ドリアン・グレイの肖像 (1962年) (新潮文庫)

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  • 福田恆存訳。個人的には高校の夏休みの英語の宿題で副読本渡されて以来の再会。比類無き美しさを持った青年ドリアン・グレイ、彼に見せられた画家バジル、影響を与えようとさまざまに語りかけるヘンリー卿。純真無垢に思われたドリアンは、芸術至上的な態度で婚約までした女優を自殺に追いやり、以降周囲のさまざまな人を直接に、間接に、不幸においやっていく。良心の呵責なく、いや呵責はなぜかバジルが書いたドリアンの肖像画が引き受け、本人は美貌のまま、肖像画のみ、醜く変化していく。最後は肖像画を葬れば自分の魂が解放されるとばかりにナイフをつきたてたら、発見時には本人の心臓にナイフがささっていたという幻想綺譚。/以下、主に皮肉と逆説たっぷりのヘンリー卿の言葉を。それ以外の引用もあり。/笑いによって交友がはじまるのは悪くない。そのうえ笑いによってそれが終るのは願ってもないことだ/誠実な人間は恋愛の些細な面しか知ることができない。きまぐれな浮気者だけが恋愛の悲劇を知ることができるのだ(ヘンリー卿)/他人に影響を及ぼすというのは、自分の魂をその人間に与えることにほかならないから。/ひとりの人間が紳士であるならば、かれの知識は十分なはずだし、紳士でないならば、かれが知っていることはすべてかれ自身のためにならないはずだ/現今では大部分の人間が卑屈な常識のとりことなっている、とりかえしがつかなくなった時はじめて、後悔の種にならないものはただひとつ、自分のあやまちだけであることに思い至るのです/感情生活における忠実さというものは、知性の生活における一貫性と同様に、失敗の告白にすぎないのだ。/神聖なるものこそ、触れるに値するただひとつだけのものだ、ドリアン/だれでも他人のことをよく思いたがるのは、じつは、自分のことが心配だからだ/女性は欠点ゆえに男を愛するのです。男に欠点が十分あれば、男のどんなことでも女は許すー男の知性さえ許してくれます。/人間というやつは、もっともひどい悪習を失った場合でも、後悔する。いや、もっともひどい悪習にたいしてこそ、もっとも烈しい後悔の念を禁じえないのかもしれない。それほどまでに悪習は人格の欠くべからざる一部となっているのだ

  • オスカー・ワイルドの作品の持つ、耽美な感性に凄く惹かれました。
    私は女なので、”少女”という概念についてよく考えますが、
    此のお話はドリアン・グレイと云う美少年の主人公でありながら、
    私の考える”少女”の概念と通ずる所があって、面白かったです。

    無垢な少年は、いつか大人になって、穢れを知って滅ぼされてしまう…
    そういうのは少女と女性にも云える事ですよね。
    ドリアン・グレイは見た目と云うか魂と云うか…表向きは変わらない、
    美しさ純真さを保ったままで、代わりに肖像画の彼が変わっていく。
    其れは彼にとってとても脅威でしょうね。
    段々どちらが本当の自分なのか、分からなくなっていくような怖さ、
    肖像と鏡の中の自分の差異が広がるほど、
    俗世に溺れて穢れた魂をはっきりと認識せざるを得ない訳で…。
    最後、肖像画を破って彼自身が滅ぼされた時、
    其れは彼にとっては救いだったのかもしれません。

  • 図書館で借りました。タイトルだけは知っていたのですが読んだことは無かったので。お話の筋より登場人物の性格より文章が綺麗だなと読みながら思いました。原文はどんな文章なんだろう。これを翻訳されるのは大変だったろうなあなどと思いました。

    無垢と言うことは無知と言うことでは無いはずなのですが純粋さや汚れの無いことが美しさと同じなのであれば汚れたと思うことで人は醜く変質していくのかもしれない。そんなことを思いながら読みました。面白かったです。

  • 一人の純白無垢な美少年ドリアン・グレイが、一人の画家が描いた肖像画と、快楽主義を掲げる一人の友人によって文字通り「変貌」していく過程を描いた傑作。

    とある主義やとある考え方、とある快楽に心を震わせ、ずぶずぶと嵌り込んでいく姿は気持ちがいいくらいにその変容が明らかで恐ろしくなる。
    衰えない美貌と、身代わりに醜悪になっていく肖像画、己の魂を見つめる心の穢さが斬新で好い。

    予想していたラストではあったが、これぞ傑作といっていいだろう。どの章も、多すぎず少なすぎず、文章としてもとても好かった。

  • 超危険書。

  • [14][08.07.22]<県 図書館で借りたのは訳・渡辺純/旺文社文庫なんだけどアマゾン的には存在しない模様。オスカー・ワイルドとはぜひお近づきになりたいので自主フェア開催を決定。女の人が大変かわいらしいのもよい。

  • 2008 2/14

  • 友人に薦められて読んだ本。
    ハマった。
    オスカー・ワイルドに。
    この本、何が良いのかっていうと、貴族という人種がいかに非生産的で浪費するだけの存在かが分かる。
    流石、貴族嫌いの奴が書いた本だ。
    ヘンリー・ウォットン卿が素晴らしい。
    ドリアンよりもヘンリー卿が良い。

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著者プロフィール

1854年アイルランド・ダブリンに生まれる。19世記末の耽美主義文学の代表的存在。詩人・小説家・劇作家として多彩な文筆活動で名声を得る。講演の名手としても知られ、社交界の花形であった。小説に『ドリアン=グレーの肖像』戯曲に『サロメ』『ウィンダミア卿夫人の扇』回想記に『獄中記』などがある。1900年没。

「2022年 『オスカー・ワイルド ショートセレクション 幸せな王子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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