生きがいについて (1966年)

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著者 : 神谷美恵子
  • みすず書房 (1966年発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)

生きがいについて (1966年)の感想・レビュー・書評

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  • 「生きがいについて」神谷美恵子


    人は何かにむかって前進していると感じられる時にのみ、その努力や苦しみも目標の道程として、生命の発展の感じとして受け止める。

    生きがい感には幸福感よりも一層はっきりと未来に向かう心の姿勢があるのと、自我の中心に迫っている。幸福感には、自我の一部だけ、それも末梢的なところだけで感ずるものもたくさんある。

    認識としての生きがい感に関する問い
    1.自分の生存は何かのため、または誰かのために必要であるか?
    2.自分固有の生きていく目標は何か?あるとすれば、それに忠実に生きているか?
    3.以上あるいはその他から判断して自分が生きている資格があるか?
    4.一般に人生というものは生きるに値するものであるか?

    人間が最も生きがいを感じるのは、自分がしたいと思う事と義務とが一致した時。

    使命感に生きる人にとっては、自己に忠実な方向に歩いているかどうかが問題であり、その目標さえ正しいと信ずる方向に置かれているならば、使命を果たし得なくても使命の途上のどこで死んでも本望である。これに反し、使命にもとっていた人は安らかに死ぬ事さえ許されない。

    生きがいへの欲求は、単なる社会的存在としての欲求ではなく、個性的な自我の欲求。

    欠如動機ではなく成長動機の場合は、わざわざ一層の困難や努力、緊張を求める。

    生きがいとは、目立たぬものも立派な生きがいとなりうる。要は、ただそれがその人にとって「生きる歓び」「生きるはりあい」の源泉になる事であり、軽重の比較を超えたもの。

    生きがいは、生活する上での実利とは必ずしも関係がない。むしろマイナスになるものさえある。社会生活の上で欠かせないものではなく、無駄や贅沢とも言える。

    生きがい活動は、「やりたいからやる」という自発性を持っている。

    生きがいは個性的である。それぞれの人の内奥にある本当の自分にぴったりしたもの、その自分そのままの表現であるものである。

    ただ本能や義務感や習俗だけにおしやられて機械的に行う母性活動であれば、どれほど他人の目によい母に見えようとも、真の生きがいではありえない。その結果、子供に恩を着せる態度や愚痴が出てくる。

    生きがいは、それを持つ人の心に一つの価値体系をつくる。

    生きがいは、人がその中でのびのびと生きていけるようなその人独自の心の世界をつくる。何が価値があるのか?何が優先か?がはっきりしている時、そこには統一、秩序、調和がある。安定欲求は、経済的、社会的次元を超えて、何よりもこの心の世界の落ち着きがあってこそはじめて根本的に満たされる。


    様々な生きがい
    1.生存充実感への欲求を満たすもの
    審美的観照、あそび、スポーツ、趣味、日常生活のささやかな喜び。
    2.変化と成長への欲求を満たすもの
    3.未来性への欲求を満たすもの
    生活目標、夢、野心等。
    4.反響への欲求を満たすもの
    ・共感や友情、愛の交流
    ・優越または支配によって他人から尊敬や名誉や服従を受けること
    ・服従と奉仕によって他から必要とされること
    5.自由への欲求を満たすもの
    卑小さから広く解き放つように作用するものごとや人物。
    6.自己実現への欲求を満たすもの
    その人でなければできない独自性を帯びたもの。創造のよろこびに還元される。
    7.意味への欲求を満たすもの
    自分の存在意義が感じられるような仕事、使命。
    報恩、忠節、孝行、帰依、哲学的信念、信仰。

    神秘的変革体験の特徴
    1.特異な直感性
    2.実体感、無限の大いさと力とを持った何者かと直接触れたとでも形容すべき意識
    3.歓喜高揚感
    4.表現の困難

    深い悲しみと苦しみを克服してきた人達も、以前と変わらぬ欠点や弱点を持っているが、それでも心の世界が大きく変革されているマズローが言う「本物の人間(authentic person)」。そのような人間は、社会一般に対して新しい関係を持つ。単に自己を種々な意味で超えるのみならず、自己の属する文化をも超越する。文化摂取過程に抵抗し、自分の文化を社会から遊離させる。地域的な集団の一員である点が少なくなり、人類の一員である点が多くなる。

    人類の一員にお互いがなる時のみ、人種、階級等あらゆる差別がなくなりうる。

    相対的なものにとらわれず、人間としての可能性をのびのびと発揮する「本物の人間」を研究し、教育の理想像探求への指針とする事。

    人間の存在意義は、その利用価値や有用性によるものではなく、野に咲く花のようにただ無償に存在している人にでもある。みな私たちと同じ生を受けた同胞である。

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