個人的な体験 (1964年)

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  • 大江健三郎に興味を持ち始めたのは、実は全盲のピアニスト・辻井さんが名誉ある賞を受賞なさった時のことです。
    辻井さんのように、障碍を持ちながら、音楽の才能を開花させた息子さんがいるということで紹介されていたのです。
    さらに、調べてみると大江氏は安部公房を愛読していたとのこと。ますます興味が深まり、ずっと気になっていたこの作品を手にとりました。

    …読むまでのいきさつが長くなってしまったw

    さてストーリーですが、主人公・鳥(と書いて、バードと読ませる渾名です)は第一子を儲けるのですが、その子の頭には大きな瘤のようなものがついており、医師は脳ヘルペスの疑いがあり、手術しても治るかどうか・・・もし治ったとしてもせいぜい植物のようにしかなれない、と彼に告げます。
    鳥は、そこで選択―すなわち、赤ん坊が死ぬのを待つ・もしくは自ら見殺しにしてしまうか、その運命を背負って生きるか―に逼られることになります。以下、略w

    全体的に暗いです。暗いの好きなんですけどね。
    客観的に見て、鳥が情人を作ったのはどうしてもいただけないです・・・。妻の立場だったらね。
    火見子は本当に印象的でした。
    火見子はどうしてああなっちゃったんだろう。若干のヒントはあるんだけど・・・解釈しきれないです
    最後の方、火見子は鳥をパートナーにしたかったのではないかと感じました。
    鳥が決心をしたとき、止める火見子は彼の将来を案じてではなく、彼女自身の欲があったのではないかと思いました。
    わたしたちの、を強調していたところに。

    ラストは後味の良い感じでした。

    大江氏の自伝ではありませんが、かなり彼の個人的な体験が生かされているというか、含まれているんじゃないかなと思います。
    今後また違った作品を読んでみます。

著者プロフィール

大江健三郎(おおえけんざぶろう)
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞。94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。

「2019年 『大江健三郎全小説 第13巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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