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- / ISBN・EAN: 4988101130238
感想・レビュー・書評
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1963年公開、ということでセリフに昭和30年代の現代ものの日本映画の香りがした。木さると雲太郎が若い恋人同士という設定で、「チェッ」などという雲太郎のセリフがあったり、木さるの醸し出す雰囲気が30年代の現代ものの若い女性のしぐさ。
どうしても1999版と比べてしまう。筋が分かっているのでこれからどうなるのか、という見方ではなく、ここはこう撮ったのか、という見方になってしまった。短い分テンポがいいのかと思ったが、そうでもなかった。篠田版は長い分説明が丁寧で筋が分かりやすかったのだ、とわかった。石川五右衛門のからみがある分篠田版の方がオチ的にはおもしろい。が衣装とかは工藤版は質素でそこは歴史の雰囲気を感じた。
特典映像で雲太郎が「期待の新人」河原崎長一郎だったのにはびっくり。だれにでも若い時はあるのだ、なんて思ってしまった。
1963東映
2021.10.27レンタル詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
司馬遼太郎原作『忍者秘帖 梟の城』、1963年版。監督は工藤栄一。脚本は池田一朗(隆慶一郎)。こちらの方を先にレンタルしていたら、たまたま『必殺!III 裏か表か』が放映された。
『梟の城』は再映画化された1999年の篠田正浩版、中井貴一が主演のやつは以前観たが、あまり面白くなかった。良い点としては篠田作品と言えばのキチジローのマコ岩松さんが秀吉だったことと、OPのグラフィックを奥村靫正さんが手がけていたことなど。
それよりは断然1963年版の方が面白かったと思う。上映時間はこちらの方が47分も短く、朝鮮出兵や石川五右衛門など枝葉の部分はカット。99年版がドラマ性重視、63年版は忍者アクション重視だと思う。ここが素晴らしい。しかし、司馬遼太郎が描きたかったものも見えてきた。戦車兵だった司馬遼太郎が軍部のトップ、あるいは天皇を殺しに行く話だと感じたのは深読みしすぎだろうか?
以前も書いたが1963年頃の各社時代劇は、ズバッ!ドシュ!ブシュ!といった斬撃音(斬殺音)がついてたりついてなかったり。この映画でもついてる部分の方が少なかった。そのこと自体は、チャンバラ(剣劇)の迫力が少なくなり物足りないが、それが工藤栄一の演出と組み合わさった時の面白さの方が上回っていた。
忍者アクションはステルスゲーム(小島秀夫)的な面白さの源流だが、工藤演出のロングでローアングルに、BGMや効果音のない「無音状態」のシーンがかなりある。これがカッコよすぎて鳥肌が立った。
竹林で対決するのはのちの『五人の賞金稼ぎ』と全く同じ。スパイダーマンが摩天楼じゃないと蜘蛛の糸を引っ掛けられないのと同じで、竹林で戦うと竹に上る縦方向の移動や、竹に手裏剣やくないがカカカッ!と刺さる(大江戸捜査網のアイキャッチのアレ)など、カッコ良いアクションを作りやすいんだと思う。土遁の術も笹の葉の下に隠れる。
そして、バイオレンスシーンのよさ!
身バレしないように自らの顔を潰すお頭!!
『梟の城』が3月公開、同年の12月に代表作となった『十三人の刺客』が公開。『梟の城』はカラー、『十三人の刺客』は白黒。当時のフィルムを見て思うのが、白黒の方が高精細でリアルに写っている。カラーの方は総天然色ってな感じの色(アメリカの3色分解のテクニカラーや、リマスターの差異はあるかもだけど)。当時は化粧をバッチリ塗ってそう、照明も強い光だったと思う。この頃のカラー映画は、70年代の作品とも全く違い「まるで絵画のよう」。フィルムの粒状感ともども、塗り込んだマチエールの感じ。だから一種のファンタジーのようで、これからどんどんリアル志向になっていく(東映のヤクザ映画が任侠ものから実録ものになるのと同じ流れ)。
それは良くも悪くもで、今の撮影方法だと精密に写りすぎていて、背景やセットと人物や衣装が馴染んでない。だから逆にアラが見えやすいし、嘘っぽい。
大阪城に忍び込んで秀吉を暗殺しようとするシーン、99年版では絢爛豪華なだけで侘び寂びがなく「軽い」。ところが、63年版は城の廊下が薄暗い中で金色の襖がぼやーっと浮かぶ。
つまりこれは、谷崎潤一郎が『陰翳礼讃』で語っていた美そのものだと思う。のちに必殺シリーズでは照明を片側から当てて、裏と表の二面性を表現していたが、陰を作ることの大切さ。
出演者。
ライバル役に大木実。明智小五郎役もやっているが、悪役面。新仕置人の『妖刀無用』、最高。(明智小五郎と金田一耕助(古谷一行)どちらにも復讐しようとした緑魔子w)
デビュー3年目の河原崎長一郎。わっかい!
その河原崎長一郎と恋仲になる木さる役に本間千代子さん。この人はアイドル的人気があったそうで、別に脱いだりしてないのに表情がエロい。ご本人は東映のエロ路線が大嫌いだったそうで、社の方針と合わず女優としてはパッとせず終わったそう。当時の東映あるある、それで東映を辞めた方も多かったし、上手く流れに乗れた人もいた。
いつも出てるスガカン、若くてカッコいい!
そして花沢徳衛さん。のちのカニの仕置人(工藤栄一回)…蝋燭の演出もカッコよくて良い。
主演、大友柳太朗。
私にとっては遺作となった「ラーメンの先生」である。若い頃の主演作は初めて観たかも。この映画ひとつ観ればわかるが、大友柳太朗さんはほんと滑舌が悪い…そのことも、めちゃくちゃ真面目だったご本人を苦しめたそう。エピソードを読むだけで、強迫観念、強迫性障害気味だったのではと思う。悲しい。 -
2014.11.9
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いやあ面白かった。昔の映画なので感覚が合わないかと思っていたが、すごく面白かった。
小萩のちょっと妖しい色気がいい!最後まで彼女が敵なのか味方なのかハラハラしっぱなし。
「恨みと憎しみだけを燃やして生きて良いものでしょうか。幸せを求めて楽しく暮らすのが人間の道ではないでしょうか」
「これがわらわの答えじゃ」
考え方がすごく現代的で、見ていて面白い。
「秀吉を目の前にしながら、天下人に抱いてきた俺の夢は、無残にも崩れてしまったよ」
作品全体を見てもちょっと皮肉な言い回し。葛籠重蔵はちょっとバジリスクの主人公とちょっと感じが似ていて、司馬さんの理想の男性像なのかなと思ったり。
視点がコロコロ変わるんだが、重蔵の思い詰めた顔ばかり見ていたらこっちも疲れてしまうし、木さるの奔放な感じ、敵ながら襲撃を見破った洞玄、味方に思えた人が利益のみで敵に代わる、次々と人が死んでいく、などなど視点が交錯して見ていて飽きない。
梟の鳴き声と梟の城っていうタイトルもしっかり回収したし、一つの作品として見事に完成しているなあと思った。 -
司馬遼太郎原作。二度ほど映画化されてるけど、こちらは古い方。大雨の中での決闘が『マトリックス・リローデッド』のラストぽい。51点。
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[1963年日本映画、TV録画鑑賞]