グエムル-漢江の怪物- スタンダード・エディション [DVD]

監督 : ポン・ジュノ 
出演 : ソン・ガンホ  ピョン・ヒョボン  パク・ヘイル  ペ・ドゥナ  コ・アソン  イ・ドンホ  イ・ジェウン 
  • ハピネット・ピクチャーズ (2012年3月10日発売)
3.40
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  • (13)
本棚登録 : 601
感想 : 123
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4907953020009

感想・レビュー・書評

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  • 大好きです。
    怪獣映画としても、家族映画としても、社会風刺としても良いです。
    好きな韓国人俳優二大巨頭のソン・ガンホさんとペ・ドゥナさんが出ていたらこれは!観るしかない!と。実は4回目くらいで、今回はアマプラですが、BSとかで放送されてたら観てしまう作品です。
    開始10分くらいで、白昼堂々登場するグエムル(怪物っていう意味の言葉なんですね…名前じゃないのか…)。明るい所で暴れまくり。漢江の公園みたいなとこで走り回ってるのをバスから映す、映像センス。ポン・ジュノ監督の映像好きです。
    拐われた娘を助ける為にがんばる家族ですが、なんかおとぼけていて、家族愛の強さと肝心な所で…!ってなるのが苦いです。おじいちゃん…
    病院から家族で脱出するときのペ・ドゥナさん可愛過ぎた。何故早歩き。
    ソン・ガンホさん良いな…かなりダメなところから、だんだん目付きが変わってくるところ、不思議とかっこよく見えてきます。
    おじいちゃんも弟もよかった。弟についてきてくれたホームレスのおじさんはただの良い人…?
    ペ・ドゥナさんの最後のアーチェリーシーン痺れました。そのあとのソン・ガンホも。
    グエムルの発生原因が毒の垂れ流しとか、アメリカ好き勝手やってるな…とか風刺もありました。
    韓流は緩急が激しくつけられているので、笑っていいのか切ないのか苦いのかわからなくなりますが、娘さんが助からないので苦い映画です。
    跳び蹴り。

    Filmarksの方で、ポン・ジュノ監督は「寄生獣」とか浦沢直樹作品がお好きだと教えていただきました。グエムル、確かに浦沢直樹さんが漫画化出来そう。

  • ただのB級モンスターパニック映画だと思って観たら全然違いました。
    表面上はモンスターパニックものなんだけど、
    ファミリーコメディと社会風刺、メッセージ性をぶちこんでる。
    そりゃ韓国でヒットするよ・・・。

    アメリカでもそういう映画はヒットしますよね。
    映画が観客の気持ちを代弁してくれてるようなやつ。
    日本ってそういう映画があまり無い気がするんです。
    (知ってたら教えて欲しい)
    なんで日本の映画界ってこうなの?
    送り手側の問題?我々受け取り手側の問題?
    と、強く思わされました。

    で、この映画はモンスターパニックものとしてはそこまで面白くない。
    だけど、色んな要素が入ってて、その不協和音がすごくよくて。
    たぶん意図的になんだろうけど、全ての部分でセオリー破りを目指してる気がする。
    謎がすげえ多いんです。

    ここでフォローさせて頂いてる方とちょっと話したのだけど、
    モンスターの大きさってほんと重要ですよね。
    ゴジラサイズになると、民間人は手が出せない。
    軍隊が出てくるので、ジャンルとしては戦争映画やディザスター映画。
    『メルド』のように等身大になるとバイオレンス映画。

    この『グエムル』サイズで思い出すのは、超名作『トレマーズ』だ!
    『トレマーズ』世代なんですよ(笑)。
    で、『トレマーズ』は陸上版『ジョーズ』なんだとか。
    あとまんま『デューン』のサンドワームの小さい版なんだけど。

    このサイズになると、個人が戦えるのです。
    ジャンルとしてはガンアクションになる。
    『グエムル』は完全に個人・家族目線の内容で、
    科学者が出てきてモンスターの出自や生態を説明したりとかがない。
    全ては謎のまま。(出自だけははっきりと観客に示唆されてるんだけど)

    そして、色々な社会問題もあるんだけども、
    それらって我々一市民は、不満があったり「なんでそうなんの?」って思うのだけども、
    複雑で膨大に膨れ上がった社会システムって、結局は謎なんですよ。
    蛇口をひねれば水は出るし、スイッチを押せばテレビはつくけど、
    例えば原発の問題にせよ、この映画でも出てくるけど、イラク戦争のこともそう。
    根本的なことはよくわからない。
    わからないまま、知らないまま色んなことが起きてる。情報に流される。
    そういう怖さを非常に強く感じました。
    印象的なのが「誰も俺達の話をちゃんと聴いてくれなかった」っていうね。

