海を見ていたジョニー (1967年)

  • 11人登録
  • 3.17評価
    • (1)
    • (0)
    • (4)
    • (1)
    • (0)
  • 2レビュー
著者 : 五木寛之
  • 講談社 (1967年発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)

海を見ていたジョニー (1967年)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 昭和42年に発表された短編集。その年の4月から9月までの半年ほどで8作品。30代半ばの脂がのっている頃の仕事だろうか。

    面白いのは、50年近くも前の話なのに、”現在”の諸問題を風刺しているかのような作品群となっているところ。時は高度経済成長の真っ只中、一方で、ベトナム戦争が激化、日米安保改定条約が発効、発表の少し前の50年代を描いた作品(「黄金時代」)では、学生運動、反政府デモ、etc..

     表題作の「海を見ていたジョニー」はベトナム戦争に従軍し音楽への志を捨てざる得なくなったジャズメンが出てくる、反戦ムードの低音で鳴り響く短編だ。「音楽は人間だ」と語るジョニー。「わたしが駄目な人間になる。すると音楽も駄目になる。わたしが高まると、演奏も高まってくる」。 先日読んだ”ジャズの殉教者”コルトレーンのようだ(同じ趣旨の言葉をコルトレーンも語っていたようにも思う)。
     戦争で精神を病んで、もうJAZZは演れないというジョニーや基地の周りの人々の生活が、どことなく昨今の安保法案の騒ぎや、沖縄の基地問題とも重なる。

     かと思えば「天使の墓場」という、出だしは山岳小説?と思った作品が、実はアメリカ軍の核の陰謀を孕んだ壮大なお話しだったり。こちらは、昨今の原発問題とも絡めてる?なんて思えるほど。
     そして、そんな壮大な話を短編にまとめる文章力たるや。昨今のシナリオライターもどきの作家が書けば、要らぬエピソードや登場人物間の不要な会話の応酬を差し挟んで300ページ以上の作品にしてしまうところだろう。それが僅か50ページ足らず(2段組みとはいえ)。小説は短編にありと宮本輝あたりが言っていたっけ? 見事に研ぎ澄まされた文章だと感嘆した。

     「盗作狩り」なんて小作品も、今年話題の盗用疑惑の話か?!と驚きを通り越して笑ってしまったほど。50年を経て、時代は巡るということなのかな~。まわるまわるよ時代はまわる~♪

     後半は、業界ものというか放送関係者の話が続く。朝鮮人の問題なんかも出てくる。昨今のヘイトスピーチやら嫌韓じゃないけど、これも時代は回る、回る。
     最後の「幻の女」は、デパートの覇権争い、経済戦争。そこに大どんでん返しを、ひとりの女性従業員がひねり出す。半沢直樹ばりのお話しだったり。時代のみならず、小説の題材、ネタなんかも、巡り巡るものなのか。
     しかし、どの作品もそこはかとなく悲壮感が漂い、無力感に襲われるのは時代性なのか。いや、それも今の時代にも共通する感覚なのかもしれない。

     「黄金時代」の売血の話が出てくるが、確か「青春の門」でもその話が出てきたように記憶する。こっちの作品のほうが先だから、この時の取材(あるいは五木寛之が学生時代に実際に体験したのかもしれない)をもとにしているのだろうな。

     いやいや、短編も面白いなと唸らされた1冊でした。

  • 神奈川などを舞台とした作品です。

全2件中 1 - 2件を表示

五木寛之の作品

海を見ていたジョニー (1967年)はこんな本です

ツイートする