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感想・レビュー・書評
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(2016.10.26読了)(2016.10.22拝借)(1977.09.20・第27刷)
副題「ネロの時代の物語」
かみさんの本棚にあって以前から気になっていたのですが、「ローマ人の物語」塩野七生著、を読んでいる途中でもあり、著者がノーベル文学賞受賞者でもあることからやっと読み始めました。本の後書きによると、この作品が刊行されたのは、1895年ですので今から120年ほど前ということになります。結構古いですね。著者がノーベル文学賞を受賞したのは、1905年です。
アマゾンで調べると新訳が出ているようなのですが、手元にあるのは旧訳です。読み始めたら知らないカタカナ言葉が次々と出てくるので苦戦しながら読みました。人の名前、浴場の部屋の名前、何だかいろいろ出てきます。読むスピードは普通の半分以下のペースです。
副題に「ネロの時代の物語」とありますので、紀元60年ごろのローマが舞台です。読んでいると古代ローマに紛れ込んだかのような雰囲気を味わうことができます。この辺が歴史書と小説の違うところですね。
主人公は、軍人のヴィニキウス君です。アウルス家にお邪魔したときにきれいな女性リギアに惚れてしまいました。調べてみると、リギイ属の王女で人質としてアウルス家の預けられており実の娘のように育てられているとのことです。ヴィニキウスの叔父さんでネロと親しいペトロニウスに頼んで自分のものにしたいと思ったのですが、ネロがリギアを呼び出して開いた宴会でヴィニキウス君、恋しいリギアに酔った勢いで強引に迫り、逃げられてしまいます。ヴィニキウスは自分の奴隷を使いリギアの居場所探しをしますが、見つかりません。ペトロニウスの女奴隷のエウニケから紹介されたキロンキロニデスという予言者、哲学者に依頼して探してもらいます。いつまで続くのかとイライラするほどなかなか話が進展しませんでした。
リギアはキリスト教徒であることがわかりキリスト教徒の集まりが行われているところをつきとめてやっと物語が動き出しました。20章にはペテロが出てきました。
ペテロの話を聞いていた雰囲気からするとヴィニキウスもキリスト教徒になってしまうのかな、と思いながら中巻へと進みます。
エウニケは、誰かに恋しているようなことが書いてあったけど、今後、この話の続きはあるのでしょうか。気になります。
ネロ ローマの皇帝(在位、紀元五四年十月十三日-六八年六月九日)
ペトロニウス ヴィニキウスの叔父さん
マルクス ヴィニキウス 主人公、軍人
アウルス ブラウティウス
ポンポニア グラエキナ アウルスの妻
リギア 又は カリナ リギイ族の王女、人質としてブラウティウス家に預けられている
ウルスス リギアの護衛、怪力
エウニケ ペトロニウスの奴隷
キロン キロニデス 予言者、哲学者
●リギアを守る(95頁)
このヴィニキウスが傍らにいていつまでも離れない。リギアを見ないくらいなら眼を失った方がいいし、リギアを手離すくらいなら命を失った方がいい。リギアは自分の魂であるから、自分自身の魂を守るように、リギアを守ってゆく。
●パウロの書(122頁)
私はタルソのパウロの書を読んで、あなた方は罪を犯すこと、罪よりも死を恐れることを許されていないことも知っています。
●愛は(159頁)
愛は自らを与えるもので奪うものではない。
●クリスト教徒(226頁)
キロンは幾分驚きを見せながら、クリスト教徒が乱交に耽るとか泉や井戸に毒を入れるとか人類の敵であるとか驢馬の頭を崇拝するとか子供の肉を食べるとかいう事実を一遍も見たことがないと話し始めた。
●ペテロ(267頁)
『あれです。クリストの最初の弟子、漁師の。』
●永遠に生きるため(269頁)
みんなが善良で平静で正義で貧困で潔白にならなければならないのは、この人生に於いて安心を得るためではなく、死後クリストのうちに、地上では今まで誰も得たことのないような喜悦と光栄と隆盛と愉快のうちに、永遠に生きるためだと説いた。
●運命の女神(284頁)
運命の女神は、誰でも知っているように、眼を縛っているから、昼間でさえ見ていないくらいで夜は正に見ていない。
☆関連図書(既読)
「ネロ」秀村欣二著、中公新書、1967.10.25
「神の旅人 パウロの道を行く」森本哲郎著、新潮社、1988.05.20
「世界の歴史(5) ローマ帝国とキリスト教」弓削達著、河出文庫、1989.08.04
「ローマ人の物語Ⅶ 悪名高き皇帝たち」塩野七生著、新潮社、1998.09.30
「新約聖書福音書」塚本虎二訳、岩波文庫、1963.09.16
「新約聖書入門」三浦綾子著、光文社文庫、1984.11.20
「新約聖書を知っていますか」阿刀田高著、新潮文庫、1996.12.01
「イエスの生涯」モーリヤック著・杉捷夫薬、新潮文庫、1952.10.
「イエス・キリストの生涯」三浦綾子著、講談社文庫、1987.11.15
「ナツェラットの男」山浦玄嗣著、ぷねうま舎、2013.07.24
「死海のほとり」遠藤周作著、新潮社、1973.06.25
「イエスの生涯」遠藤周作著、新潮社、1973.10.15
「キリストの誕生」遠藤周作著、新潮社、1978.09.25
「イエス巡礼」遠藤周作著、文春文庫、1995.12.10
(2016年10月28日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
ローマ―この頽廃の都では恋など懶い日々のほんの一興。だが、ウィニキウスは心のすべてを傾けた。相手はリギ族王家の娘、人質の身の上、そしてキリスト教徒だった―。ヘレニズムとヘブライズムの拮抗を背景に、壮大な歴史ロマンの幕が上がる。詳細をみるコメント0件をすべて表示