椿三十郎<普及版> [DVD]

監督 : 黒澤明 
出演 : 三船敏郎  仲代達矢  加山雄三  団令子  志村喬  田中邦衛 
  • 東宝
4.16
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感想 : 60
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988104044679

感想・レビュー・書評

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  • 娯楽時代劇超大作である。最初から最後まで映画としての面白さが駆け抜けていく。初めてみたのはテレビであったが、面白すぎて目が離せなくなったのを憶えています。
    なかでも、三十郎の繰り出す手と、周囲のとぼけた連中の掛け合いが面白い。これほど悪役の影が薄い時代劇も珍しいな。(笑)

  • ラスト5分があまりにも見事で、何度も何度も繰り返し観てしまいました。10回は観たと思います。

    三船敏郎演じる椿三十郎と、仲代達矢演じる室戸半兵衛の、超一流の手練れ同士による一瞬の居合勝負と、音を立てて血が吹き上がる壮絶な決着のつき方は、もちろん、ものすごいインパクトがあります。

    しかし、その直前の、まるで、対の舞踊であるかのように、両者互いに着物の胸元にしまっていた腕を体中の神経を張りつめさせながらゆっくりと出し、そのまま時が凍りついてしまったかのように全く微動だにせずに睨み合う場面に満ちる、静かな緊迫感の美しさときたら。
    息を詰めて見入ってしまうその素晴らしさは、もはや芸術の域に達していると言っても過言ではないと思います。

    この究極の5分を即頭出しできるようにチャプター構成してくれたDVD編集者には、感謝しかない。

    もちろん、全篇通して素晴らしい作品です。

    あらすじとしては、悪い家臣を倒すつもりが逆に罠にかかってしまった9人の若侍と、その上司である「城代」、そしてその家族を、通りすがりの腕利き浪人の椿三十郎が助ける、というヒーローもの。
    あらすじとしてなら本当にたったこれだけで、三十郎の見事な知略と剣術が存分に楽しめます。

    そして、殺(や)るか殺(や)られるかの緊迫しているはずの状況の中に、「コントやんっ!」て突っ込みを入れたくなるようなコミカルだったり脱力してしまうシーンがたくさん散りばめられているのも、ものすごく面白いです。

    しかし、ただかっこいい、おもしろい、というだけではない。

    何にも縛られず自由に生きているようで、暗い過去や深い孤独、そして、自分ではどうにもできない危険な性質をその身に抱えていることが垣間見える三十郎。
    おっとりおっとり世間知らずでズレているようで、三十郎の危うさを見抜いて柔らかく忠告する、城代の奥方。
    一見すると愚鈍そうで、実は非常に老獪でしたたかな城代。

    人間の奥深さを見せつける黒澤映画の真髄が、90分あまりの短時間の中に、濃密に詰まっています。

    「…抜き身だ。こいつも俺も、鞘に入ってねえ刀だ。でもな、あの奥方が言ったとおり、本当にいい刀は鞘に入っている…」
    そう言い残して去る三十郎の哀愁ある背中はとても印象的です。

  • もちろん初鑑賞ではない。贅沢を言えば時系列順に先に「用心棒」(1961) を先に観たかったが、同日の日程だったこともありおとなしく引き下がってこちらを先に鑑賞。

    で、やはり回を重ねるにつれ注視のしどころが変わってきてしまっている。今回の脇役陣の登場で一番テンションが上がったのは加山雄三演ずる伊坂の叔父邸宅に踏み入った際にその窮状を伝える腰元役、樋口年子の登場シーン。「隠し砦の三悪人」(1958) のオーディションを勝ち抜き、台詞付きの配役として「秋月領での戦禍のさなか捉えられた領民」を好演、三船演ずる真壁六郎太にひらりと馬に乗っけられるあの百姓娘の子が彼女である。今回もがっつりと台詞付きで重要な役どころをこなしていてつい心のなかで拍手を送ってしまうのだが、こうした心持ちは彼女が39歳で早逝したというWikipediaの記述を読んでいたが上についどうしても表に出てきてしまうもののようだ。本映画祭ではあともう一回、「悪い奴ほどよく眠る」(1960) にてお目にかかることができた。

    それにしても終盤にようやく登場する伊藤雄之助の配役のことはど忘れしてしまっていて、彼の「自称ウマヅラ」っぽさにまたもやしてやられてしまった。後日「侍」(1965) での冷徹な刺客役にぞくっとさせてもらえたし、「日本のいちばん長い日」(1967) での愚直な軍人ぶりもぴったりだったし、「赤毛」(1969) での若干コミカルな代官ぶりも存分に楽しませてもらった。本映画祭のラインナップにおいて随一のカメレオン俳優と呼ぶにふさわしい活躍ぶりであったのではないかと。

