ザ・フォール/落下の王国 特別版 [DVD]

監督 : ターセム 
出演 : リー・ペイス  カティンカ・アンタルー 
  • ワーナー・ホーム・ビデオ
4.00
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988135712127

感想・レビュー・書評

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  • 豪華絢爛。映像美の極致。
    …なんて言葉はこの映画のためにあるといってもいいぐらいに、最初から最後まで、とてつもなく豪華かつ鮮やかな映像に彩られている。13の世界遺産を含む、24カ国以上に及んだ実在の沢山の名所旧跡を巡って4年もかけてロケ撮影したというターセル監督の執念とこだわりを讃えたい。

    時は1900年頃。撮影中の事故で下半身が動かなくなった映画スタントの青年ロイと、果樹園で働いていた最中に落下して左腕を骨折した五歳の移民の少女アレクサンドリア。
    二人はアメリカ・ロサンゼルスにある病院の入院患者として出会った。
    ロイは、子供が夢中になるような思いつきの冒険譚的おとぎ話をアレクサンドリアに毎日少しずつ少しずつ話して聞かせる。彼女がお話の続きに夢中になって自分に懐くように。
    そこには、事故以外にもとある事情で人生に絶望していたロイが、彼女を手懐けてある目的を達成するための思惑があって…。

    ロイがアレクサンドリアに毎日話して聞かせるおとぎ話。この映像がとことん美しい。
    チェコのプラハ城、イタリアのコロッセオ、トルコのイスタンブール歴史地区、インドのタージマハル、カンボジアのアンコールワット、中国の万里の長城、エジプトのピラミッド、フランスのエッフェル塔…世界に散らばる世界遺産含む実在の名所旧跡を舞台にして、ハラハラと心惹かれる冒険活劇が繰り広げられていく。
    個人的には、ナミビアのナミブ砂漠とインドの「階段井戸」はあまりの絶景具合に、食い入る様に画面を見つめてしまった。

    ロイによるおとぎ話の展開自体はかなり荒唐無稽で支離滅裂な部分も多いのだけど、五歳児をターゲットに毎日飽きさせることなく気をひかせるためのものだと思うと、そうもなっていくのかな、とも思う。
    なにより、創作者であるロイの願望や欲望、大人の残忍さ、はたまた恨みつらみが滲んでいるような巧みさが鑑賞者としては面白いし、ロイとアレクサンドリアが次第に交流を深めた結果としてアレクサンドリアの要望が物語の結末に影響を与えることになる様に、なんだか心が救われる気がする。

    ロイとアレクサンドリアそれぞれを取り巻く現実の環境が厳しいことが二人や周囲の会話や薄暗い色彩からわかるからこそ、却って、ロイによって語られる物語の御都合主義的な面のある荒唐無稽さと華やかさに心救われるのも確か。
    お話はロイのズタボロの精神を反映した故に終盤間際にものすごく残酷にもなるのだけれど…。
    でも、二人の「現実」のラストはなんだか人生を感じさせて良い。原題の「The fall」に込められたさまざまな意味もしっかりかいしゅうしているし。

    そして、石岡瑛子の手になる、世界のあらゆる時代と文化を融合したかのような、はたまた超越したかのような、エキゾチックかつファンタジックな衣装が、これまた物語に見事な彩りを添えている。

    美しいものや純粋なものは心の慰めになる(本当に食うにも困るドン底の環境に陥ったらそんなことはきっと言ってられないのだけど)。
    そんなことを思わせてくれた作品。
    ストーリーが、構成が、カメラワークが、とかではなく、視覚的にとことん楽しむのに良い作品。
    なにより、旅好きならそのあまりに美しくて豪華すぎる背景にハマること間違いなし。



  • 病床の若者が語る物語は国際色も色彩も鮮やかで目を奪われます。いくつかの映像は鮮烈で深く記憶に刻まれそうです。撮影時の事故の怪我と失恋に傷ついたスタントマンは今の自分を受け入れられません。同じく入院中の少女に物語を聞かせることを条件にモルヒネを盗ませ自殺を図ります。少女の「殺さないで」(=死なないで!)の叫びに心が痛みました。若者の心にも響いたのでしょう。若者は再生し、その後の彼の活躍する映像が幾つも紹介されます。CGに頼らない映画作りへのオマージュですね。ベートーヴェンの第7番が効果的に使われていました。

  • 映画のスタントマンであるロイ(リー・ペイス)は、撮影で橋から飛び降りてケガをし、入院する。それが元で脚が動かなくなった彼を、さらに不幸が襲う。恋人を俳優に奪われたのだ。絶望したロイは自殺を考える。

    一方、小児病棟には、ルーマニア移民であるアレクサンドリア(カティンカ・アンタルー)という5歳の女の子が左腕を骨折して入院している。

    あることがきっかけでこの2人は知り合う。
    ロイは自分が作った物語を聞かせることでアレクサンドリアを誘導して病院の薬棚からモルヒネを持って来させ、それで死のうと思いつく。

    しかし少女もただ耳を傾けているだけではない。彼女にも理想の物語があり、ロイのお話をたびたび軌道修正しようとする。
    そうこうするうちに2人の物語のせめぎ合いとなり、アレクサンドリアはある出来事を機に、ロイの後ろ向きな物語を、自身の物語で期せずして救い出そうとするのだった。

