第38作 男はつらいよ 知床慕情 HDリマスター版 [DVD]

監督 : 山田洋次 
出演 : 渥美清  竹下景子  倍賞千恵子  三船敏郎  前田吟  下條正巳  三崎千恵子  淡路恵子 
  • 松竹 (2012年5月26日発売)
3.75
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感想 : 17
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  • / ISBN・EAN: 4988105058705

感想・レビュー・書評

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  • ♪し~れ~とこ~の岬に、ハ~マナス~の咲く頃~、思い出してお~くれ~、お~れたちのことを~、飲んで騒~い~で~、丘に登れば~、はるかク~ナシ~リに~、白夜は明ける~。(森繁久弥)

    1987年、松竹映画。監督は山田洋次。シリーズ第38作です。
    主演は渥美清。マドンナ役は竹下恵子。そして、もう一組の主演とマドンナ役が、三船敏郎と淡路恵子で、W主演のような感じになっています。
    そのほか、この当時の「くるまや」と諏訪家の面々はいつも通りで、おいちゃん役の下條正巳、満男役の吉岡秀隆、たこ社長の娘あけみ役の美保純が登場しています。
    また共演として、次作でも船長役をやっていたすまけい、アパートの大家さん役に笹野高史、この当時たびたび端役で登場していたイッセー尾形らがいます。

    入院したおいちゃん(下條正巳)に代わり「とらや」の跡取りとして店を取り仕切る寅さん。しかし、ここでも失敗の連続でおばちゃん(三崎千恵子)をはじめ皆の顰蹙を買うことに。迷惑をかけたと寅さんが向かった先は北海道。そして、最終的に知床に行き着く。そこで出会った獣医の上野(三船敏郎)の家に泊まることになった寅さんは・・・。

    今回の寅さんは夏ヴァージョン。やっと季節に合った『男はつらいよ』を観ることができました!(笑)

    知床の美しく雄大な風景の数々を見せてくれる作品です。
    そして、その知床に最も似合う森繁久弥の『知床旅情』が挿入歌となっていて、われわれをさらなる知床への旅情へとかきたててくれます。ちなみに予告編の方の挿入歌は加藤登紀子版のようでした。なぜ変わったのだろうな?(笑)

    こうした雄大な大地に似合う男といえば・・・、やっぱり大スター三船敏郎をおいてほかにはありません。
    いやー、やはり風格が違いますね~。(笑)それに過去の名作を思わせるオマージュな立ち回りのシーン。役柄もいつも苦虫をつぶしている頑固親父の医者ということで、これまたイメージにぴったりなんですよね。寅さんの映画なんですが、「三船敏郎」の映画と上手く噛み合うような演出もさすがのものです。
    そして、寅さんだけに恋愛物ということで、三船敏郎にベタな愛を語らせるなんて!
    三船敏郎だけに(?)男の背中で語らせると思っていたのに・・・。(笑)
    よくぞ出演してくれましたといいたいですね。(^o^)

    寅さんのマドンナ役で、かつ、三船敏郎の娘役の竹下恵子はとてもきれいでした。
    2人とも恋愛だけでなく、父娘の葛藤というテーマも一方であって、親子役がぴったりな感じでしたね。
    むしろ、今回の『男はつらいよ』では寅さんは割と引き立て役であり、三船敏郎と竹下恵子の親子の葛藤とそれぞれの恋愛が主であったといってもよいかもしれません。

    今回の寅さんも特に恋に破れたわけでなく、これから!といった時に身を引きます。寅さんは三船敏郎の獣医と淡路恵子のスナックのママの間を取り持ち、獣医に相手への愛を語らせるのですが、自分は語ることができない。人に語らせておいて自分にはできないことを悟った時、寅さんは身を引いていくのです。
    このような結末を情緒たっぷりに演出する監督の手腕に魅せられました。

    さて、前回観た『男はつらいよ』は第8作だったのですが、それからたっぷり16年を経た本作をみると、寅さんは声の張りが消え、さくらも目尻の皺が目立つようになっていました。相変わらず寅さんの仕出かす行状は騒々しいものの、落ち着いた演技の方がすっかり板についています。
    やはり経年は隠せないものですね・・・。
    この頃になると寅さんは主演とはいえテーマとしては裏方にまわることも増えてきて少し寂しいですが、今回は三船敏郎を迎えての堂々たる『男はつらいよ』でしたので、まだまだがんばれ!と言いたくなる一作だったと思います。

