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- / ISBN・EAN: 4934569630858
感想・レビュー・書評
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駐車場から出るだけのシーンや花火遊びなど、不要で長すぎるカットが多い(その日常性こそが北野映画の特徴かもしれないが)。リアリティのなさも目立つ。ヤクザにしては随分言葉遣いが丁寧だったり、親分や斎藤はどうみてもサラリーマンだったり、沖縄の方言が一切感じなかったり立ちっぱなしで撃ち合いを始めたり(しかもたけしには一切当たらない)。また、端役の演技は前時代的に大げさで目も当てられない。飽き足らない部分はたくさんあるし、アウトレイジと比べれば編集力の格段の差がある。
だが、そうした欠点が本作の輝きを消してしまうことはない。紺碧の空と漆黒の闇、若き女のむき出しの裸体と刺青で埋まったヤクザのからだ、無邪気な戯れと容赦無い殺し合い。ありとあらゆる生と死のコントラストから、美としか言いようのない一つの実在が浮き上がる。けしてそれは概念ではない。
そして徐々に生と死がひとつの姿に混じり合っていく。生の象徴である幸の、今生の別れを覚悟したマシンガン連射は泣き声である。そして最期、本来「生」であるはずの昼に自ら頭を撃ち抜くのが素晴らしい。これにより、生と死の両極が、最期にぐしゃっと交じり合う。
まさに、「あんまり死ぬのが怖いと、死にたくなっちゃう」。
これは、アウトレイジにはないリリシズム。
また、特筆すべきはたけしの演技だ。抑制されていて、だからこそ感情が出る場面のふるまいは心に響く。諦念に貫かれた笑顔は悲しくもあり、底抜けでもある。
「平気でおっぱい出すんだもんな、すごいよな」
と笑い声混じりの言い回しは、常にひんやりとしたこの映画の中で、ほっとするようなあたたかみがある。ヒロインの幸はけして美人ではないが、天真爛漫で健康的なエロスが満ち溢れている。上記の、胸を自らさらけ出したあとの笑顔には、赤ん坊のような生の発露が現れている。ついでに言えば声も可愛い。国舞亜矢という役者らしいが、もう引退しているらしい。惜しい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
純粋で 優しくて 子供じみた馬鹿馬鹿しさには可愛げがあって。それでいて常にどこか哀しみを帯びている 北野監督の人間性をそのまま映像化したような作品だと感じた。彼と 彼の映画のそういうところが いつまでも人々を惹きつけているのだろう。結末はわりと序盤で想像出来てしまったけれど、 "HANA-BI" のあの救いようのない絶望感とは違う、静かな切なさを感じながらエンドロールを眺めていた。
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北野監督らしく暴力が前面に出ていますが、何か懐かしいというか温かいというか。。。舞台が沖縄という事もあるのだろうか、殺伐とした空気がなぜかゆっくりと流れていく感じがするのは。。。勝村さんは初々しさ、寺島さんのやんちゃさ、たけしさんのもの悲しさ、本当に絶妙です。
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村川(北野武)は、ヤクザ稼業に嫌気が差している北嶋組幹部。そんな男が、親分の依頼で中松組の助っ人として、沖縄に飛んだ。
村川を待っていたのは、敵対する阿南組の襲撃。
――連れの子分が2人殺られた。「ドンパチでやばいとは聞いていたが、話が違い過ぎる……」。
また2人、凶弾に倒れた。抜けるような青い空と海、照り付ける太陽の下で殺戮は続く。
「ハメられた! 」
逃げ場を失った村川は、ただひたすら〈死〉に向かって突き進むのだった。