    『ゴジラ』と対比しても、ABC兵器のAがゴジラで、BとCがグエムル。
    震災以降、日本人にとってはAが重要なのだけど、
    なぜか身近に感じられない。なんで?
    BとCの方がものすごく身近な問題に感じてしまう。
    ここんとこは日本の問題なのかもしれません。


    CGは途中までは出来が良いのだけど、炎や爆発の描写って難しいんだろうなあ。
    『キラー・インサイド・ミー』のラストで興醒めしたのを思い出した。
    あれよりは出来いいけど。

    そしてやっぱり食事のシーンは最高に良い。
    (『エグザイル/絆』も料理~食事シーンは良い)

    ラストは監督ははっきり名言しているのだけど、
    観客はどちらでも取れるような作りになってます。
    ウィルスの件もそうだけど、謎のままで色んな解釈ができる。
    あと、「手のひらの○」はポン・ジュノさんのサインなんでしょうか。
    グエムル=竹中直人で、『シェイキング東京』は続編なのかな。

    モンスターパニック映画としては★3個。
    社会風刺的メッセージで★4個。
    ぺ・ドゥナの赤ジャージで★100個なので、
    平均すると★5個の評価になります。
    ポン・ジュノは萌えのツボをよくわかってるなあ。

    • kwosaさん
      GMNTさん!

      おお、さっそく観てくださったのですね。
      ありがとうございます。

      そう、これ本当に「トッピング全部のせ」って感じで、いろい...
      GMNTさん!

      おお、さっそく観てくださったのですね。
      ありがとうございます。

      そう、これ本当に「トッピング全部のせ」って感じで、いろいろぶちこんであるんですよね。
      ポン・ジュノ監督がどのような経緯で『グエムル』を撮ったのかはしりませんが、もしかしたら「怪獣映画」という縛りがあって、そのなかで「日活ロマンポルノ」とか「Vシネ」みたいに監督のカラーが溢れちゃったのかな、と勝手に思ってみたり。
      根底に流れているものは同じですものね。
      それでもポン・ジュノ作品としては少し異色なので是非他の作品も観てみてください。

      そうそう、登場するダメなお父さんは『殺人の追憶』でも主演をしていて、『グエムル』とは全くイメージの違う叩き上げの刑事を好演、熱演していました。
      韓国では超人気俳優さんらしいです(その割には名前を覚えていないのですが)。

      とにかく韓国の映画は混沌としてはいるのですが熱量が凄い。
      理屈ではなくいろいろ伝わってくる物があります。

      あ、でもたしかに爆発のところは「がくっ」と腰が砕けたかも。
      うろ覚えですが、何となく思い出して笑ってしまいました。
      2013/06/08
    • GMNTさん
      いえいえ~こちらこそありがたいです!
      基本的に、薦められた映画は必ず観ることにしてるんですよ。
      友人とかでもあまり趣味が合うことがなくて、
      ...
      いえいえ~こちらこそありがたいです!
      基本的に、薦められた映画は必ず観ることにしてるんですよ。
      友人とかでもあまり趣味が合うことがなくて、
      10本中3~4本ぐらいしかバッチリってないのですが、
      合ったときに「あ、じゃあそれって趣味的じゃなくてほんとに面白いよね」ってなりますし、嬉しいですし。

      この映画のときの監督インタビューをちょこちょこ読んだんですが、
      「幻だったかもしれないけど、昔実際に漢江で見た」
      「監督になったらいつかそれを映画にしたいと思ってた」とか言ってるんですよ。
      なんじゃそれ!って(笑)。

      『殺人の追憶』も、置き換わっただけでかなり近いと聞いてます。
      で、お父さん役はソン・ガンホですね。
      『JSA』とか『復讐者に憐れみを』とか、パク・チャヌク作品によく出てるみたいですけど、
      『オールドボーイ』しか観たことなくて。
      ポン・ジュノもパク・チャヌクも、とりあえずレンタルである分は全部借りて観ようと思ってます~!