  • シリーズの中でも5本の指に入るぐらい好きな作品です。何と言っても女優さんの皆さんが素晴らしい!役柄にハマっていた淡路恵子さん、若さ溢れる演技が良かった美保純さん、そしてヒロイン竹下景子さんの魅力にやられそうでした。三船敏郎さんの哀愁漂う老獣医師もいいです。
    劇中歌として森繁久彌さんがご自身で歌っておられた「知床旅情」の世界観がモチーフになった作品なんですね。訥々とした歌い方が味わいとなっています。お勧めします。
    「"愛してるょ"とその女の前で言えなくちゃ男は惚れてることにはならないのでございます。」

  • "男はつらいよ"第38作。珍しく寅さんの故郷を語るモノローグでスタート。おいちゃんの病気に(一応の)後継ぎとして働こうとする寅さんだったが、店番すらまともにできずに皆を悲しませてしまい、知床へと旅立つ。そこで頑固者の獣医、そして出戻りの娘と知り合うのだが。。。

    本作もメインは寅さんというよりも三船敏郎演じる頑固おやじの恋。さもするとそちらにウェイトを置きすぎたり、寅さんが茶化しすぎたりするのだけれど、本作はそのあたりのバランスが絶妙。獣医に自分の気持ちをきちんと打ち明けるよう諭す寅さんだったが、最後は全く逆の立場で自分は逃げ出してしまう。やっぱり寅さんだなあ。なんだけど、今作はそこに悲壮感のようなものをあまり感じず、サラッと過ぎていく感じだった。いい意味で。
    あけみと満男の存在感もだいぶ大きくなったなあ。

  • 冒頭の寸劇なし。
    フェンダーを蹴るとエンジンが掛かるサニーバン。
    知床、ケージに入った店先のキタキツネ。
    あの頃から環境のことは考えられていたんだね。離農も。
    三船さんの、頑固で不器用な親父さんが良い。

    少し間延びした印象。でも風景は見飽きない。

  • シリーズ38作目。マドンナの竹下景子は2度目の出演ですが、違う役なら彼女じゃなくてもいいにではと思わなくもないですが…。

    さて、このシリーズ、男性ベテラン俳優がゲストが出演するときは傑作となる傾向がありますが(志村喬、森繁久彌、宇野重吉など)、今回はゲストは世界のミフネ。当然期待が高まります。

    寅さんが三船敏郎と淡路恵子という熟年の2人をくっつけようとする展開はなかなか異色。若者のキューピッドをする話は以前にいくつもあったのですが、その女性に寅さんが懸想しているわけなので、わりと切ない話になること多いのですが、今回はそれがない。もちろんマドンナである竹下景子に対し敵前逃亡してしまう寅さんの悪癖は見られますが、本作はあの2人の恋が成就したことの喜びがはるかに勝ります。

    三船敏郎が「お前に惚れてるからだ。悪いか!」といツンデレな告白も良いし、淡路恵子の感極まった表情も素晴らしい。この告白シーンはシリーズ屈指の名シーンでしょう。

    寅さんがとらやの跡取りになろうと奮起するコメディパートや、知床の素晴らしい自然、地元の人たちとの心温まる交流など、印象に残るシーンは多く、久々の傑作だったように思います。

  •  寅さんが知床で知り合った年老いた獣医さんには美人の娘がいた。

     寅さんが老いらくの恋のキューピットになる話。
     前半のとら屋で全く役に立たなかった寅さんが知床の町でみんなのアイドルのようになってしまうのが見ていて楽しい。
     共演の三船敏郎が素晴らしいが、寅さんの恋がちょっと脇に置かれ過ぎか。

  • マドンナ竹下景子、大原麗子式の別人配役で再登場。前回松村おいちゃん演じる備中高梁の僧侶の出戻り娘として登場したのは本作からほんの4年前の話、当時まだまだ30台前半だった彼女は今回もまたもや陰のある女性を演じている。これも「北の国から」での雪子おばさんとしての演技がよほどの評判だったからか…とふざけて製作年を並べてみると意外とつじつまはあっているようだ。

