復讐するは我にあり [DVD]

監督 : 今村昌平 

出演 : 緒形拳  小川真由美  倍賞美津子  フランキー堺  ミヤコ蝶々  清川虹子  三國連太郎 

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感想・レビュー・書評

[daiyuuki24さんの感想 · 2022年12月26日]

九州・日豊本線築橋駅近くで、多額の現金が奪われ惨殺された二つの死体が発見された。事件の容疑者として浮かび上がったのは、榎津巌(緒形拳)という男である。しかし榎津は警察の追及をあざ笑うかのように、九州から浜松、東京で五人を殺したうえ、史上最大とも言われる重要指名手配の公開捜査をかいくぐって逃亡を続ける。
時には大学教授、時には弁護士と称して、殺人、詐欺、己の欲望のままに女に明け暮れる冷血で大胆な榎津。驚くべき犯罪の才能をみせるこの男の行く末とは…。
彼をこれほどまでに駆り立てたものはなんだったのか。そして、その生き様が社会に、我々現代人に問いかけるものとは、いったい何なのであろうか…。 
榎津厳が詐欺と殺人を繰り返す事実関係を淡々とドキュメンタリータッチで描きながら、榎津が自分の妻とキリスト教徒の父親の不義を疑ったことから始まる根深い確執があり、榎津の中に父親が象徴する良識や道徳に対しての不信感と憎悪が拭い難くありそれらに対しての復讐が榎津の殺人と詐欺の根本にあること、榎津だけでなく息子の嫁に対しての欲望を捨てきれない榎津の父親など欲望に流され易い弱い人間たちの群像劇、自分の正体を知られても浜松の売春宿の女将との未来を夢見てしまう榎津の安らぎを求める孤独さ、緒形拳や三國連太郎や倍賞美津子など演技派俳優のアンサンブル、人間の中の善と悪を描いた傑作実録犯罪映画。
ラストの積年の想いをぶつけ合う緒形拳と三國連太郎は、必見です。

[kamo_eigaさんの感想 · 2014年11月6日]

緒方拳の鬼気迫る悪者っプリが凄い。
小川真由美、倍賞美津子の妖艶さが濃い。

どうにも悪い人間というのはいるもので
一歩間違えばという人もいれば
とことん間違えっぱなしの人もいる。
ギラギラして、豪放磊落に振舞って
粘着的に他人にまとわりつつも
どこか孤独感がただよう。

主人公榎津巌はこの映画で見る限り
何が彼をその凶行に向かわせるのかもわからない。
ここでは謎へのつじつま合わせのような答えは用意されていない。
多くの作品はあざやかな答えを描くところにカタルシスがあるが
この映画は答えなどなくともそれでいいと思える。

巌も父も嫁も浜松の人々もいかに「人間の業」の深いことか。

今の映画も良いけれど
昔の邦画も凄いのがいっぱいあるなぁとつくづく思う。
内藤陳さんじゃないけれど「観ずに死ねるか」である。

[mokey01さんの感想 · 2020年12月29日]

緒形拳の極悪非道な犯罪人としての演技。
キリスト教を信じながらも息子の嫁と密かに寝る父親。
どちらも結局ゲスい。父親は息子の犯罪を叱るが、父自身も不義の罪を働いており、はたから見れば叱る資格すらない。
登場人物の各々の想いを理解することができなかったが、物語の展開は面白かった。

[keiさんの感想 · 2019年6月30日]

少し間をおいての今村作品返り咲き。

劇映画という意味合いでは前作が「神々の深き欲望」(1968) となっており、10年のブランクをおいての復帰ということになる。裏にどういういきさつがあったかはイマヘイ組武重邦夫氏が「神々の深き欲望」に関連して記述し、作品研究資料としてまとめられたものをを読んだことがあったためうっすらとは記憶に残っていたが、DVDの特典映像として含まれていたお二人が語り合う貴重な映像を通してがっちりと蘇ってきた。そうだった、今村監督は前作を通して三國連太郎は病院送りにした挙句に賃金騒動までに発展してしまったのだった。なのに彼の名は今回のキャストに含まれている。これまたスゴイことである。