      炎のシーン、やっぱり純正ハリウッド産に比べたら若干落ちますね(笑)。
      あちらでも、そんなにお金かかってない映画だとやっぱり炎とか爆発ってダメなのが多い気がして。
      そこらへんが非常にB級くさくて、ある意味「味」になってて、これはこれでよかったですけど(笑)。
      2013/06/08
  • ・パク・ヒボン(ピョン・ヒボン) パク家の父親。ヒョンソの祖父。漢江の河川敷で売店を営む。
    ・パク・カンドゥ(ソン・ガンホ) パク家の長男。ヒョンソの父。父親が経営する売店でダラダラ働いているが、駄目男。
    ・パク・ヒョンソ(コ・アソン) カンドゥの娘。ヒボンの孫。タンサン女子中学1年。母はいない。
    ・パク・ナミル(パク・ヘイル) パク家の次男。ヒョンソの伯父。大学出なのに学生運動に熱中した挙句フリーター。アル中。
    ・パク・ナムジュ(ペ・ドゥナ) パク家の長女。ヒョンソの伯母。カンドゥの妹。アーチェリーの選手で銅メダル止まり。ジャージ。

    個人的ポン・ジュノ映画祭2作目に本作を選んだのは、何よりもポスターイメージだ。
    少女の背後に画面から見切れた怪物の姿。B級っぽいと敬遠する人もいるみたいだが、個人的には凄くセンスがいいと思う。
    結果、B級の皮をかぶったA級というよりは、B級はB級のまま堂々とエイキューだ! と。中島らもの真似だが、らもさんも本作を見られなかったのは残念がるんじゃないか。

    一言でいえば、変な映画、だがそれがサイコー!
    冒頭で米国研究者がホルムアルデヒドを流しにドボドボというくだりのテンポのよさには「バタリアン」冒頭のゾンビを焼いた煙が町に蔓延、というくだりを思い出したが、正しくは本多猪四郎「ゴジラ」の冒頭を思い出すべきなんだろう。あるいは庵野秀明「シン・ゴジラ」の冒頭を。
    河川敷での惨劇も勢いに息を呑んだ。
    そして個人的には怪物の見た目の可愛さ!!
    「シン・ゴジラ」の蒲田くんや、リドリー・スコット「エイリアン」と同じくらいキュンと来た。
    大きさというか小ささというか、サイズ感も素晴らしい。

    変な映画という理由だが、こういう怪物パニックでは軍隊や本職が活躍するものだが、本作では普通、というか普通より少し下の家族が、活躍するのだ。
    それも家族で一番ボンクラな中年の娘が怪物に襲われて死んだと全員嘆き悲しむ合同葬式の場面から一転、携帯電話で生きていると判明してから、活躍が始まる。
    その切実さは、活躍とかヒーローとかいったかっこよさではない、ただひたすら娘を・孫娘を・姪を助けようと藻掻く、泥臭い行動だ。
    この「活躍」を阻むのが警察だか軍隊だかとにかく当局の側。
    その当局の側にアメリカ人がいるというのもまた、反米感情というか皮肉の現れ。
    怪物の接触者はウィルス保菌者かもしれないと社会が疑心暗鬼になるのは、コロナ云々の現在だからこそ感じ入るものは大きい。
    以上の怒濤の展開で、もうこの一家全員を好きにならざるを得ないが、売店の経営者たるハゲた爺さんの活躍や家族への愛の深さには、とりわけ感じ入るものがあった。
    怪獣側の見所としては、人間を捕食して運んで穴蔵に貯蔵しておくという習性が、本当にいそうな感じがして、愛おしくなってきた(パンフレットにも、常に痛みや苦しみを感じている、などと書いているらしい)ところで、消化した骸骨ゲボゲボーッ、という凄まじいシーンも、またよい。

    このまま延々書き続けることもできるが、要は家族も、怪物も、どちらも好きになって(つい)応援してしまうのだ。
    ここで監督のインタビューから引用ふたつ。

    ・私が今回描きたかったのは、グエムルという怪獣そのものではなく、グエムルという怪獣が登場したことがきっかけとなって起こる、人々の反応だったのです。だから、グエムルが特定の何かを象徴しているということではないんです。
    ・『宇宙戦争』は本作の撮影中にスタッフに勧められて観ました。たしかに大きな状況をパーソナルな視点で描く部分で共通点はあるんですけど、物語の方向性は異なるし、むしろ影響という意味ではシャマランの『サイン』のほうが大きいかもしれません。あの作品も『宇宙戦争』と同様に宇宙人の襲撃を受けるSFですが、決してスペクタクルに執着するのではなく“家族”に焦点を合わせて物語を構成していくところに影響を受けました。

    やはり「パラサイト」と同じく、観客の憎しみを特定の人物には向けず、システム・組織・共同体の腐敗に向けさせる、そのための構図作りが、絵作りとマッチしているのだ。
    そしてわかりやすい構図の中で、ユーモラスで過剰で無駄な面白いワチャワチャをする人物たちを奔走させるディテールの豊富さ。

