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感想・レビュー・書評
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(1990.06.24読了)(1981.08.21購入)
イタリア中部山村生活誌
第3回(1976年) 日本ノンフィクション賞受賞
内容(「BOOK」データベースより)amazon
アドリア海をはるかに望む、けわしい山塊の麓に牧羊の村クェルチーノがある。村に息づく「伝統的な」移牧の実態を明らかにしつつ、村人たちの内面にまで立ち入ってその生きざまを描く。文化理解の方法に一石を投じる「生活誌」。
☆関連図書(既読)
「不思議の国イタリア」堀新助著、サイマル出版会、1985.10.詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1969年にイタリアの山中にある牧夫村、クェルチーノを取材したときの話を基に構成された本。
当時、このクェルチーノはずっと昔から続く生業の移牧(ここでは、夏期は標高の高い村で、冬期は平地のローマ近郊で羊の放牧を行うという意味)の衰退と近代化の波にもまれ、過疎が始まっていた。
章ごとに主人公となる村人が違い、夫のみ出稼ぎという形で村にとどまる家族やそれでも牧羊を続ける人、家族で移住し夏のバカンスにしか村に帰らない人、戦後生まれの子供の世代、志を胸に田舎の山村に赴任してきた司祭など、考え方や立場を異にする様々な人々の視点からクェルチーノ村の過去、現在そして未来が語られる。
著者は文化人類学者らしいし、その考察も興味深いのだが、まるで複数の視点から語られるよくできた小説のような感じでとても面白く、一気に読んだ。
イタリアの山村はとても遠いところにあるが、伝統生業と過疎の問題は日本にも共通するところあり、人ごとのようには思えない。
題名となっている「牧夫フランチェスコの1日」という章では、羊を飼うというのがどういうことか、朝から夜までの仕事から1日の放牧計画、その楽しみまでが語られ、ヒツジ飼いに興味がある人にも大変おすすめである。