弓 [DVD]

監督 : キム・ギドク 
出演 : チョン・ソンファン  ハン・ヨルム  ソ・ジソク 
  • ハピネット
3.71
  • (26)
  • (28)
  • (21)
  • (11)
  • (3)
本棚登録 : 156
感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4907953020887

感想・レビュー・書評

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  • 0162

  • キムギドク監督作観賞祭開催中。二作目。
    海の上で釣り船を経営する老人と、彼に6歳の頃に拾われてきた少女の物語。

    ☆5にするか迷った。
    物語そのものが倫理的な危うさを孕んでいるのを踏まえた上でも、ぞっとするほど美しいシーンがいくつもあった。なにより主役の少女の有無を言わせない生命感と美しさ(を通り越した妖絶さ)の説得力が圧倒的。寓話として強く評価したい。

    先日観た『うつせみ』の方と同じく主役である老人と少女が一切言葉を喋らない演出がとられているのだけど、不思議と喋らないことへの違和感はほとんどなかった。時々「そういえば喋ってないな」とは思うのだけどそれがあまり気にならないのは、観客が二人の中にある感情を感情のまま理解できるような撮り方がされているからだろう。言葉にするということは便利な一方で多くのものが失われてしまうから、感情を感情のまま伝播するっていうのはある種の理想系であり、その意味で監督が目指しているところは理解できる気がする。

    「自分」と「相手」と「世界」しか存在していないような、徹底して無駄を廃した構成など、共感する部分は多かった。

    老人と少女が身勝手に我をぶつけあいながら関係を刻々と変化させていく過程はゆったりとしながらも不思議な緊張感があって、それらを醜いととるにしても、美しいととるにしても、それは結局僕らの住んでいる世界の人間関係の縮図でもあるわけだよなあと思って、うぐぐぐぐ。

  • キム・ギドクらしい映画だなぁ、と。サマリアの時もそうだったけれど、何だろうね、あのハン・ヨルムの妖艶さは。美しすぎて、怖い。(12/1/15)

  • 深夜枠

    カレンダーにハートマーク描いて毎日×をつけていたり、マストに登って弓を弾いてみたり、おじいさんの行動がシュールで滑稽。ちょっと可哀想なくらい純粋。
    対して少女は、造作も表情も色っぽい。赤い唇が特に。女が美しさと純粋さを共存させていられる時期は短いなぁ…
    外の世界の、若い男を知ってしまえば、船の上の生活が異常でおぞましいものだと感じてしまうのは当然だろう。
    結局おじいさんは何者だったの?船の精…愛と妄執の化身…
    エロティックでミステリアス。
    必ず最後に愛は勝つ。

  • 少し前に見たので忘れている部分もあるけど、やはりあのファンタジックなラストに★一つを捧げて★4つ。

    悲しい恋の物語というより、醜い嫉妬に狂う老人が素敵というか、執着心に感心するというか。

  • 劇場にて鑑賞済み

  • だめだー
    やばいよー

    こんなに一人の監督にはまったことは過去になし

    本作は芸術ですね
    映像、音楽、そして主演のハン・ヨルムの危ういエロさが。
    こういう女優さんは普通の役(個性的でない役)できないんだろうな~という感じです。

    人間の汚い感情を剥き出しで表現するキム・ギドク。
    かなり好き嫌いがはっきりするんでしょうね

    最後は殺されるんだろうな~と思っていたが、浅はかでした。。。

  • 幻想的な映像で、突飛な愛の寓話をつづる、韓国の鬼才キム・ギドク。珠玉としかいいようがない、その作品群のなかでも「弓」はとりわけうつくしい。赤と緑を基調にしたあでやかな観音像、弓を弾く老人(チョン・ソンファン)孫とおぼしき歳若い少女(ヨン・ハルム)筆をもつ無骨な手がその目尻にほどこす、黒、白、黄の三色の点、波のないおだやかな海、そこへうかぶ古びた釣り船、それらを次々とうつしだす冒頭、その絵があまりにもたおやかで、おもわずため息が漏れる。背景にながれるのはものがなしい弦楽器のしらべだ。荘厳な雰囲気は「春夏秋冬そして春」を連想させる。あれも水上の物語で、湖にただよう浮き堂が舞台だった。あいかわらずそこでえがかれる愛、というか欲望はグロテスクだが、洋上という世俗からきりはなされた空間、主人公のふたりから声をうばい、表情だけですべてをかたらせる演出、象徴的な小道具のつかい方、少女のあやうさと妖しさ、そして優美な色づかいもあいまって、あまくはかない夢のような作品に仕上がっている。