    TVシリーズの公開が81~82年にかけて、「’84夏」において不倫を貫いて東京へと戻っていった彼女は「’98時代」にて富良野に舞い戻るまで約10年ほど東京に住んでいたことになる。本作は87年の公開ということでこれは純が古尾谷雅人運転する長距離トラックにて東京に向かった年と符合し、その後純は89年に帰郷するまで一時期雪子おばさんのところに居候していたわけで、本作での吉岡秀隆との絡みもつい期待してしまったのだが同じフレームに登場するのは数秒程度だった…。う~ん、残念。89年の作品に彼女は3度目の登場となるそうな。その際に期待したい。

    そんな無駄なこじつけよりも本来楽しむべきは「夢の共演」の方。「赤ひげ」(1965) での頑固な医者ぶりも透かしてみながら今回の役どころを楽しませていただいた。三船敏郎の既鑑賞作品群から最晩年のものはどれだったのだろうと紐解いてみるとつい先日借りて観た「人間の証明」(1977) がそれだった。(ちょい役過ぎてちょっと忘れていたが…)その間約10年のギャップがあるわけなので当然本作での老け役もずいぶんとしっくりくる。

    そしてもう一人の看板女優、淡路恵子がその相手役として登場、それも役20年ぶりの銀幕復帰というタイミングにて。彼女の出演作の鑑賞歴はまだまだ大したことないが、彼女が淡島千景にあこがれてその芸名に「淡」という字を選んだというエピソードは記憶にこびりついており、今になって鮮烈デビューであったはずの黒澤作品「野良犬」(1949) には本名の井田綾子名義で出演していたことを知るに、まずは60年代後半までの作品にもっともっと見入ってみたくなってくる。かなりの「通」レベルのゲーマーとしての異名も聞いており、2000年代の彼女にももっと触れることができていれば幸せだったと改めて思った次第。

    劇中、森繁久彌の知床旅情が染みわたるとヒットしたのはこの頃だったのかと錯覚したが1960年ともっと前だったらしい。つい第6作での森繁久彌の名演を思い出してしまった。その他80年代後半名脇役人としては笹野高史、すまけい、イッセー尾形がいい味を出している。知床の牛舎で三船演じる獣医の脇でウロウロしているだけの寅さんのいでたちは「遙かなる山の呼び声」(1980) での友情出演としての脇役姿とだぶり、クスリと思い出し笑いをさせてもらった次第。

  • 三船敏郎の演技が光る。愚直な男。自分の気持ちを気取られるのに耐えられぬ男。一途な男。要するに頑固一徹で面倒くさい変わり者。

    竹下景子が寅の方を見て何かを言いよどんでいる場面。男はつらいよシリーズをいくらかでも観ている者であれば、次に彼女が何を言うのかはっきりと分かる。「寅さん、ありがとう、色々とお世話になって」。「ありがとう」は愛であって愛でない。少なくとも恋愛感情からは離れた言葉だ。

  • 角館の桜祭りからスタート。おいちゃんが入院し、あけみと寅さんが店を切り盛りするも、寅さんは役立たず。そのことを批判されてぶち切れて旅に出る。足を延ばしたのは知床。牛を見て回る獣医の三船敏郎と出戻りの竹下景子。三船は淡路恵子に恋心を持つも言い出せない。バーベキューパーティで寅さんに背中を押されて告白、竹下景子は東京へ戻る――という話。なんといっても三船の存在感が素晴らしい。それと渥美清の軽妙さが何とも言えないコントラストがある。竹下景子は及第点。ちょい役にまた出川が出ていた。

  • 三船敏郎よりも淡路恵子が良い味を出していた。

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著者プロフィール

1931年大阪府生まれ。54年、東京大学法学部卒。同年、助監督として松竹入社。61年『二階の他人』で監督デビュー。69年『男はつらいよ』シリーズ開始。他に代表作として『家族』(70)、『幸福の黄色いハンカチ』(77)、『たそがれ清兵衛』(02)、『家族はつらいよ』(16)など。2012年に文化勲章を受章。

「2019年 『男はつらいよ お帰り 寅さん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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