白鯨〈上〉 (1956年) (岩波文庫)

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感想・レビュー・書評

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  • (2016.08.21読了)(2016.08.18借入)(1975.09.01・ほるぷ図書館文庫)
    岩波文庫版は、新訳が出ているので新訳で読みたいところですが、あいにく図書館には旧訳版しかないので、旧訳で読むことにしました。
    名作といわれるけれども、読み通すのがなかなか難しい本でもあるようです。
    覚悟して読み始めたのですが、「語源部」「文献部」というものからはじまっています。鯨はそれぞれの言語でどのように呼ばれているかということと、「聖書」からはじまっていろんな本の鯨が登場する場面の引用が集められています。「ハムレット」「失楽園」なども登場します。
    一章から物語は始まります。語り手は、イシュメイルで陸上の生活に飽きたので、また船に乗って稼ごうとしています。
    捕鯨の中心地マサチューセッツ州のニュー・ベッドフォードに向かいさらにその沖の島ナンタケットへ。
    ニュー・ベッドフォードでナンタケットへの舟が出るまで宿泊していた宿で、クィーケェグという元食人種の銛うちと仲良くなります。
    ナンタケットについて乗る船を物色した結果ピークォド号に決める。船長はエイハブ。エイハブ船長は片足だという。
    捕鯨船が出港して物語が順調に進んでいると思ったら乗組員スターバック・一等運転士、スタッブ・二等運転士の紹介が始まり、鯨学へと脱線してゆく。
    さらに「頭に皺がよった顎の曲がった白鯨を見つけてくれた奴には、この金貨を呉れるぞ!」(252頁)と告げられる。その鯨の名前は、「モゥビ・ディク」だという。エイハブ船長の片足を持って行ったのはモゥビ・ディクだという。

    解説によると英語で書かれた三つの偉大な悲劇として『リア王』『嵐が丘』『白鯨』を挙げている方がいるということです。
    白鯨は、1851年に刊行されたそうです。
    アメリカが日本との通商を求めて日本にやってきたのが1846年で、その後、黒船でやってきたのが1853年ですのでアメリカにとっての捕鯨の重要性が頂点に達しているころということになりそうです。
    アメリカは、日本に捕鯨船への水や薪などの補給を求めてのことでしょうから切実だったと思われます。
    歴史的なことも考えながら読むのも興味が惹かれます。

    【目次】
    語源部
    文献部
    一章 影見ゆ
    二章 旅鞄
    三章 汐吹亭
    四章 掛布
    五章 朝餉
    六章 街上
    七章 教会堂
    八章 説教壇
    九章 説教
    十章 朋友
    十一章 夜着
    十二章 生い立ち
    十三章 一輪車
    十四章 ナンタケット
    十五章 鍋料理
    十六章 船
    十七章 らまだん
    十八章 印形
    十九章 予言者
    二十章 全員活動
    二十一章 上船
    二十二章 メリ・クリスマス
    二十三章 風下の岸
    二十四章 弁護
    二十五章 後書き
    二十六章 騎士と従者(一)
    二十七章 騎士と従者(二)
    二十八章 エイハブ
    二十九章 エイハブ登場 つづいてスタッブ
    三十章 パイプ
    三十一章 夢の妖魔
    三十二章 鯨学
    三十三章 銛手頭
    三十四章 船長室の食卓
    三十五章 檣頭
    三十六章 後甲板
    三十七章 落日
    三十八章 黄昏
    三十九章 初夜直
    四十章 夜半の前甲板
    四十一章 モゥビ・ディク
    訳註
    解説  阿部知二

    ●悪の根源(35頁)
    金は地上のあらゆる悪の根源であり、金を持つものは金輪際天国には入れぬ、とわれわれが篤く信じていることを思えば、人が金を受けるためにするけなげな努力こそ、真に脅威ではないか。
    ●神の御意(100頁)
    拝むとは何か、―神の御意をなすこと―それが拝むことだ。さて神の御意とは何か、隣人に向かって、おのれが彼にしてもらいたいようにすること、―それが神の御意だ。
    ●日本島沖(154頁)
    このピークォド号が、日本島沖で颱風に帆柱三本折られたとき、お主もエイハブ船長と相乗じゃったはずだが、
    ●日本の開国(181頁)
    もしあの幾重にも閉ざされた国の日本が外人をむかえることがあり得るとすれば、その功名を負うべきものは捕鯨船のほかにはない。
    ●鯨の定義(215頁)
    鯨とは「水平の尾を持ち汐を吹く魚なり」である。
    ●抹香鯨の通路(282頁)
    水面下における抹香鯨の秘密の通路は、それを追うものにとっても大部分は不可解である
    水深くくぐったのち、おどろくほどの速さで、おどろくほどの遠方に姿をあらわすという神秘が人を悩ます。