    あともうひとり付け加えさせていただくと、伊藤雄之助演ずる城代家老の奥方役が入江たか子、つまりは大林作品でもおなじみの入江若葉のお母様であったという点と線のつながり具合。ちなみにお母様には本作より30年以上も前の作品、「藤原義江のふるさと」(1930) の上映機会にお会いしていたことになるらしいのだがこれについては若干記憶があいまい。

    そして最後の決闘シーンはやはり「上意討ち 拝領妻始末」(1967) と例にもれず混同してしまうのであった。今後のためにメモっておこう。

    「若侍らのギャラリーがいるほうが『三十郎』。」

  • 『用心棒』を観たらセットでどうしても観たくなる『椿三十郎』。
    10代の頃に観て、ショックでおしっこちびりそうになった。
    そのぐらい、おもしろいおもしろい映画です。

    だいたい、自分が10代の頃観てショックを受けて大好きな映画って
    こんなんばっかなんですよ。
    『椿三十郎』、『その男、凶暴につき』、『レザボア・ドッグス』・・・
    スターウォーズEP5『帝国の逆襲』もそうですね。(元ネタが黒澤映画だしね)
    『フレンチ・コネクション』も10代の頃観てたらもっと面白かったと思う。
    バカですねー10代男子!!

    いや、でもね。本当に面白いんだからしょうがない。

    で、なんで「世界のクロサワ」になったのか、というと
    アメリカではヘイズコードとか、バイオレンス描写の規制があったからなのかも。
    まあ規制しようがなんだろうが銃乱射事件とか起こる国なんだけど、
    アメリカは銃社会だけど、日本人は日本刀とか持ってる人の方が少ないですし。

    『用心棒』がイタリアで『荒野の用心棒』を生み出し、
    その続編の『続・夕陽のガンマン』や深作映画がタランティーノを生んだように。
    『隠し砦の三悪人』がスターウォーズを生んだように。
    まあ、全部つながってますね。好きなもんは。

    そんな風に『椿三十郎』が好きなもんだから、
    織田裕二版は許せなくて・・・
    『踊る大捜査線』のM51とか本広克行とかにも昔から怒りが・・・
    いや織田&本広で好きなのもありましたよ、『お金がない!』とか。
    織田は悪くない・・・織田は・・・
    わかっちゃいるけど・・・ムカつくもんはムカつくんじゃあ!!!
    (なんか織田裕二に対する愚痴になってしまった・・・)


    さて、今になって観返しました『椿三十郎』。
    昔とは違う観方ができるからおもしろい。

    前作『用心棒』では名前が動物シリーズでしたが、
    今回の名前は椿・菊・藤・竹と植物シリーズ。

    人間関係もすでに大物のミフネが居て、
    その下に9人の若侍、若い俳優がいるという構図。
    この先輩後輩関係というのがものすごく面白くて、話にも直結する。
    因みにその若侍というのは、加山雄三、田中邦衛、
    平田昭彦(芹沢・岩本博士)、土屋嘉男等です。あと知らん。

    この映画の主役はもちろんミフネとライバルの仲代さんなんだけど、
    3人目の主役、それは小林桂樹!!!!!!
    いやもう最高!!!!!
    『江分利満氏の優雅な生活』といい、『日本のいちばん長い日』の徳川侍従長といい・・・
    小林桂樹さんはほんとに素晴らしい!!

    あとは助け出した城代家老の奥方と娘。
    小林さんといい、このふたりといい、
    緊迫したストーリーなんだけど、それを崩すんですよね。
    オフビートっちゅうか、テンポを崩す。
    そこんとこの笑いが最高に面白い。

    ミフネも仲代さんもカッコいいんだけど、同時にすごくかわいらしい。
    カッコよくて、かわいくて、笑える。
    そういう映画ってなかなかない。
    (仲代さんのオデコ、月代が縦に長いのが笑えるw)


    もうあと言うことはあのシーンしか無いんですけど、
    言うとネタバレになるので言えません。
    もうねー「間合い」としか言えない。
    あの居合の「間合い」をどうやって制するか、が鍵。

    この「間合い」はガンアクションでは絶対にできない!
    ガンアクションがスペシウム光線とすれば、
    刀はウルトラセブンの投げないアイスラッガーなんですよ!!

    『ブルーバレンタイン』と『日本のいちばん長い日』を観た時に思ったけど、
    カラー映画、特に70年代ごろまでって血糊が全然リアルじゃない。
    これたぶん、世界的にそう。
    (アメリカは規制のためかも。『タクシードライバー』とか)
    80年代になってくると血糊がリアルになる。

    そういう面では、昔は白黒映画の血の方がものすごくリアル。
    赤くなくていいので、墨汁とか
    『サイコ』や『レイジング・ブル』とかだとチョコレートを使ってますね。

  • 世界の黒澤明監督、三船敏郎主演。なんか織田裕二主演で最近リメイク版も作られたけど観るなら絶対に黒澤版を!レンタルにしても勿体無いですよ。で本作、腹黒い家老たちの不正と戦う若侍たちを助けるために立ち上がった凄腕の浪人、三十郎を描いた傑作時代劇です。名作『用心棒』の続編ですがこちらは全体のトーンはほのぼの系(笑)。が一転、今までのユルい空気感をガラリと変えるほどの凄まじい緊張感が最後に待ってます!テーマ自体が今の時代にも通ずるものがあるので中だるみもなく最後にはスカッとさせてくれます。クライマックスの仲代達矢との居合い対決は映画史に輝く名シーンです!ラスト、全てを倒し『俺のようになるな』と去っていく三船に男なら(女の子でも)シビれること間違いなし!