本作での緒形拳の仕事っぷりは後に彼が「楢山節考」(1983) で再びお声がかかっていることからも自明。そういや倍賞美津子もそのパターンだ。その他の常連組として殿山泰司、加藤嘉、河原崎長一郎なんかがきちんと脇を固めていてホッとする。小川真由美という女優さんが気になったのは本作が初。折を見て他の出演作にも目を通してゆきたい。

今回も鑑賞後に武重氏の作品研究資料に目を通した。やはり読むともう一度観たくなってくる。しまった、もう返却してしまった…。

[yomo77さんの感想 · 2017年12月18日]

どうしようもない人の映画。緒形拳のギラギラの演技はさすがの一言だし、他の役もいいし、カメラワーク、セリフ回し、それぞれ光っているのだが、おそらく当時映画に求められていた性と暴力の多用が苦手なんだろう。「捨てがたき人々」と通じるものはある

[修吉さんの感想 · 2017年7月6日]

解釈困難な映画。単に殺人犯の半生を綴っただけでない。宗教感はタイトルのみ。映像美って感じでもない。直木賞受賞の原作をすごく読みたい。

[kta0atkさんの感想 · 2013年11月18日]

そして父は息子の骨を山の上から何度も投げ捨て、
骨は反抗するかのように何度でも空中で静止してみせた。
死してなお終わらない父子の激しい感情とは…。

巌は少年時代、横暴な軍人に頭を下げた父が許せず、反抗して愚連ていきます。
敬虔なクリスチャンの父はそんな息子を扱いかね、疎むようになりました。
父は本音を抑える生き方を選び、息子は本音をぶつける生き方を選んだのでした。

月日は流れ巌は結婚しましたが、父は息子の嫁と愛し合うようになります。
ただし清くありたい父は気の無い素振りを見せ、替わりに他人に嫁を犯させます。
嫁は嫁で他人を父と思って受容れました。
親子の溝は決定的になり巌は家を飛び出しました。そして始まる連続殺人事件…。
この父子は、羊の皮を被った獣と、本能に身を任せる獣なのです。

ついに捕まった巌は留置所で最後の面会をしますが、父子は罵りあいます。
「おいもあんたは許さん。あんたを殺しとけばよかったと思うたい。」
「お前は恨みの無か人しか殺せん種類たい。」
最後まで認め合わない父子。
似たもの同士だからこそ、己の嫌な部分が見え、反発し続けたのだろうか。
所詮父子とはそんなものなのだろうか…。

因みにタイトルは聖書の一節だそうです。
罪を裁くのは人ではない。復讐は神が行うのだという意味らしいです。
誰も彼も存在感抜群の役者陣の熱気と狂気に圧倒される日本アカデミー賞、ブルーリボン賞などを総なめにした作品です。
(090601鑑賞)

[あきこさんの感想 · 2011年6月14日]

身体から滲み出るオーラ、
緒方拳がものすごい。
凄みと、色気と、
なんとも言えない雰囲気。

いまどきの俳優さんでこんな人はいないよね。
三國連太郎とか仲代達矢とか、
この世代や、それ以前の俳優さんって、
ほんとものすごい。

[ただのcinéphileさんの感想 · 2010年4月12日]

緒方拳の怪演が光った。、小川真由美、倍賞美津子、清川虹子、ミヤコ蝶々などの女優もすばらしい。やはり、おっぱいは出してなんぼである。

緒方は、欲望のまま、人を殺して顧みないのだが、説明調でないのが逆にいい。死刑を受け入れる理由も語られず、無理に物語をつけていないところがすばらしい。

[kero0110さんの感想 · 2008年11月26日]

主人公巌の殺人事件も「こりゃあひでえ」と思ったけど、ストーリー的に面白かったのは、
加津子と鎮雄の、くっつきそうでくっつかない、怪しい関係やってん。
鎮雄の妻である「かよ」が、すごいスパイスになってる。
日常に近い部分を描いてるだけに、鎮雄の周辺の不気味さっちゅうのは、際立ってたような気がする。

http://ameblo.jp/eisin/entry-10160285648.html

[ryokutya87さんの感想 · 2023年3月13日]

