吉川英治全集〈第33巻〉新・平家物語 (1967年)

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著者 : 吉川英治
  • 講談社 (1967年発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (486ページ)

吉川英治全集〈第33巻〉新・平家物語 (1967年)の感想・レビュー・書評

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  • 吉川英治著『新・平家物語』

    吉川英治全集全48巻(講談社)の内,第33~38巻が『新・平家物語』全6巻で構成されている。 
    ブックケースに入っており、各巻500頁程で活字が小さく読むのに疲れるが、杉本健吉氏のカラーさしえが5枚程度ところどころに挿入されておりオアシスになっている。

    京都に生まれ、学生時代までを過ごした私にとって、所謂 “京の都” として歴史的に関わりのある平家物語は少なからず興味があり、惹かれるものがあった。
    『新・平家物語(ー)』を購入したのが1968年3月で学生の頃だった。
    定価680円で当時としては、私にとってはいささか高価なものであった。 
    したがって、全6巻揃えるのに3年掛かってしまった。 
    早く続きが読みたいが我慢した辛い思いが今となっては懐かしく想い出される。
    現在までに、数回以上読み重ねているし、生涯離せない書籍であると思っている。

    『新・平家物語』という表題は、吉川氏が“完結のことば”で述べているように、
    古典がもつその “平家” という語韻、連想、国民の中にすでにある詩情などを、取って用いたまでで、
    本文は「平治物語」「保元物語」「平家物語」「源平盛衰記」「義経記」「吾妻鏡」といったものすべてに踏みまたがっており、
    それに一つの系列と自分の創意を与え、縦横に織ったものが 『新・平家物語』 である。
    即ち、同じ「平家物語」なる表題は使ってはいるが、古典『平家物語』とは中味が異なるということを「新」を付けることによって強調された訳である。 

    それでは、古典『平家』とどう異なるのか?

    古典『平家物語』(岩波文庫)を見てみると、冒頭に「祇園精舎」が出てくる。
    吉川『新平家』では、“はしがきに代えて” として出されている。    

       祇園精舎
     祇園精舎の鐘の聲、諸行無常の響きあり。
     娑羅雙樹の花の色、盛者必衰の理を顕す。
     奢れる人も久しからず、只春の夜の夢の如し。
     猛き者も遂には亡びぬ、偏に風の前の塵に同じ。
     遠く異朝をとぶらへば、秦の超高、・・・・・ 
     近く本朝をうかがふに、承平の将門、・・・・・
     まぢかくは、六波羅の入道前の太政大臣平朝臣清盛公と申しし人の有様、
     傳承るこそ心も詞も及ばれね。 
     
    これは、作者が平家物語というある大掛かりのものがたりを語ろうとする “モチーフ” として冒頭に掲げられている。
    すなはち、桓武平氏の一氏族を遂に廟堂の頂点に押し上げ、武士としてはじめて位人臣を極める従一位太政大臣に昇り詰めた平清盛に焦点を据え、
    その人を、栄達の階梯を歩んだ栄光の人としてではなく、異朝や本朝の反逆者や奢れる心の持ち主、猛き事の行為者と比され、そうした人々のうちの最たる者として紹介されている。

    「祇園精舎」の序文のあと、平清盛の父親、平忠盛の「殿上闇討」の章から物語は始まっており、次の「鱸」の章で清盛が登場してくるが、この時すでに太政大臣の地位に上がっている。
    さらに、清盛を棟梁とする平家一門は栄華悪行を極め欲しい侭にするが、治承五年二月、こうした所行の報いとして清盛は悶絶躃地の凄絶な死を遂げる。
    やがて清盛没後、平家の命運は一気に滅亡の坂を下り続ける。そして遂に「壇浦合戦」で大敗し、安徳天皇はじめ一門入水して果てる。 建礼門院の死去により物語の幕は閉じる。

    二十年ばかりという短い歳月の間に、一人の人間とその一族が、当世の最上の地位まで昇り詰め、しかも一朝にして全滅するという激烈な悲劇は、まさしく、この物語のテーマである盛者必衰の理を顕し、諸行無常であり、語るにも心も詞も及ばれない。


    さて、吉川『新・平家』は、50年ほど前に書かれたものであるにも拘らず依然として人気が落ちない。 
    その理由は何処にあるのか?