  • ひさしぶりに椿三十郎をみる.
    初めて見たのはどこかの名画座で黒澤映画の特集をやっているときだった.多分.
    私はカラーになってからの黒澤映画を少しも面白いと思えないのだが,このころの映画はテンポも良く役者も揃っていて,なにより見ていて楽しくてしようがない.こんなチャンバラをできる役者,やらせる監督はもういないのでは.三船敏郎は当時42歳.かっこよすぎ.

  • 最後の抜刀術めっちゃ速かった。

    左手で抜いて右手を添えるだけであんな切れるものなのか。

    ストーリー
    『用心棒』大ヒットの翌年に製作された続編的要素をもつ作品。お家乗っ取りに暗躍する悪家老一味と、血気盛んな若侍たちの確執に、(今回は椿と姓を名乗る)三十郎(三船敏郎)が巻き込まれていく。
    原作は山本周五郎で、黒澤明監督も今回は肩の力を抜いて、ホノボノとした明朗感を大切にしながら演出。しかしその中で、正義の城代家老の妻(入江たか子)に「あなた(=三十郎)は抜き身の刀のよう。でも本当にいい刀は鞘に収まっている」とサラリと言わしめ、力をコントロールすることの大切さをさりげなく説いているあたりもうまい。クライマックス、敵方の室戸半兵衛(仲代達矢)との一瞬の居合対決は、今でも語り草となる凄絶なシーン。当時、三船の殺陣は、もはやフィルムのコマに刀が映っていないほどすばやいものだったと言われている。

  • 旦那の奨めで観ました。
    三船敏郎がかっこよすぎるし、三十郎が厳しいこといいつつ可愛かったりおせっかいだったり情に厚かったり。人質もいい味出してて要所要所でクスっと笑えるシーンがあって楽しめました。
    そして、とにかく最後の決闘シーンが壮絶で。

  • ノーカットでの居合い抜きシーンはつい目を奪われますが、全般的には主人公の善意に満ちたキャラぶりが熱いですね。強くても人を裏切らない人情、女のスローペースぶりにタジタジになる居所の悪さなど、人々に好まれるヒーロー像を好演しているように思いました。音楽とサウンドエフェクトも重厚かつ生々しくてカッコ良いです。喜ぶシーンでジャズを流すのはご愛嬌でしょうか。武の真似をする松村が「やっぱり黒澤さんなんだよな~」というのも随所のシーンでなるほどと。捕らえた敵が度々居直るときの互いの間や、夫人の危機感のなさなど、つい可笑しくなる箇所も多いですね。上品なユーモアだけど実に面白い不思議。加山雄三と田中邦衛のやり取りがすでに若大将シリーズぽい。

  • リメイクするんじゃあないよ…。

    モノクロのフィルムのコントラスト、三船敏郎演じる「抜き身の刀」椿三十郎の繰り出す殺陣、仲代達矢の恐ろしいほどに見開いた眼の力、そしてスピードを感じる演出…と素人目に見てもそれらの要素が見事に組み合わさっていて、作品そのものががっしりとしている印象を受けました。
    次々に知略を巡らせる知的な面と、バッタバタと敵をなぎ倒す骨太な面を持っている三十郎がとにかくカッコいい!表面上では無頼漢が活躍する勧善懲悪の単純明快なストーリーだけど、ちょっとお節介で兄貴肌な三十郎の生き方の不器用さ、このようにしか生きれないんだ、という彼の人生観が感じ取れるような気がします。

    意外だったのがコメディタッチな要素。頼りない九人の侍とその主の奥方と娘、捕まった敵方の家来のやりとりが面白くて面白くて…。

    ラストシーンでの二人が対峙している緊迫感と例のシーンでのインパクトの対比が凄まじくて、鳥肌が…。
    こんな凄い映画があったんだなぁ…。

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著者プロフィール

(くろさわ あきら 1910−1998年)
日本を代表する映画監督。1943年『姿三四郎』で監督デビュー。生涯30本におよぶ名作を監督した。『七人の侍』(1954年ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞)など海外の映画祭での受賞が多く、映画監督として初めて文化勲章、国民栄誉賞を受賞し、1990年には米アカデミー名誉賞が贈られた。

「2012年 『黒澤明脚本集『七人の侍』』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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