迫力と緊迫感が持続する2時間20分。緒形拳をはじめ、三国連太郎、倍賞美津子、小川真由美、清川虹子、北村和夫、ミヤコ蝶々などの名優たちが織り成す情念的な人生模様から一刻たりとも目が離せない。破滅型の犯罪者の心の底は見えないけれど、信心、信頼、信用、を憎み、徹底的に背を向けた人間の、それは皮肉にも自らへの信念だったのだろうか。次第に自分で作り上げた人生の美学に縛られ、自分でも後戻りができなくなった男の物語だったように思う。それにしても深い情念が渦巻く世界観。終盤の三国連太郎と緒形拳の対決シーンには息を呑む。

[Hoidonさんの感想 · 2021年8月17日]

「凄い」の一言

[starredさんの感想 · 2017年4月21日]

アマゾンプライムで見たが、なかなか、ひかれる表題で、以前から、見てみたいと持っていた。見る前はこの表題から、不当な扱いを受けた緒方拳演じる主人公が相手に復讐する映画と思ったが、実は、この主人公が、性として持っている本能のままにただ、人を殺している人間で、この主人公が立ち寄る場所の人間たち、また、主人公の両親、その妻も罪深い人々であり、この主人公と一線を越える越えないか、あるいは、後の刑務所での務めが嫌で踏みとどまるかどうかどうかの違いしかないのかも知らないと表現している気がする。しかし、この映画の主人公もドラマになるが、この主人公の家族、また、立ち寄った人たちも実際にこれほど、罪深い人だったのか、事実は、小説よりも奇なりか、そこが知りたい気がするか、しかし、映画以外では、主人公以外は、話題になっていないので、おそらく、作家の脚色ではないかと思うが、

[kiii8823さんの感想 · 2016年3月3日]

(1979年作品)

[tarazirushiさんの感想 · 2016年1月8日]

2人の惨殺死体が発見され、榎津厳が指名手配された。
逮捕された榎津厳は、これまで5人を殺害し、詐欺と女性関係を続けてきた逃走の日々や生い立ちを語るのだった。

殺人鬼 榎津厳(緒形拳)の話よりも、 厳の父 鎮雄と妻 加津子の話の方が面白い。
最近の描写過激なのに見慣れたからってのもあるかもしれないけど。
鎮雄(三國連太郎)の偽善者っぷりや、加津子(倍賞美津子)のエロさにやられます(^^;

[HorriPhileさんの感想 · 2015年9月28日]

緒形拳、三國連太郎、倍賞美津子、小川真由美、そして清川虹子！　この誰をとってもアカデミー賞並みの演技であり、また、この作品全体もアカデミー賞（日本アカデミー賞ではなくて本当のアカデミー）をもらってもおかしくない傑作。奇妙なエンディングも含めて「マスターピース」と呼ぶべき作品ですなぁ。

[hayatakaさんの感想 · 2015年3月4日]

もうハチャメチャ。。。
犯人の逃走劇なんだけど、
逃げ込んだ先もメチャクチャな感じだし。

昭和ってグレーな感じが多くて、
いいな〜って感じ。（本編と関係ないが）

[やけっぱちさんの感想 · 2013年2月19日]

男と女、父と子、生と死、性、宗教、愛、憎しみ。この作品で語られることは多いが、巌の真意は語られないまま。無理に理由付けしない潔さが良い。福岡から、東京、静岡へと逃亡する巌を、丹念に追い続けている。それにしても松竹DVDの特典シネマ紀行は、相変わらず面白い。

[yasu07945さんの感想 · 2012年12月6日]

今村昌平中期の傑作。
西口事件を題材にした佐木隆三の小説の映画化作品。深作監督などと映画化権を競った。

もうこれは緒形拳に打ちのめされるわ。五人を殺し、数々の詐欺を働いて列島を逃げ回った極悪犯。インテリに扮して詐欺を働ける気だてを持ちながらも、人を殺すことに躊躇いを見せない姿の狂気が乗り移ってるよう。

そして脚本もすごい。こうも人間の欲といったドロドロした部分を、叙述的に描ききれるとは。今村一流の凄みをもつ映画。

昭和の雰囲気を存分に感じられる点も好きだし、役者の演技に脚本・演出にと唸らざるをえない傑作でしょう。また観たい。

[kkkuraさんの感想 · 2012年1月24日]

一人殺すと、後はいっしょ。そんな感じがよくでていた。人格障害なんだろうな。