    と、理屈を書けば書けるが、もうとにかく全員好きだし怪物も好きだしひとつひとつがイイのだ!
    次回見るときは、大きな舞台や場所や構図、小さな小道具やギャグやといったディテールを、メモしながら見たい。
    また黒沢清フリークとしては、「リアル〜完全なる首長竜の日〜」と、見比べねばなるまい。

  • 2020年3月4日鑑賞。ソウル市内の河・漢江に突然現れ人を襲う怪物。娘ヒョンソをさらわれたダメ親父カンドゥは、家族とともに怪物の捜索にかかるが…。アカデミー作品賞受賞が話題のポン・ジュノ監督作品、2002年の作品だが古さは感じない、むしろ怪物よりも「ウィルス」を巡って混乱する韓国社会や米軍との指揮系統を巡って右往左往する韓国軍の描写などは妙にリアルで「今っぽい」感じがする。白昼堂々と河から出てきて人々をパニックに陥れる怪物の表現も生々しい。緊迫したシチュエーションの中でも妙にのんきな家族の面々やとぼけた市井の人々は「近くて遠い国」であることをなんとなく改めて感じさせられる…。緊張感MAXになりそうでならない、解決したようで解決しない、妙な映画でもあった。面白かったけど。

  •  怪獣映画として、率直に言ってかなり面白かった(みんなタイトルを意識してかこの映画を“怪物映画”と形容するが、僕は“怪獣映画”だと思う。あのクリーチャーは映画の中で“怪物”と呼ばれていたから僕もそう呼ぶけど)。公開前の宣伝ではなんとも重々しい雰囲気を強調していたが、いざ蓋を開けてみるとなかなかレベルの高い娯楽作品だった。

     市民の憩いの場として親しまれている韓国の大河、漢江(ハンガン)にある日突然、大きくて不気味な形をした怪物が現れ人を襲い始めた。ヤジ馬でごった返すなか、容赦なく次々と人間を餌食にしていく謎の怪物。川辺で売店を営むカンドゥは必死の抵抗を試みるが結果的に一人娘ヒョンソをさらわれてしまう。
     娘を失い悲嘆にくれるカンドゥ一家。しかもその上彼らは怪物に近づきすぎた為ウィルス汚染の疑いで当局に隔離されてしまう。その時カンドゥの携帯に着信が入る。「助けて…!」それはヒョンソからの助けを求める声だった!

     そこからカンドゥら一家による命がけのヒョンソ奪還が始まるのだが、とにかく登場人物がみな個性的だ。驚くことに主役級のキャラクターたちが皆ダメ人間ばっかなのである。カンドゥはいい歳して売店の店番もロクにできないダメ親父だし、カンドゥの父は子供たちに苦労をかけ続けたダメじじいだ。カンドゥの弟は大学を出ても就職もせず昼間から酒ばかり飲んでいるダメ男。妹はアーチェリーで優秀な成績を収める比較的出来の良い娘なのだが、精神的な弱さで優勝を逃したり、何故かいつもダサいジャージを好んで着ている(ようにしか見えない)など微妙にダメさ加減が漂う。
     そんなダメ一家が怪物と戦うのが面白い。そしてシリアスにやればいくらでも重くできそうな内容にギャグの要素を盛り込み、テンポよく物語を運ぶ。まあたまに笑い所なのかよくわからない場面もあったりしたけど、そこらへんは文化の違いなのか。
     そして怪物の描写が素晴らしい。CG合成がかなりリアルで、本当にこんな生き物がいるように思えるくらい存在感がある。調べてみると、ここらへんのCGはハリウッドのスタッフがほとんど作ったそうだ。なるほど、技術レベルが高い訳だ。
     逃げ惑う人々を容赦なく襲い胃袋におさめていく怪物。血が飛び散り、死体が転がっていく。ここら辺の描写も圧倒的。しかも映画序盤でいきなり登場して後は暴れっぱなしである。きっとここらへんの予算は出し惜しみしなかったのだろう(他の部分は出し惜しみしているかも知れない)。
     これは怪獣映画の本家を標榜している日本にとってはとても悔しい事だ。最近の日本の怪獣映画は本当にひどいと僕は個人的に思う。CGはそこそこ見せるが、特撮全体で見るとまったくリアリティがない。子供だましという言葉があるが、ハリウッドの大作を日常的に目にしている今どきの子供たちだ、あの特撮では子供すら騙す事は出来ないだろう。おまけに物語にすら魅力はない。
     具体的に例を挙げるとやはり『ゴジラ』だ(怪獣の元祖みたいな言い方を日本人はしているが、実はこれもアメリカの特撮映画『原子怪獣現る』に強く影響を受けていると言われている)。擦り切れるまで続編を作り続けた挙句、観客動員のため子供向けアニメ映画と同時上映にされ、しまいにはボロボロになって息絶えたと僕は思う。
     その過程でゴジラは未来人の陰謀によってゴジラサウルスなる恐竜が変異したものだという設定になり、水爆によって生まれた戦争のトラウマの権化のような怪獣、というメッセージ性は忘れられていった。さすがにまずいと思ったのか後期には監督が変わるたびに新しい設定に作り直されていった。哀れなゴジラである。初期のゴジラは近づきすぎると放射能に汚染されるという設定だったのがいつの間にか忘れられていった。今回『グエムル』がウィルス汚染による隔離、という設定を使用した事に僕はあっと叫んだものだ。
     そしてゴジラは最後まで人を食べなかった。本当に恐怖の対象としての怪獣だったらゴジラが人を食べるシーンを僕は描写するべきだと思っていたが、それも今回先にやられてしまった。
     そんな訳で僕は近年のゴジラを始めとする日本の怪獣映画を評価していない。あの評判の悪いアメリカ版ゴジラでさえ、純粋に怪獣映画として見れば出来は日本版よりはるかによかったと思っている(ただし『ゴジラ』として見るとやはりどうしても認めることは出来ないんだけど)。