    結論から言うと、清盛に対する描き方である。古典『平家』では、悪者の代表として捉えたのに対し、吉川『新・平家』では、むしろ、読む者をして憎めない人物として描いたことにある。
    その手法として、清盛を少年期から登場させている。
    しかも、地下人と呼ばれる貧乏武士の家庭に育ち、父親の平忠盛は育ての親であり、実父は白河上皇とも夜這いの悪僧とも言われるがはっきりしない。
    母親は、武士の家系に到底相応しくない祇園女御なる白拍子であった。
    子供は、清盛をかしらに次男、三男、四男と次々に産まれていた。
    『平太よ。また塩小路などを、うろうろと、道草くうて、帰るではないぞ』
    この物語の冒頭一番にでてくる言葉で、清盛である伊勢ノ平太が親戚への金借りの使いの出がけに父忠盛から喚かれたものである。
    このように、決して裕福とはいえない複雑な環境のもとに育ち、悩んで、苦労して少しずつ成り上がっていく様を描写し、同情効果と親しみ易さを最初に読者に植え付けたことにある。
    太政大臣になるまでを、全約三千頁中、六百頁、第一巻全部と二巻の一部を割いて入念に描かれていることからも覗える。 

    吉川『新・平家』は、古典『平家』では描かれていない部分を、上述の吉川氏の言葉にもあるように、他の古典諸書を紐解き、編集し、一層魅力高い作品に生まれ変えて見せた。 
    これこそが、“吉川流哲学” である。

    平家一族が短期間で衰退し没落した、清盛の最大の失敗は何であったか。
    一説には、源義朝の子、源頼朝と源義経を殺さなかったことにあるとの見方もあるが、原因はもっと大きく深いところにあった。

    清盛は、歴史を読み誤ったのである。
    当時、武家による幕府政権が特に東国を主体に台頭し始めていた。このことは、すぐ後の鎌倉幕府、続く室町幕府などが実証している。
    ところが、清盛はむしろ藤原氏の摂関政権にこだわってしまった。歴史の流れに逆らい逆流してしまったのである。

    承安元年、清盛は、娘の徳子(後の建礼門院)を入内させた。これが、清盛の失敗の始まりである。
    翌年、徳子を高倉天皇の中宮に仕立てる。清盛は、天皇家の外舅となる。
    治承二年、中宮は皇子、言仁(後の安徳天皇)をお産みになる。清盛は、天皇家の外祖父となる。
    治承三年、清盛の嫡男重盛を亡くすが、この時、後白河法皇は重盛の遺領、越前の地を没収されてしまう。平家系を排そうとなさる後白河法皇の意図は、この頃、露骨に、表面化していた。
    『ひとの悲しみを、思いやりもし給わず、悲しみに乗じて、日ごろの御非望を遂げ給うとは、なにごとぞや』
    と、このことに感情的になった清盛は、選りに選って後白河院を、お住まいの法住寺殿から鳥羽の北殿へ幽閉し参らせてしまった。清盛がとった最悪の愚策であった。
    一方、このことを知られた高倉天皇は、二人の父親の板挟みとなられ、思いにおもい余った末、御年二十で、御退位を遂げてしまわれる。
    治承四年、新帝安徳の代となるが、御年、僅か三才、清盛が望む理想通りの、政局の実質的担い手となった。清盛が太政大臣になって、13年後である(西暦1180年)。

    清盛の専断と一門の驕りは、いまが平家の絶頂と見えたが、歴史はそんなに甘くはなかった。
    この翌年、清盛が狂い死にし、さらにその4年後には壇浦にて平家一門が滅亡してしまうとは誰が知り得たであろうか。

    “平家にあらずんば人にあらず” と平大納言時忠が豪語したように、表面上は、清盛の権力に逆らわず従順を示すも、内心では、天皇家、藤原氏は疎か、僧門、民衆に至るまで、いづれも平家に共感を覚える筈もなかった。

    同年の治承四年、この時早くも、後白河法皇の皇子、以仁王が 「平家をたおさん」 と令旨を発行され、源頼政らと挙兵されるも失敗に終わる。
    しかし、以仁王の御意志は、しっかりと源頼朝に引き継がれていくことになる。

    清盛が歴史を熟考し実行する能力と力量を持ち合わせていたならば、『祇園精舎』 のモチーフは変わっていたであろう。













      

  • やっと読み終わった‥!
    3週間くらいかかったような?

    そういえば教科書でさらっと昔勉強したくらいしか知らない平家物語

    いろいろあるみたいだけど
    吉川英治ならまちがいないだろうなぁと思ったら
    まちがいなかった^^

    おもしろいな〜

    名前がみんな似てるし人間関係がごちゃごちゃしてるけど
    なんとか大丈夫

    時忠に期待したけど空振りっぽかった・・
    麻鳥さんがいい

    大河もちょっと横目に見てるけど
    大河の原作はなんなんだろ~
    吉川さんのとはだいぶちがうなあ・・

  • この書籍は、吉川英治版の平家物語シリーズの一巻目です。

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