやりとするところなど、クリスティが描く二人の造形が魅力的。しかし現代女性の場合、社会的タブーが少ないだけに「他人の言うことなんか聞きません」アイコンとしてのファッションは難しいな。
    あと本筋には関係ないんだけど、いとこ婚に関するタブーがアメリカとイギリスにはないらしいことを心にメモ。

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