    もっともかれの映画は、いつもだいたいそんなふうだ。浮世離れした極端な男女がたどたとしく愛を紡ぐ、邪悪でいびつなファンタジー。扇情的で暴力にまみれた大人のための残酷童話。ただ「弓」は、監督がまるくなったのか、あるいはわたしがその世界になれたのか、よくわからないけれど、だいぶこなれた印象で、はげしさやあらあらしさはなりをひそめている。あっけにとられるような展開、もうわらうしかない状況、というのもほとんどみられない。老いぼれのつくりあげた醜悪な桃源郷に、これほどすんなり入りこめるなんて、我ながらびっくりしてしまう。それほど「弓」は洗練されている。老人と少女にセリフは一切ないが、かれらの面持ち、それに仕草はおどろくほど雄弁で、音声としての言葉がきこえなくても、違和はかんじない。そういえば「悪い男」でチョ・ジェヒョンがえんじたのも声をなくしたヤクザだった。とはいえ「弓」の老いぼれとむすめは、口がきけないわけではない。かれらは言語ではなく、弓を媒介にして意志や感情をつたえあう。

    船にはときどき釣り客がやってくる。老人はどうやらその収入で暮らしてるらしい。奔放な少女は妖艶な笑みをうかべつつ、かれらのまわりを舞う。男たちは蠅みたいに、ぶんぶんと五月蝿くかのじょへたかる。弓はそんなとき、威嚇の役割もはたす。しかし、夜になればやさしく子守唄を奏で、むすめはその音色を聞き、やすらかなねむりにつく。またそれは「弓占い」という不思議な儀式にもしばしば用いられる。釣り船の横に吊るされたブランコを少女がゆらし、老人は小型船からそのさきの観音像めがけて矢をはなつ。刺さった矢の位置で少女が運命をよむ、それは危険な占いだ。けれど彼女は微笑みながら、悠然とブランコを漕ぎつづける。じぶんに矢は当たらない。そこにあるのは信頼というより確信。手首にくくりつけられた極彩色の布と、絞り染めのワンピースが風にたなびく、その場面はじつに神秘的で、夢と現の合間を彷徨っているかのようだ。6歳のとき、ここへつられてきた少女は、もう数えで16歳(15歳)いつのまにか不穏な色気を身につけている。

    まもなく訪れる17(16)回目の誕生日は、老人との婚礼が執り行われる日。かれは式を心待ちにしており、カレンダーに印をつけては、日取りが近づいたことを喜んでいた。そう、かれらは祖父と孫ではない。養父と養女ですらなかった。孤児をひろってきてそだてていたのかとおもえばそれもちがう。少女はさらわれ、ずっと船上に幽閉されていたのだ。つまり老人の正体は幼女誘拐監禁犯。という、ふたりの奇怪な関係が「弓」では徐々につまびらかにされていく。ギドクの作品がいやな後味をのこさないのは、身勝手な暴力男やいかれた変質者を決して美化しないからだとおもう。不能のチンピラはどこまでいっても不能のチンピラだし、色ボケロリコン爺はどうころがっても色ボケロリコン爺でしかない。なのに、やはりその密室は奇妙な透明感に支配されている。しかし大切に守ってきたその箱庭もやがてあたりまえに崩壊していく。少女がはじめての恋におち、性にめざめ、やっと犯人を憎悪するのだ。嫉妬に身をこがし、相手の青年にむけて矢を射る老人。

    けれど、もちろんそれが結末ではない。むすめは結局、老いぼれのくらい情欲、たったひとつの希望を受け入れる。青年はただ、式を見守るしかない。婚礼のあと、老人は灰色の海へしずみ、少女は矢につらぬかれて着衣をよごす。破瓜は初恋の相手でなく、放たれた矢によってもたらされる。老人はついにおもいを遂げたのだ。ということを、そのまんますぎるあんまりな表現でしらされ、ラストシーンでとうとうわらってしまう。それはいささか滑稽な、終わりのはじまりだった。でもだからこそキム・ギドクだし、その身も蓋もなさが天才たるゆえんなのだろう。演じるヨン・ハルムは「サマリア」の微笑み援交少女。いたずらにひとの不安を煽る、不可思議な魅力を持った女優だが「弓」ではそれが凶暴な魔性に変化、というか進化している。白い肌や紅い唇はもとより、手足をおおう金色の産毛やうっすらとうきあがる臑の青あざ、ちいさな引っ掻き傷までが淫靡で、観ているだけで性犯罪者気分。ちょっと目をそむけたくなるような、危ない色香をはらんでいる。

  • 少女と老人は、今日も船に揺られている。

    二人の間柄は、誰も知らない。
    だが老人は、男は、少女との結婚を望んでいる。

    一切を老人にゆだね信頼しきる少女と
    客の釣り人を決して少女に近づかせない老人。

    絶対的な信頼と、絶対的な愛で何が生まれるのか、考えさせられる。
    考えてみて、きっとそれは小宇宙なんじゃないかと思う。

    海の上に、船1つ、人間2人。
    そこには小宇宙が生まれて、2人だけのルールがある。



    キム・ギドクのシーンメイキングの才能に脱帽、というか失神。
    何かと何かを掛け合わせることが化学変化でありシーンメイキングだとしたら、
    彼は完璧な科学者だと思う。ぜひ観てもらいたい一本。

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