- Amazon.co.jp ・映画
- / ISBN・EAN: 4907953026681
感想・レビュー・書評
-
ボブ・ディランの伝記的映画、といってもまったくもって従来の伝記映画とは違う。
六人の俳優がボブ・ディランを演じて、かついずれも”ボブ・ディラン”でない名前を名乗る。六人の”ディラン”のストーリーが絡まった時系列で進んで行く。正直いきなり黒人の少年が出てくるのは面食らうし、かなりわかりにくい映画。
ギター1つで放浪する少年の姿、フォークの伝道師的な扱いを受けながら世を皮肉る歌手の姿、若くして出会った美しい女性と結婚し、そして別れを迎える夫としての姿、そしてアコギをエレキに持ち替えて世の中の多くからブーイングを受け、「世間」からのギャップに振り回さそうになる姿、田舎で隠遁生活に入る姿、そして各ストーリーの合間で詩人的に言葉を語る、ハンサムな若者の姿。様々な姿から垣間見えるのは、抽象的な言葉を語る詩人の姿でしょうか。
決して反抗的な姿を見せた訳ではなく、人に理解されるためでなく、自分を表現しようとしたのかな。彼の作品がそうであるように、本作でのボブ・ディランはつかみどころはないけれど、正直な人なのかな。
ケイト・ブランシェットの演じるディランは一番本物に外見や仕草を寄せているけど、本当にかっこいい。しゃがれた声の感じとか、「ああ本当にディランはこんな人だったのかな」と思う。エレキギターを手にとって、世間とのそれまでのイメージのギャップを問われ、ひょうひょうとしながらも葛藤し苦しんでいる様は、とても人間的であるし、仕草がなんていうかセクシー。
正直かなり観辛いけど、ケイト・ブランシェット版ディランのおかげで、なんとかなってる作品だと思います笑
追記:評価を1つ上げました。この映画を観てからボブ・ディランの曲を随分聴くようになりました。普通は逆かもしれないけど、とにかくそういう機会をくれたことに感謝します。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
生ける伝説ボブ・ディラン。その人生が6人の豪華キャストにより、36曲の名曲とともに綴られる。
詩人、無法者(アウトロー)、映画スター、革命家、放浪者、ロックスター。実在のボブ・ディランのさまざまな人格を投影した6人のディラン。
やがて明らかになる謎に包まれた伝説のアーティスト、ボブ・ディランの実像とは…。
「風に吹かれて」「ライク・ア・ローリング・ストーン」「天国への扉」…。
ロック史に燦然と輝く数々の名曲のソングライターであり、60歳代にして現役トップミュージシャンである<生ける伝説>ボブ・ディラン。
今なお多くのアーティストたちの想像力を刺激してやまないボブ・ディランの激動の人生の謎に迫る音楽ドラマ!「キャロル」の鬼才トッド・ヘインズが6人のキャラクターを通してボブ・ディランの実存を描いた実験的音楽映画。
クリスチャン・ベイル演じるジャック・ロリンズはディランのフォークシンガーとしての、黒人の少年吟遊詩人はデビュー前のディランの、ベン・ウィンショー演じる詩人ランボーはディランの詩人としての、ケイト・ブランシェットが演じるジュードはフォークでもロックでもない革命的な音楽を生み出そうとしていた頃のディランを、ボブ・ディランの様々な面を6人のキャラクターを通してディランの実際の逸話やディランの名曲を元にしたストーリーで語られるので、ボブ・ディラン初心者にはディランにハマるきっかけに、ディランのファンにはちりばめられた小ネタにうなづきながら楽しめるユニークな傑作音楽映画です。 -
ボブ・ディランについての前知識がほとんど無かったため、筋としては何のこっちゃ?;といった感じでした。が、映像美と印象的な音楽に惹きこまれて見続けられた。
そして何よりケイト・ブランシェットの演じるボブ・ディランが最高にセクシーで寂しげでそしてカッコよくて...それだけでも、観られて本当に良かったと思えました。 -
これは伝記ものではないと思う。
ディランへの愛がつくりだした、美しい映像。
彼のなかにあるものが、それぞれの人格をまとって生きている。
ボブ・ディランの知識は、それなり無いとストーリーがわかりにくいと思う。
けれど、彼の内面はこんな感じ(混沌)なのではないか…とも受け取れる。
あまりに詩的で抑揚もセリフも少ないので、好き嫌いは分かれる印象。
ディランはここにはいない。
(が、話し方や言葉、仕草の端々から彼を想起させる演出と音楽)
I'm Not There というタイトルが、この映画を正しく表現している。 -
新感覚。スタイリッシュ。こんな映画、ありだ。
ケイト•ブランシェットかこいい。 -
60年代「風に吹かれて」でスーパースターとなり、その後も、スタイルを変えながら今なお現役のトップミュージシャン、ボブ・ディランの人生を、詩人、無法者(アウトロー)、映画スター、革命家、放浪者、ロックスターという6つの断片で捉え、ディランの名前を使わず、年齢・肌の色・個性の全く異なるキャストで描きだしたオムニバス映画。それぞれにキャスト、衣装、構成、細部に至るまでカッコイイ。
特に女ながらにロックスターとしてのディランを演じたケイト・ブランシェットの部分がやはり面白い。「フォークは終わった。これからは神秘的なことを歌うんだ。歌詞に意味がないことが大事なんだ。神秘的なことだけは時代に左右されず、変わらないから」」といった言葉がとても印象的。たまたま中沢新一の「カイエ・ソバージュ」を読んだ後に観たせいか、その言葉の意味がわかる気がする・・・。映画の後、前に読むのはお勧め。 -
カルチャーを形にするのは難しいことで。
流動的で原型がなくて、人の中で多様に変化しつづけるもので。
だからどうしても主観になるし、一番得意な手法を選んでしまうのでしょう。
でもこの長さで映画は難しかったかも。
ま、これもまたひとつのカルチャーか。 -
「ベルベット・ゴールドマイン」が好きで好きで仕方がない人間には期待以上の作品でした。
ボブ・ディランを一番聴いたのが映画版「ウォッチメン」のBGMとしてだったりするくらいディランについてなにも知らないんですが、でも面白い。
当然ヘインズの演出・表現技法は進化してるし、楽曲はいいし俳優陣はみんなバケモノみたいにうまいしハマってるし(個人的にはケイト・ブランシェット、クリスチャン・ベール、パフューム主演で名を上げた彼あたりがガンガンキました)、アメリカのある時代の流れを音楽によって表現する話なのに、その時代の風のようなものを全くしらない日本人にまでノスタルジーを感じさせるのがこの監督の凄いところです。
常に語り口が傍観者視点に徹してるのも効いてます。
噛みしめるようにしみじみと何度も観たい。そんな映画でした。 -
トッド・ヘインズ監督によるボブ・ディランの物語。人種も性別も異なる6人の主人公にボブ・ディラン像を演じさせ、知人にエピソードを語らせたかのような模擬ドキュメントを織りまぜることで、ボブの人格や業績、伝説に多面的アプローチを試みている。この荒業は映画としては成功している(充分楽しめる)ものの、「ボブが見て納得するもの」に収まりすぎた。自意識過剰に思われるほど自己偶像化・象徴化が著しい。「われ思うゆえにわれあり」といわんばかりの120分。期待が大きかった分だけ、一人物を扱う一作品としては物足りなさが残るものだった。
-
20分ほど見て白けて観るのをやめた。