沈黙 (1966年)

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著者 : 遠藤周作
  • 新潮社 (1966年発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (257ページ)

沈黙 (1966年)の感想・レビュー・書評

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  • 遠藤周作はこの作品を書くためにこの世に生まれて来た。そう思った作品。

  • 沈黙とはなにか



    長らく放置されていた祖父の蔵書の一つである。
    失礼ながら、単行本なので捨てるのが勿体ない程度にしか考えていなかった。
    それというのも物語は長崎で行われていたキリシタン弾圧の史実をもとにしているもので、その予備知識と題名からして重そうだなと考えて結局長らく敬遠し続けていたのだ。
    読む気になったのに特段理由はない。スコセッシが映画するなんて話もあとに聞いたことだ。
    ほとんど気分、本のチョイスなんてそんなものだ。
    それで結論を先に書くが、参ってしまった。
    正直非の打ち所もないほどによくできた作品なのだ。遠藤周作の力量をフルに発揮した、なんて言うと至極えらそうだが、いや、すごいのだ。よくぞ書いたと言う作品だった。


    長崎、ポルトガル、踏み絵、パードレいや司祭と、出てくる単語からしてまんま宗教色の強い作品のように思える本作。
    確かに遠藤周作の私の読んだ限りの作品のほとんどがキリスト教を題材にしている。
    神を持たぬ日本人、そしてその国に生まれ育ちながらキリスト教徒である自分。これが遠藤周作の作品に一貫して取り上げられる主題である。
    この題材は宗教好きの私としては非常においしい内容なのだが、正直言って本作ではそれはメインではない。確かに宗教に分類されるが、それは遠藤周作が人間を見つめるにあたって得意な方法がキリスト教だったというだけだ。
    そして、この分野をもってして繰り広げられる作中の人間の様は異様なほど重く、残虐で正直気分が滅入る。毎回思うのだが遠藤周作のこういう容赦のなさって本当すごいよな。暴くのではなく、ましてや曝してわめくようなことをするのではなく、冷静にしかし容赦なく本質をついてみせる。冷めているのだ。こういう類のものを書きながら高揚感が全く文章から滲まないって、書いている側に揺るがない芯があるんだろうなって私は思う。


    毎度の上から目線だが、ともかくバランスが良く、くさすようなところがほとんど見あたらない物語だ。ロドリゴの心理もまた彼が迎える結末への運び、ひいては全体の構成も他の登場人物も視野を変えれば文章もまた描写も秀逸なのだ。
    よい文章もいくつかあったのだが特に私が気に入ったのがフェレイラ曰くのロドリゴの言った“今まで誰もしなかった一番辛い愛の行為”だ。
    加えてのその後のロドリゴが行うこの“愛の行為”の描写はまぁすごい。読み手に期待をさせる、そして裏切らない文章だ。


    『司祭は足をあげた。足に鈍い重い痛みを感じた。それは形だけのことではなかった。自分は今、自分の生涯の中で最も美しいと思ってきたもの、最も聖らかだと信じたもの、最も人間の理想と夢にみたされたものを踏む、この足の痛み。その時、踏むがいいと銅板のあの人は司祭にむかって言った。踏むがいい。お前の足の痛さをこの私が一番よく知っている。踏むがいい。私はお前達に踏まれるため、この世に生れ、お前たちの痛みを分かつため十字架を背負ったのだ。』


    いやはや、これは遠藤周作じゃないと書けない文章だ。
    この後の筑後守は、日本に伝来したキリスト教がロドリゴ達の持つ神とは違うものに変わり果ててしまっている、とロドリゴを慰める。これもいわば遠藤周作の十八番だ。
    先にも言ったが、この物語は史実を元にしている。本来の棄教はもっと痛みが多い。しかもそれは肉体的な痛みだ。ところが本作のロドリゴはその痛みを負わない。あくまで彼は精神的な苦しみによって選択を行う。
    遠藤周作って、“クリスチャンにしてドS”と言われるぐらいだから、肉体的な痛みの表現にも臆さないが、それを越える精神を追い込む文章がともかくすごい作家なのだ。
    確かに容赦がない。だってゆがめられた主のもとに集う人々のために“愛の行為”をとるのだ。象徴的には姿はずれるが、肖像を持ったときにはその顔には面影が必ずや一筋は重なってしまう。己の神を裏切り、尚かつ長らく彼が苦悩し続けた“沈黙”が破られる瞬間もそこにしかないのだ。


    遠藤周作という作家は日本におけるキリスト教に批判的な作家だった。いや批判的というかその矛盾を常に意識していた存在だった。
    私は当初、滅びるべきだと考えていたのか、と思った。しかし嫌悪が見られないなかにその表現は浮いて見えた。
    人間の本質を正直に見据える力に遠藤は長けていた。だからこそ。常に矛盾をさらし続けたのだ。いや問いかけ続けた、の方が正しいだろうな。
    そうやっぱり“芯”がぶれないから。


    『(私はあなたを恨んでいるのではありません。私は人間の運命にたいして嗤っているだけです。あなたにたいする信仰は昔のものとは違いますが、やはり私はあなたを愛している。)』