     『グエムル』はそんな感じで日本の怪獣映画にすっかり諦念をもっていた僕を楽しませてくれた。
     たまに演出過多なのでは、と思う場面もあり、いくらなんでもここでこんな演出をする必要はないのでは?と思わせるシーンがいくつかあった。唐突に新キャラが登場して唐突にストーリーが展開する難点もあった。客が感情移入しようとすると巧妙につき離すのも意図しての事なのだろうがやりすぎではと思う事もあった。
     ラストも最後まで人を食ったような(いや、実際食ってるんだが)演出で観客を呆気に取らせる。
     映画の中に1シーンだけ家族全員がそろって食事を取る場面がある。何なのだろう、あのシーンは。監督がつい本音を漏らしてしまったのか。それともそう思わせようという監督の計算なのか。もしかしてまったく違う意味があるのか。わからない。

     全体としてツッコミ所はたくさんあるんだけど、怪物の描写やショック演出、そして観客を飽きさせない演出がちゃんとしていてとても楽しめました。
     逆に言えば日本の怪獣映画はそこらへんがちゃんとしていないって事だ。

  • すごく面白かった!!!映像も、演技も、音楽も、緊迫感も、乾いた笑いも、全部よかった。すべてが社会風刺に見えた。結局グエムルがなんなのか、誰も突き止めようとしない。しかも社会から離れた人が、結果的に掃除をしていた。どこか他人事なアメリカ人も、自分のことがいちばんの韓国人も、だんだんなにが悪いんだっけ?となる世の中も、2020年までずっと続いてるんだなと思った。

  • 河川から表れた突然変異の怪物が人間をパクパクしたり、娘をさらわれたうっかりで死人を出すタイプのパパが大奮闘したり、緊迫感とギャグが混在するお話でした。

    怪物の出来めちゃくちゃ良いな!?と思ったら、ハリウッドに外注したみたいで、そのせいなのか元凶はアメリカ人でした。え、作ってもらってひどい。

    ラストの馴染んでいるようなぎこちなさがあるような雰囲気で、ご飯お腹いっぱい食べてるのが綺麗にまとまってるなと思いました。

  • トホホな大人達が家族をグエムルから救い出す為に奔走する、という設定がいい。私が望むヒーローやヒロイン像は、まさにそれ。接客業とかやらせたら、人並み以下の仕事しかできないような、社会人としてはトホホ。だけど実は人並み以上の潜在能力があるんだって信じたいじゃない。ダメ人間を撮らせたら右に出る者がない、ウェス・アンダーソン監督にリメイクして欲しい!

  • 思ったより社会風刺寄りでちょっと求めるものとは違った。パラサイトの監督なのね。

  • 面白かった。なんとなくタイトルは知っていたけど、こんな大活劇映画だったとは。親子愛、家族愛を前面に押し出した韓国版ゴジラといったところか。ゴジラと同様にそのバックボーンには社会性も感じさせるが、なんといっても特撮の凄さとカット割りの凄さが印象に残った。
    ラストでは父親と抱き合うヒョンソの笑顔がまた見れるものと信じていたのだがな。

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著者プロフィール

1969年生まれ。映画監督。2019年『パラサイト 半地下の家族』がカンヌ国際映画祭でパルム・ドール、アカデミー賞で作品賞を含む4部門受賞。監督作品に『ほえる犬は噛まない』『母なる証明』ほか。

「2021年 『ポン・ジュノ映画術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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