小公女 (1953年) (新潮文庫)

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  • 主人公は母親の顔を知らずに育った「セアラ」。

    金銭的にめぐまれ何不自由ない生活を送っていたセアラ。
    7歳になったとき、当時の風習にのっとり、母親の母国イギリスの寄宿学校に入学することになった。
    学校の経営者ミンチン先生により、セアラを特別待遇で迎え入れられ、周囲にうらやまれるほど贅沢な生活を送ることになる。

    しかし、唯一の肉親である父親、クルウ大尉の突然の死と事業の失敗を機に、サアラの生活は一変する。

    朝から晩まで下働きをさせられ、小さな子達の教育を担当する。
    十分な食事は与えられず、寝に帰る部屋は、これまた十分な生活の道具は備えられていない屋根裏部屋。
    どんなに悲しいことが起きても、「私が公女様だったら」と寒さ想像をし、耐え忍ぶ。

    そんなセアラを探していた父親の友人で事業の共同経営者により、
    どん底の生活から救い出されるのだ。



    逆境に耐え忍んでいた主人公が、最後に大逆転劇を演じる。
    しかも本当にお姫様のようになってしまうなんて、
    大人になってもあこがれる、展開です。

    いちおう寝る場所と、最低限の食事(時々仕置きとして食事なしにさせられることもあるが)は確保されていたので生きてはいける。
    でも今までいっしょに過ごしていた寄宿舎の生徒の前で、みじめな姿をさらさなければならないのは、
    心が強くなければ耐えられないだろう。
    「私が公女様だったら」と想像したところで屈辱に耐えられるだろうか。
    甘やかされて育てられたにしては、すばらしい心根の持ち主だ。
    たとえばマスコミをにぎわせている海外セレブなんて、すぐにダメになってしまうんじゃないかしら。

  •  検索エンジンで『小公女』をキーワードにかけたら、バーネット作品をさしおいて、かつてのアニメの関連サイトがたくさん引っかかってきました。巨大なくりくりおめめの、アニメ版ロリータ・セーラちゃん。可愛いけど、本からイメージする彼女とはおおよそかけ離れていますよね……
     違うのよ! 彼女の面白さは、子ども離れした気位の高さ、小生意気さにあるんですから★

     セアラは特別なお金持ちのお嬢様で、厳格な寄宿舎付学校でよく学び、他の生徒とは全く違う待遇を受けていました。ところが、父の訃報が届いて株価急落。下働きの扱いに格下げされ、薄汚い屋根裏部屋をあてがわれるのです――

     で、面白いのがセアラさんの態度ね。何様!?(笑) ぼろを着ていてもバリッバリの敬語で受け応えするし、完璧なフランス語でミンチン女史のコンプレックスを刺激。捨て台詞のヴァリエーションも多彩です。何とも扱いづらい子ですよ★
     憎たらしい優雅さを保って、正統派文学っぽい文体で書き抜かれているのも嫌味くさくてユニークです。

     いかなる状況にあろうとも、小さな王女さまのつもりでふるまったセアラ。実は、彼女の王女さまモードやあまたの空想は、前向きな現実逃避でした。
     屋根裏部屋って何だか勝手にときめきを感じてたけど、本では汚いだの寒いだの、さんざん書かれているんですよね……。そんな窮地でも自分を堕とさない方法として、セアラは空想力を磨き続けた。現実のわびしさに目を向けるのではなく、ここではない、もう一つの屋根裏部屋を心に築いて住んでいたのです。

     するとある日、汚い小部屋に魔法がかかり、空想が本物に変わるという新章へと突入……★ これまたアメージングな読みどころです! その後返り咲いたセレブ生活もいいけれど、美しく変わった屋根裏部屋で暮らした数日間こそ、セアラにとって宝物のように輝く、一生の記憶となったのではないでしょうか☆

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著者プロフィール

フランシス・イライザ・ホジソン・バーネットは、1849年イギリス・マンチェスターに生まれたが、幼い頃父を亡くし、16歳で一家とともにアメリカへ渡る。1873年、医師のスワン・バーネットと結婚、二人の男児をもうける。1886年『小公子』を発表し大ベストセラーに。1905年『小公女』、1911年『秘密の花園』を発表し、世界的な児童文学作家としての地位を不動のものにした。ニューヨーク州で余生を送り、1924年同地にて死去。

「2021年 『小公女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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