まさに論理派推理小説の名作です。
噛んで含めるようなドルリー・レーンの推理、理屈っぽさが溢れています。
事件解決後に、レーン氏が犯人の身長を推理した根拠を解説する部分も、理屈っぽくて可笑しい位ですが、強引過ぎない程度の「理屈がしっかりある」というのは、推理し甲斐があります。
ヨーク・ハッターの死体が、身元確認が完全でなかったため、実はヨークは生きていて犯人なんじゃないかと考えてしまいます。
「Xの悲劇」を想起させますから、逆に「同じパターンは無いだろう」と思いつつも。。
作中に登場する薬品(塩化第二水銀、硝酸、ペルーバルサム、ストリキニーネ)は、化学式まで描かれていて、ちょっとマニアックです。
シェイクスピアの戯曲が登場するのも洒落てますね。<トライラスとクレシダ>に登場するへクターの台詞。「疑惧と慎重な考慮こそ、賢者の標識・・・」
まさに、作者のミスディレクションに引きずられないような、慎重な推理が求められます。伏線もよく考えられてます。