江戸川乱歩全集〈第10〉暗黒星 (1970年)

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著者 : 江戸川乱歩
  • 講談社 (1970年発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)

江戸川乱歩全集〈第10〉暗黒星 (1970年)の感想・レビュー・書評

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  •  古本市場で見かけて、好き、とは言い難いんだけど思い出の作品である「地獄の道化師」が収録されてたので購入。

    「暗黒星」
     最初の事件で「犯人こいつだろうな」とは思ってたけど、だからってあのネタバレ全開の挿絵は酷いと思います! いやこの本のカラー挿絵全部犯人のだから存在自体ネタバレなんだけど!
     一郎くんと明智探偵の描写に「ああそういや江戸川乱歩さんって(今で言う)腐兄だったっけ」と生温い笑みがこぼれたりしましたが、とりあえず証拠<<<動機な捜査は如何なものかと思います明智先生(苦笑)
     犯人の動機は「同じ人間とは思えない」とか散々な言われようでしたが、これは復讐というよりお父さんのことが大好きで、お父さんを喜ばせたくてやったんじゃないかなあ。っていうかそこの探偵と刑事、被害者代表の極悪商売については無視ですか、そうですか。まあそれ以前にちょっとリアリティが薄いけど。

    「地獄の道化師」
     子どもの頃読んで「犯人を見殺しにする探偵」が大ッッッ嫌いになった思い出の作品、なんですが、大人になってから読むと犯人に対する印象が全然違う。
     犯人はどんな心地で犯行の準備をしていたのか。あい子に「この世に絶望した人間の気持ちがわかりますか」と聞いたときどんな気持ちだったのか。あい子に動機を述べたとき、その口からはどんな言葉が綴られたのか。そして、探偵はどうして犯人を見殺しにしたのか。
     狂人だとか遺伝子の問題だとかで片付けられているけど、犯人の動機は決して感情移入できないものではない。科学捜査の発達した今では不可能になったトリックだし、それ以前に整合性を放棄してるとしか思えない描写(運転手いつの間に化粧したんだよ、とか)が散見されるけど、それよりも語られなかった犯人の内面が気になる作品。

    「幽鬼の塔」
     大体探偵のせい(きっぱり)。「なんだか怪しいやつがいるぞ! 鞄盗んじゃえ」→「あれ、あいつ絶望して自殺しちゃった。鞄の中身は変だし自殺の仕方も妙だったし、これは大事件の予感!(歓喜)」って、お前。
     自殺した不審者の奥さんが夫の死を嘆くのを見てようやく心を痛めたかと思えば「行方不明の旦那に再会できるって期待してたのに、ぬか喜びさせて悪かったなあ」って、お前が反省すべきとこはそこじゃねえ。
     結局不審者は悪人だったけど更正の可能性がゼロだったとは言い切れないし、本当に探偵が無駄に引っかき回して危ない目に遭っただけの自業自得な話。血に酔う美女の今後がちょっと不穏だけど、活かしきれず終わったんだろうなあ、コレは。

    「偉大なる夢」
     戦時中に軍の監視を受けながら書かれた作品なので終始「鬼畜なアメリカ」「神聖な日本」という描写があってゲッソリしたんですが、犯人→スパイ、探偵→凄腕の軍人と置き換えてるだけで要素自体はしっかりした(もしかしたら収録作品では一番まともな)探偵小説。なんだけど、「暗黒星」と同じ本に収録したのはどう考えても失敗。犯人ほぼ同じじゃねえか! しかも挿絵またネタバレだし!!
     とはいえ「暗黒星」に比べこちらは犯人の葛藤や改悛も描かれており、よりドラマチックな結末。話としてはこっちの方が面白い、んです、が、前述したように軍の監視下で書かれてるので登場人物の言動が非常に薄ら寒い。
    「僕、あの空を我が軍の爆撃機で覆い尽くし、アメリカ全土を焼き尽くすのが夢なんだ」「わかりますわ(感動して涙ぐむヒロイン)」とか、「日本が戦争に勝利してアメリカが焼き滅ぼされる」のが「感動的で美しい話」として描かれてる恐怖。戦争の怖さがある意味よくわかる。

     通しで読んで改めて「私に乱歩は合わないな」としみじみ。探偵の言動にイラッとしたり、結末がどうも「作者は大団円のつもりらしいけど大団円じゃねえだろコレ」と思うことが多かったり、時代の違いなのかなあ。同年代の別の人のも読んでみるか。

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