世界の文学〈31〉ドノソ/夜のみだらな鳥 (1976年)

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制作 : 鼓 直 
  • 集英社 (1976年発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (454ページ)

世界の文学〈31〉ドノソ/夜のみだらな鳥 (1976年)の感想・レビュー・書評

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  •  1970年発表、チリの作家ホセ・ドノソ著。名門アスコイティア家の末裔ドン・ヘロニモの息子ボーイが誕生した。しかしボーイは奇形だった。ヘロニモはボーイのために不具者を掻き集め、美醜の逆転した理想的な屋敷を作り上げ、そこに息子を住まわせる。屋敷の管理を任された秘書ウンベルトは大吐血し、奇形の血を入れられたことにより自らも奇形となる。彼は聾唖の老人ムディートとなって修道院に逃げ込むが、そこは魔女や奇跡に関する噂が飛び交う、行き場のない老女達がごみのように溜まる場所だった。物語はウンベルトの主観によって語られるが、彼の持っている「他人と自分を同一視する」という性質により、事実は湾曲され、分裂病的な狂気が溢れ出す。
     呪いの言葉の羅列を見ているような異様な小説だった。徹頭徹尾、分裂病的だ。ウンベルトはヘロニモや聾唖者や赤ん坊など何にでも変身してしまうため読み始めはかなり混乱するが、慣れてくると何となく彼の抱えている強迫観念が分かってくる。しかしそれが分かったとしても、そもそもストーリーの全貌を理解することは不可能だ。何でもありの悪夢、一見そう思える。ただ、彼の強迫観念(例えば医者に関して。不具者の臓器を入れ替えるなんて実際にはまずできないだろうから、それは彼の思いこみだろう)を考えるとあり得そうなストーリーはそれなりにしっかり見えてくるし、そのストーリー自体は相当ガッチリ作ってあるので決して何でもありというわけではない。候補が幾重かに分岐している、そんな印象を受ける。
     全体的に冗長で反復的なので文章に酔いそうになるが、最後の方の展開は何かハッとするものがあった。いよいよ崩れていく修道院と町人を襲う老女達、ようやく屋敷にやって来たヘロニモを嘲るボーイ、老女達が去る日に修道院に転がり込んでくるカボチャの象徴的な雰囲気、取り残されてまさに怪物インブンチェ(魔女が人間をさらって九つの穴を塞いで作るらしい)と化すウンベルト、消える語り手。決して読み終えてカタルシスがあるわけではないのだが、得体のしれない不気味な傷を心に残していく、そんな小説だった。

  • この作品を読みたいが為に、全集を買った様なもの。古本屋でバラ売りしてくれなかったから。けど、今はそれに感謝してる。

  • 奇書である。

    上院議員の畸形の息子を育てるために、異形の者ばかりが集められた館を管理する男の独白がベースになる。

    この語りが異様。文字の氾濫。男は次々と別の人物に姿を変え、時制は簡単に前後の約束を狂わす。エログロあり、なんでもありの妄想世界は、物語終盤に向けて熱量を加えて加速してゆく。

    ストーリーを追う楽しみは、ここにはない。
    一読すればわかるこの異様な世界は、常識をゆさぶるために持ち出してきたナンセンスではなく、宗教的倫理を逆さまにするために持ち出してきた背徳ではなく、不真面目を真面目に演じているのとも違う。

    降霊的とでも云おうか、土地とその人間について活写したいという念が形をなしたらこうなった、こういう形を取るしかなかった、そんな理解をしてみたい。稀書。

  • なんだこりゃ。
    ウンベルトであり、<ムディート>であり、老婆であり、赤ん坊であり、白痴であり、壁の動くしみである「おれ」が吐き散らかす回顧のような妄想のような執拗で凶暴でグロテスクな悪夢。
    錯乱的な「おれ」の独白は時間も空間も勝手気ままに行ったり来たり、「おれ」が呼びかける「お前」や「あなた」も状況に応じてその都度変わる。読み進めるにつれて理解が深まるどころか、妄想が妄想を呼んで混乱が深まるばかり。
    で、この悪夢の根底に流れるのが、主人と従者という権力構造にあるんだけど、これがまたやっかい。従者は単純に力関係の転覆を願っているのではなく、階層の枠は受け入れつつ影の分身として主人を操ることに快感を覚えつつ、もちろんそれでは満足できない怒りや憎しみなんていうありきたりの感情表現では間に合わないほどの怨念や妄執がどろどろと湧き出てくるようなおどろおどろしさ。

    もやもやを残しまくって全然解消させてくれないんだけど、全く悪びれないところがもはや清々しくもある。

    なんかすごかった。

    個人的には「別荘」の方が読みやすさでも面白さでも圧倒的によかったけど、「なんかすごさ」はこっちの方がすごい・・・て何言ってんだかよくわからないけど、まあいいや。おしまい。

  • 独特の雰囲気 読みかけ

  • 100627朝日新聞書評

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