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- / ISBN・EAN: 4988126205386
感想・レビュー・書評
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雨の夜の旅籠を舞台とし 宿の主と一人の妊婦を取り巻いて 座敷童子が現れるエピソード 二話構成
ある雨の夜。宿場町の老舗宿・寓やに一人の女が訪れた。その女・志乃は一晩の投宿を願うが、宿の女将・久代は志乃にやっかいごとの臭いをかぎ取り、なかなか首を縦に振らない。「泊めてもらえないと自分とおなかの子は明日くる日にも命を奪われてしまう」という志乃の必死の願いに根負けした久代は志乃を普段は客を泊めない曰くありげな部屋に通すのだった。一息つく志乃だったが、そこへ志乃とおなかの赤ん坊の命を狙う追っ手・直助が現れる。志乃はさる武家の子息の子を身ごもっており、後々の面倒を恐れた武家の当主が直助を差し向けたのだ。しかし、その時志乃が通された部屋のさらに奥の間から、怪しい触手が現れ、直助の命を奪ってしまった。
モノノ怪を斬ることができる退魔の剣を携えて諸国を巡る薬売りの男がいる。彼が呼ぶのか 剣が呼ぶのか 薬売りの前には次々と妖異が現れる。モノノ怪を成すのは人の因果と縁(えにし)人の情念や怨念があやかしに取りついたとき モノノ怪となる。薬売りはモノノ怪の形と真と理を明らかにし退魔の剣でモノノ怪を斬っていく………
「モノノ怪の形を為すのは 人の因果と縁 よって皆々様の ″真“と″理“ お聞かせ願いたく候」
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まずこの壱之巻は凄く抽象的に描かれている事が多かったです。直接表現しない擬態表現それがかえって恐怖感を誘うというか説明が困難で筆舌に尽くし難いはし難い………例えば、あの座敷童子から伸びる赤い帯のようなもの………あれはへその緒の表現だったのでしょう。それを下ろすときに人を描くのではなく血だけで表現をするなど文章や言葉では表現できない筆舌に尽くし難い話でした。
内容は志乃さんと薬売りが泊まっていた宿。これは昔女郎屋であってそして志乃さんの泊まっていた部屋は普段は人を入れない部屋。これは女郎達の子供を堕胎させる部屋だったのです。その部屋の壁が全てその下ろされた子供の墓でした。女郎にとって子供が出来たということは、仕事が出来なくなると言うことでもあり、生活が出来なくなり借金が返せなくなる………その為当時若かった女将さんが人助けの為に仕方なく堕胎させた事でしたが「自らがこの人が良いと選んだ人に望まれて生んで欲しい(これがおそらく理)」と言う子供の心が壊されてしまい、この念が座敷童子に化けて身重であった志乃さんに取り付きました。自分も一緒に生んで欲しいと………そして優しい志乃さんは、その座敷童子も自分の子供と一緒に生んであげると言いました。だがそれでは志乃さんが座敷童子に取り込まれてしまいます。なので、志乃さんは自らの子供だけを産む事を選択というより子供が母胎を守る為に自らの心を解き放ち、志乃さんを守った………そのときの子供の台詞がまた泣かせられました。
例えモノノ怪とはいえ元は赤子達の魂………それを斬るシーンを志乃さんには見せたくなかったんじゃないでしょうか。それに座敷童子を産もうとお札を剥がした直後志乃さんは出血しています。(あれも本当は出血なんかしていなくて志乃さんの心の意を確かめたくて赤子達が見せたものではないかという気がしなくもないのですが確信はありません)
そして志乃さんのお腹の子を守る為に座敷童子を産むことを諦め「ごめんね」と志乃さんは謝ります。何がなんでも自分の子供を守る………そんな志乃さんの母親としての強くて優しい心を見届けることができて座敷童子は救われたのではと思うのです。例え志乃さんの子供として産まれて来ることが出来なくても………この世に生まれて来るには自分が望むだけではなく親からも望まれなければいけないなのだと言うことに赤子達は気付いたようですし………ただ、それだけでモノノ怪を浄化できるわけではなく、やっぱり薬売りは退魔の剣を抜くしかなかったのですが、もう祓うだけで良かった。たった一人志乃さんの子供として産まれて来ることになった赤子を妬むわけでもなく「おめでとう」と言って微笑んでいる………赤子達には邪気が無い。座敷童子は所詮無垢な子供の魂の集まったものに過ぎなかったのです。そんな赤子達と戦う必要は無いでしょう。
座敷童子を産もうとする志乃さんを止めるシーンの薬売りはとっても良かったです。「相容れぬ」と言った時の薬売りさんの厳しい表情が………彼の背負っている厳しい悪因縁のような宿命みたいなものをちらっと垣間見たような気がしましたよ。モノノ怪は例えどんな理由があろうと人の世に在ってはいけないものです。だから薬売りさんは退魔の剣を抜かなければならないのです。ただ哀れみをかけるだけでは救われないものもあるのです。
この座敷童子の心を解き放つ。それが薬売りの仕事でしたが、ほんとうに心を解き放ってあげたのは志乃さん。薬売りはその手助けをしたまででした。最後の薬売りが壁を優しく撫でる素振り、あれは子供の事を思っての事だったのだろうと思います。この物語はモノノ怪を生む原因となった「悪」は裁かれ、モノノ怪も「退治」というよりは苦しみから解放されているカタチになっているので、悲しいけれど救いのある結末になっています。壱之巻の話はとても酸楚な幕切れでしたが、これが最善の策で良かったんでしょう………最後に赤子達が微笑んでいたから、です。薬売りさんに浄化されてこの宿から解き放たれた赤子達の魂は何処かで誰かの子供として今度こそこの世に生まれ落ちる………いつかきっと座敷童子の「理」は叶えられると、そう前向きに解釈したいですね。
抽象的・象徴的な表現を多用して、必要以上にグロテスクにも、変にイヤラシくもならず、物語を美しく「見せて」くれました。そのセンスの良さには脱帽(雨粒を花にしてしまうとか、人の顔で花がクルクル回っている表現なんて、一体誰が思いついたのでしょうか)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
huluにて。
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正直和風の雰囲気が大好きな人は話の内容関係なしに満足するとおもいます。
出てくる妖怪や背景は勿論、雨の表現やモブキャラの描写がおどろおどろしくて不気味さが良く出ています。
映像美は文句無しです。
話の展開は少し難しいかもしれませんが、どこか人情あふれる話にホロリときてしまう事もあります。 -
モノノ怪シリーズで一番好きなゆえに一番見返さない。泣くから。
脂ぎったエログロのなかから現れる女性の清らかな献身、この流れで泣くのがシリーズで一番好きな要素。
『ちゃんと産もうとする母親』に笑いかけたやや子たちは、どんな気持ちだったんだろうなぁ。
今度は、産まれてこれますように。 -
とにかくきれい!
すべての場面がアート。
どこで静止させてもポストカードになるような。。。
ストーリーよりも、とにかく「愛でる」タイプの作品やな。
他のも見てみたい!とおもった。 -
全12話総合。
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実験的な表現に溢れたアートアニメーション。五感を意識した視覚表現、間の撮り方、言い回しが特に興味深かった。集合意識な面でインスピレーションを得たい時に鑑賞すると収穫を得やすい作品のように思える。
また、演出目的で鑑賞していたつもりがいつの間にか薬売りさんのミステリアスな魅力に引きこまれていた作品でもあった。キャラとアート両面から魅力を感じる。(2007年/日本) -
哀しい。薬売りさんイケメン