    ☆関連図書(既読)
    「老人と海」ヘミングウェイ著・福田恒存訳、新潮文庫、1966.06.15
    「キャプテン・クック」ジャン・バロウ著・荒正人訳、原書房、1992.10.25
    「南太平洋物語 キャプテン・クックは何を見たか」石川栄吉著、力富書房、1984.03.31
    「鯨人」石川梵著、集英社新書、2011.02.22
    (2016年8月29日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    「モービィ・ディック」と呼ばれる巨大な白い鯨をめぐって繰り広げられる、メルヴィル(一八一九‐一八九一)の最高傑作。海洋冒険小説の枠組みに納まりきらない法外なスケールと独自のスタイルを誇る、象徴性に満ちた「知的ごった煮」。
    (「BOOK」データベースより)rakuten
    船乗りのイシュメールは、宿屋で意気投合した銛手クィークェグと共に捕鯨船ピークォド号に乗り組んだ。そこにいたのは用心深いスターバック、楽天家のスタッブ、好戦的なフラスクらの運転士や、銛手のタシテゴーとダッグー。そして、自分の片脚を奪った巨大なマッコウクジラ“モービィ・ディック”への復讐に燃える船長のエイハブー。様々な人種で構成された乗組員たちの壮絶な航海を、規格外のスケールで描いた海洋冒険巨編!(角川文庫版)

  • 面白いには面白いけど、イシュメイルの一人称で全編通すかと思ったらエイハブやスターバックの独白が入ったり、一部脚本のようなシーンもあった。途中クジラに関する解説が入ったり整合性に乏しい。
    阿部知二さんの日本語も悪くないけど…やっぱり古い。所々差別的表現も出てきた。
    それでも普通に続きが読みたくなった。白黒映画を見ているような楽しさがある。

  •  海洋文学の傑作と名高い、メルヴィル著"Moby-Dick: or, the Whale"の安部知二による邦訳である。三分冊であり、これは上巻である。原作は1851年、今から150年以上前に書かれた小説であるが、訳者による解説によれば、当時の評価は芳しくなかったようである。1921年に評価が改められ今に至るそうだ。自分も名前だけは知っていたが、内容については把握していなかったので、読み始めた次第である。この邦訳は、古い訳(最古?)である為か、やや語彙が難しく、特に難読な漢字や当て字など、漢字辞典は手元に置いておく必要がある。しかし文章の流麗さや緩急の付け方、文体の調子に一度でも合致すれば、あたかも帆船が追い風によって邁進するが如く、一気に読めてしまう。特に物語序盤の基点となるエイハブ船長による語りの場面は凄まじく、自分も同じ船に乗り、狂気に満ちた感情によって精神を犯されてしまうような錯覚を覚える程である。不思議な魅力のある作品だと思う。
     内容は前日譚であり、登場人物の紹介が中心である。イシュメイルという男が捕鯨船に乗り込み出港するが、いよいよという所で、航海の真の目的が告げられて終わる。題目の『白鯨』は様々な証言の中でのみ語られ、その全容を垣間見ることさえできない。巻の前半では、今後の鍵となるであろうクィークェグという異人の男が語られ、途中、鯨に関する幾つかの知識も語られる。そして末尾において件のエイハブ船長の語りがある。
     比喩も多く、宗教的、文化的な背景知識を持ち合わせていないと真意が汲み取れないような表現も多い。注釈は巻末にあるが量が少なく、やはり完全な理解までには至らない。ただし最新の訳だと状況が違うかもしれない。そして幾つかの詩が掲載されているが、邦訳では限界があるかもしれない。途中、意味が不明瞭な部分もあり、自分の中で消化できているかと問われれば、できていない。しかし、これはヘミングウェイの『老人と海』を読んだ際も感じたことだが、アメリカ文学、あるいは海洋文学といってもいいかもしれないが、その開拓者精神というか、神的、超越的な力を持つ自然に対し、毅然として堂々とした姿で対峙する力強さには、心惹かれる何かがある。それも強烈に。隣の芝かもしれないが、日本的な、受容し、受け流す文化とはやはり対照的な違いがあり、それがとても面白い。
     ところで本著は悲劇としても有名であるから今後を楽しみに、しかし一方で薀蓄の垂れ流しとも称される苦行も気にしつつ、次巻に読み進みたいと思う。

     しかし序盤のクィークェグとの同衾などを読んでいて思ったのだが、『白♂ゲイ』というタイトルでリメイクしたら腐った方々に結構受けるんじゃないかね。~どきっ!? 男だらけの捕ゲイ船~とか副題つけて……そんなに甘い世界ではないか。

  • 平戸などを舞台とした作品です。

  • 『いざ白鯨を倒しに行こう』が上巻って・・・;

    たぶん倒しに行く前に捕鯨について語ろうとか、船乗りの間で語り草のお話とかそういう話の本筋と関係無い部分を取り除いたらもっとスマートに終わる気がする。

    運の悪い事に学校の図書館で借りた物だから絶版物で、
    古い作品だから漢字の読みが難しかったりついていなかったり、注釈が後ろについていたり、説明不足を多分に感じ、現代っ子には大変読み辛かったです。

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著者プロフィール

(1819年8月1日 - 1891年9月28日)ニューヨーク出身。著作は代表作『白鯨』の他、『代書人バートルビー』『ビリー・バッド』などがある。

「2015年 『白鯨 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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