北野武がクエンティン・タランティーノなど世界的に認められるきっかけになった傑作バイオレンス映画。
北野作品のトレードマークである突発的な痛さや怖さが伝わってくるバイオレンスシーンが更に洗練され、エレベーター内での緻密な構図の銃撃戦や手打ち式での真っ暗な中で銃撃の閃光が照らすスタイリッシュなバイオレンスシーン、ヤクザが紙相撲やロシアンルーレットや花火合戦に興じる夏休みのような至福の時間やユーモア、北野武作品初期の傑作バイオレンス映画。 -
北野武監督作品は、アウトレイジから観てしまったので、初期のソナチネのような作品があってのアウトレイジなのだというのが漸くわかりました。
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なんでもっと早く観なかったのだろう、と後悔して、同時に定期的に観たくなるのだろう、というのが観終わった直後の感想。
見方によって、セリフの解釈によって静と動がするっと入れ変わってしまうことに感嘆。
青に黒。見惚れる。 -
所々気狂いピエロと似たシーンが出てくる。初期北野映画の集大成だそう。そっちを先に観れば良かったな。
静謐と暴力、おっぱいの映画。
正直よくワカラナイ。 -
あっさり簡単に人が死んだと思ったらいい年こいたヤクザが小学生みたいに遊びだす。死んだり殺したりしながら遊ぶ。そしてとりあえず仇も取ったし楽しかったしもういいんじゃね?という感じで死ぬ。
わかるようなわからないような。ぼんやりと見た、ゴダールの気狂いピエロを思い出す映画だった。 -
ひどい疲れと厭世感。
暴力、権力争いの先の虚無を描いた力作。 -
沖縄。
自然の美しさと
人間の暴力。
感情の起伏。
静けさと嵐のコントラスト。
それが上手いんだよなー、たけしさんの作品は。 -
HANA-BIでも感じたが、北野映画に登場するメインとなる女性からは、女性らしさ…性…いやらしさを感じない。
監督自身のイメージする女性で大きく印象的なのは、やはり母親の存在ではないだろうか。
もう何年前になるかわからないが、母親が亡くなった時の、彼のインタビューは印象に残っているし、たまに見返す。
ラストシーン、主人公の村川は仲間の仇討ちをし、戻ってこようとすると思いきや自殺をしてしまう。
そういえば女性の名前は"幸"だったはずで、彼は仇討ちをして戻ってきて"幸"が待っているとどうしても思えなかったんだろう。
母親にあまり受け入れられていなかった(と思っていた)監督自身は、"幸"に母親を投影したのであれば、母親に受け入れられずに死にたくなってしまう監督自身の気持ちもわからなくもない。
ヤクザが沖縄で童心に帰るのは、ヤクザ行為が芸人に投影されている気もしてくる。
でもそれもやめたくなってきた。でも受け入れてくれる"幸"は無いとも、考えている。
それは死にたくなってしまうだろう。 -
北野武の狂気を感じる。にこやかに自分の頭を撃ち抜くロシアンルーレットのシーンが印象的。死と隣り合わせの世界で、淡々と生きていく姿。
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色が見える作品。
主題が展開されていく音楽と、
破壊的で暴力的な描写が、
その背後にある生と死を思わせる。
沖縄のうだる暑さが伝わるのに、
ひどく、青い。 -
「その男、凶暴につき」とは逆の立場を武が演じる。本作では、ヤクザを演じるが、前作の警官よりも優しさが滲んでいる。それは、死の恐怖を何処かで感じているから。それが、人間らしさになる。
緊張と遊びの対比が節々に描かれるが、どこか共通している。死と生は紙一重。少ない言葉で表現する力量はさすがと言わざるを得ない。 -
北野武監督 第4作目
ヤクザ映画である。
ただ、ヤクザ映画ともいえない・・・
ヤクザの素顔を描いたというべきか?