    あまりのどSっぷりに体力を消耗したが惹きつけられもした。
    あっぱれな小説なのだが、5をつけるには少々躊躇があった。
    それはこの小説の問題ではなく、私の中の遠藤周作という人に対する評価がかなり影響している。純文学に類するには個人の苦悩がこの人の小説の中にはないのだ。それが引っかかってしまう。おまけにこの作品を5にしてしまうと、4にしている他のいくつかの作品も何とも評価を変えなくては………って訳わからないいい訳めいたことを考え始めてしまった。正直ここ数日この堂々巡りだった。
    いや、でも正直に行こう。ここまでやられたら手も足も出ない。
    遠藤周作の最高傑作、なんだろうな。

  • 知らないことだらけだった。
    名作。一気に読めた。

  • 弾圧された時代に日本にキリスト教を布教しようと奮闘、
    あまりの拷問や苦しみに時に絶望、
    最後は棄教をするが、そこに救いを見ようとする、司教の物語。

    文中で盛んに狡猾さが描かれたキチジローという人が、
    (司教の身元をバラしたり踏み絵を真っ先にやるんだけど、
      最後まで信仰心をこっそり持ち続ける人)
    一番バランス感覚のある人だと思ったし、共感できた。
    狡いとかの印象はない。

    でもいつの時代も揺るぎない信念を持つ人がいたから、
    歴史は変わってきた。
    そういう偉人の原動力を信仰心という観点から描いていた本でした。
    新興宗教も、信仰心が原動力になっているのかな、時に悪い方に。

  • 長崎、横浜、フランス、リヨンなどを舞台とした作品です。

  •  
    ── 遠藤 周作《沈黙 196603‥-06‥ 新潮社》16320322
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/B000JABMF8
     
     Giuseppe Chiara,  1602‥‥ Italy  Japan 16850824 83 /貞享 2.0725
    /イエズス会宣教師。禁教令下の日本に潜入したが捕らえられ、拷問の
    に耐えかねての強制改宗により、岡本 三右衛門を名乗って生きた。
     |
     Cristóvão Ferreira, 1580.... Portugal Japan 16501104 70 /慶安 3.1011
    /イエズス会宣教師士。日本において拷問によって棄教し、沢野 忠庵
    (忠安)を名乗ってキリシタン弾圧に協力した(Wikipedia)。
     
    …… ロドリゴのモデル、ジュゼッペ・キャラがフェレイラ神父を求め
    て来日したのは一六四三年。その十一年前の三月二十二日付でフェレイラ
    が長崎から発した手紙がいまも残っている。それには、雲仙地獄の熱湯
    による拷問などにも屈せず、迫害とたたかう彼の強い意志がつづられて
    いる。
     |
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/19741210
     板坂文庫(上) ~ 日本文学三六五日 ~ ↓(下)
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/19741211
     
    …… 遠藤 周作とスコセッシが求めた360年目の救いとは?
     赤狩りや『エデンの東』との関係は? 町山 智浩の映画ムダ話42
    https://twitter.com/ikeda_kayoko/status/828766174288580608
     
    ── スコセッシ・監督《沈黙 サイレンス 20161223 America 20170121 Japan》
     誰が読むのか、サイレンス。どうせなら SILENCE だろ?
    ── 篠田 正浩・監督《沈黙 SILENCE 19711113 東宝》
     
    ── 倉本 聰・脚本/降旗 康男・監督《駅 STATION 19811107 東宝》
     19811107 東宝(=正/誤=)19790525 東映《舟唄 19790525 テイチク》
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/19790525
     
     遠藤 周作&三浦 朱門《文春講演会 197111‥ 京都会館(大幡 季生)
     
    ── 遠藤 周作《白い人・黄色い人 195511‥ 群像/講談社 19600317 新潮文庫》19441218
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4101123012
     
    ── 遠藤 周作《海と毒薬 195706‥ 文学界/講談社・新潮・角川文庫 19600719 K》194.0225
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/B00BIXNMVC
     
     遠藤 周作 作家 19230327 東京 19960929 73 /
    http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/search?idst=87518&key=%B1%F3%C6%A3+%BC%FE%BA%EE
    http://www.artdays.co.jp/ CD版 遠藤周作講演選集〈全6巻〉アートデイズ
     
    (20110419)(20151213)(20170209)
     

  •  ローマ教会に驚くべき一報が入った。フェレイラ神父が長崎で「穴吊り」の拷問をうけ、棄教を誓ったというのである。フェレイラ神父は、稀にみる神学的才能に恵まれた上に、強靭な意志の持ち主で、棄教することなど考えられなかった。「いったい、何があったんだ!?」ロドリゴ神父ら3人は真相を求めて日本に向かった。そして、その日本では「穴吊り」を考案した井上筑後守が3人を待ちうけていた・・・。
     すさまじい緊張感、圧倒的なスリルとサスペンスで、一気に読ませます。物語の中で、著者が「これは私だ」と自己投影した人物が登場します。それが誰かは読んでからのお楽しみ・・・。

    (九州大学 大学院生)

  • 文庫既読。
    このバージョンは古本屋にて購入。
    感想は言わずもがな私の人生に大きな影響を与えた作品。

  • 日本人にとっての「キリスト教」そして、宗教ってなんだろう、って
    わたしが改めて考えるきっかけになった作品。

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