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- / ISBN・EAN: 4988105056862
感想・レビュー・書評
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中学生の時に五木寛之と松本清張にハマり、当時刊行されていた主要作品を読破した記憶がある。その中でも「戒厳令の夜」「ゼロの焦点」そして「砂の器」は忘れられない。小学生の時にドラマでハマって原作を貪るように読んだ「白い巨塔」含めて、私の読書愛を芽生えさせてくれた愛すべき作品だ。このように読書愛が深いと映像化された作品はまず失望することが殆ど。フジテレビで観た田宮二郎の「白い巨塔」は例外中の例外。本作と同じ野村芳太郎監督の「ゼロの焦点」も良かったがやはり原作には及ばない。そしてこの「砂の器」も原作が好きなので敢えて映像作品は観てこなかった、絶対に失望するから。今回遅ればせながらデジタルリマスター作品があることを知り、まあ参考のために観てみた次第。いや~、いい意味で裏切られた。映画は情報過多故に想像力との相違が失望を生むが、本作は小説には絶対無く、かつ映像のように容易に想像できない音楽が最大の功労者。芥川也寸志の音楽は「悪魔の手毬唄」の深町純に迫る大傑作と言っても過言ではないと思う。後半のクライマックスであるコンサートと幼少期の回想のミックスされたシーンは、科白を極力抑え、音楽と映像、役者の力量(丹波哲郎、加藤嘉、緒形拳、子役の春田和秀)でグイグイ心の内側に迫ってくる。小説とは違う意味で感動できる稀有な映画だった。いい経験をさせてもらった。丹波哲郎の表情と科白の間は完璧で、こんないい役者だったんだなあと再認識した。
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線路上で撲殺死体が発見された。身元を示す物証は無く、頼りになるのは、被害者らしき男性がバーで口にしていたという「カメダ」なる言葉のみ……捜査にあたった2人の刑事=今西と吉村は、執念深く手がかりを探し続けるのだが、やがて浮かび上がる真相は、あまりにも根深く、そして悲しい「宿命」だった。わずかな手がかりから真相を浮かび上がらせるミステリーであり、また反差別のヒューマニズムに裏打ちされた重厚な社会派ドラマでもある。謎の解明を音楽の演奏と重ね合わせるクライマックスには、胸打たれずにいられない。