大杉漣 寺島進 渡辺哲 の 脇役が 生きている。
北野武は、白いワイシャツ姿で 一貫する。
これが、妙に意味があるようにも見える 暗示。
実に野暮ったいヤクザなのである。
北野武らの組は 沖縄のヤクザの抗争の助っ人で 派遣される。
行けば手打ちになると 言われていくが
逆に、相手を刺激することになる。
沖縄のヤクザののんびりした風情は 沖縄らしい。
アメリカ軍の流出の手榴弾を使うというのも 沖縄らしい。
何よりも沖縄なのは、海岸近くの沖縄の瓦屋根の家に
とどまり・・・そこで繰り広げる・・・遊び
落とし穴・・・
相撲ごっこ・・・これがおもしろい。
フリスビー・・・・
花火での戦争ごっこ
缶ビールを頭に載せて ピストルで撃つ
ロシアンルーレット・・・
雨が降ったら、身体を洗うシーン など・・・
その雰囲気は 大人が子供に戻ったようで たわいない。
このたわいのないのが 青い海の前で繰り広げられる。
沖縄のよさを知り尽くしているようだ・・。
北野武って こんなに笑顔がいいのか と思わせるところもある。
吸い込まれるような 笑い。
大杉漣に かりゆし姿は、にわわねぇよ というやり取りと表情。
シニカルなヤクザ映画。
最後に爆発して・・・・。
北野武らしい終わり方。そうなるだろうなぁ
と思っていたとうりの展開。
北野武の中に深く存在する 死への願望。 -
作品に漂う張り詰めた緊張感。場面場面で垣間見える虚無感。乾き切った空気とともに灼熱の湿気がまとわりつく感覚。観る側を息苦しくさえさせる。不要に思えるシーンも全体からすると一切無駄がない。
北野武監督の国際的評価を確固たるものにした作品であり、間違えなく最高傑作であろう。冒頭の銛に刺さったナポレオンフィッシュは、生きながらも同時に死んでもいる、つまりシュレディンガーの猫である主人公たちを隠喩したものであろう。
複雑な世界観を淡々と簡潔に表現した北野氏の才能にはただただ驚かされる。『その男、凶暴につき』で深作欣二監督の代役にならなければ本作は生まれなかったかもしれないことを考えると、世の中というのはつくづく不思議な縁があるものだと痛感させられる。 -
なんか南の島で乱射。
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不条理を描けばやはり一級。乱射シーンはやはりカタルシス。
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この映画、難しく観ようと思えばいくらでも難しくなる。と同時に伝えたいことは凄くシンプルではっきりしている。それは「沖縄のビーチは最高に楽しい所で、もし今の世に楽園があるとしたらきっとここに違いない」ってこと。観終わった後に頭に残るのは、ヤクザの抗争に翻弄される男の数奇な運命ではなく、そんな闇を突き破るほどの、ただただ眩しい青い海、青い空なのだ。それから健康的で官能的な国舞亜矢の裸体を思い出しぼんやりと身体が熱くなる。
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海辺でロシアンルーレットするときのたけしが印象的だった。
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派手な銃撃戦を期待した分少し拍子抜け。
先にアウトレイジ見てたぶん余計残念に見えた。
こちらの方がやくざの滅びの美学といった精神面をうまく描写していて作品としての評価は高いかもしれないが個人的にはエンタメ性の高い作品の方がおもしろく感じた。 -
音楽に対してセリフが小さ過ぎる。
これが海外で評価された意味がわからない。
平凡、むしろ暇な毎日の中にも死が隣り合わせっていうギャップが良かったのかな?
ストーリー
沖縄行きを命令されたヤクザたちの、何もすることのない日々と突如ふりかかる暴力のコントラストが衝撃的な
第4回監督作品。
村川は、ヤクザ稼業に嫌気が差している北嶋組幹部。そんな男が、親分の依頼で中松組の助っ人として、沖縄に飛んだ。
村川を待っていたのは、敵対する阿南組の襲撃。
――連れの子分が2人殺られた。「ドンパチでやばいとは聞いていたが、話が違い過ぎる……」。
また2人、凶弾に倒れた。抜けるような青い空と海、照り付ける太陽の下で殺戮は続く。「ハメられた! 」逃げ場を失った
村川は、ただひたすら〈死〉に向かって突き進むのだった。 -
北野武の最高傑作と聞いて観てみましたが、正直私にはどこがそれほど評価される理由なのかがさっぱり判りませんでした。私にはただのヤクザ映画にしか見えませんでした。
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寺島進、若い時そんなかっこよくないのにびっくり!
命はまぶしいなーと思う映画でした。そして沖縄が。
ヤクザ映画ってそういうもの…??