    なんてセンチメンタルな物語!
    と思ったのはさておき、アレクサンドリア役のカティンカ・アンタルーの朴訥としたかわいらしい振る舞いと発言がなんとも微笑ましかった。ただ、このセンチメンタルな物語展開のせいで、後半は彼女が窮屈そうに演技していたのは残念。

    たぶん本作がいちばん力を入れているのは、2人が語る物語の再現映像だろう。なんか5人(だっけ?)登場人物がいて、なかにはあのチャールズ・ダーウィンも混じっている。最初ちょっとわくわくし、じきに何だこれと思い始め、最後まで何だこれ、だった。

    まあとにかく映像の美しさを売りにしたかったのだろう。確かにハッとさせられる映像もいくつかあったけど、なんというか、つるんとした映像美。引き合いに出して申し訳ないけど、クリスチャン・ラッセンの絵の、あの品のない美しさに近いものを感じた。

    後半はもう完全に白けまくっていたのだが、無声映画の上映シーンでちょっとほろっとさせられ、バスター・キートン映画のスタントシーンが次々と引用されたところでちょっと泣いてしまったのが意味もなく悔しい。本作とはまったく関係がないのに。
    観終わった結論は、バスター・キートン、やっぱすごいな、だった。

  • 最後に世界最初のスタントスター俳優ハロルド・ロイドの映画がバーッと流れて、そこでロイって名前が何度も作中で呼ばれるのは、そういうことか!と感動した。演出上手かよ。
    (実際はロイドだけじゃなくキートンとかも入ってるという話がプロダクションノートにあるという話だが)
    フィンチャーとスパイク・ジョーンズのプロデュースらしくフィンチャーの映像美に、スパイク・ジョーンズのチープでシュールな素材でスタイリッシュに描くオシャレなヤン・シュヴァンクマイエル的な抽象的な映像も良かった。

  • THE FALL
    2006年 アメリカ
    監督:ターセム
    出演:リー・ペイス/カティンカ・アンタルー

    たまたまどこかでもらったフライヤ-の色彩がすごくキレイで、監督も出演者も知らない映画だけど見てみたいな-と思っていたら運良くギンレイホールがやってくれました。期待どおり、すっごく映像というか風景&コスチューム(※ドラキュラでアカデミー衣装デザイン賞とった石岡瑛子)が美しい映画で、目の保養度は抜群、さらに子役の女の子がすっごい可愛くて、ラストのオチもポジティブで、個人的にとても好きな映画でした!

    撮影中の怪我で入院、さらに失恋で自暴自棄になって自殺願望のあるスタントマンの青年が、たまたま知り合った同じ病院に入院している女の子(5才)に、嘘八百の架空の冒険物語を捏造して話して聞かせるんですが、実は青年には、この女の子に睡眠薬を盗んでこさせて、それで自殺しようという下心があって、そうとも知らない少女はこの架空の冒険譚に熱中し、話の続き聞かせてもらうために、青年に頼まれるまま薬を盗んできてしまったりします。

    けれど映画の大半は、この青年の語る架空の冒険譚のほう。これ、青年が口からでまかせに語ってるだけなので、なんの歴史的背景もない、矛盾だらけのデタラメなストーリーなんだけど、これが荒唐無稽なりにすごく面白い!仮面の山賊、妻を殺されたインド人、博物学者ダーウィン、奴隷だった黒人、火薬職人(?)、精霊使い等々、なんの脈絡もないけれど個性豊かな面々が、共通の敵である悪い王を倒す為に戦うんですが、よくできたRPGのファンタジー的な要素もありつつ、後半の展開はさながらジャンプマンガのようで(仲間を助けて次々死んでいく)、それらが世界遺産の美しい建築物を舞台に、華麗なコスチュームで繰り広げられるものだから、好きな人間にはもうたまりません。

    ラストは、この架空の物語りと現実が入り乱れての大団円。偽善的かもしれないけれど、こういう前向きな結末、私は大好きだなあ。架空の冒険譚にも、現実の物語りにも、結構泣かされました。
    (2009.01.26)

  • 映画のスタントで下半身不随となり、失意のどん底にある青年と、腕を怪我している移民の少女が病院で出会う。青年は少女に物語を語ることで少女を自分の味方にし、自殺するための薬を持ってこさせようとするのだが…。

    青年の語る劇中物語が世界各地の世界遺産を舞台にしている摩訶不思議な話で、とても幻想的。病院での様々な出来事がこれまた心に残る。

  • ファンタジー系の作品の中では一番好きな作品。

    ターセム監督の描く壮大な空想の世界、石岡瑛子さんの素晴らしい衣装。
    素晴らしい。。。。

    ストーリーは病院の中にいる青年ロイが同じく入院中の移民の少女アレクサンドリアに語る空想の物語を軸に展開されていく。

    異国が混じり合う、時代も混同された美しい映像は、少女の頭の中で実際に逢った人間で演じられ、壮大なロールプレイングゲームのごとく進められていく。

    アレクサンドリアはロイの作り出す物語にどんどんと引き込まれ、病院生活の中の唯一の楽しみとなってしまうのだが、ロイの目的は彼女を楽しませる為ではなかった。

    失望や悲しみはそう簡単に彼自身に生きる喜びを戻してくれず、ロイの空想の物語は次々と絶望の方向へ行ってしまう。

    彼の中で渦巻く自殺願望の手段が、皮肉にも少女からの無償の愛情を得る事になり、やがてロイの物語自体を救っていく救世主となる。

    どのシーンを切り取っても額に入れて飾りたくなってしまう美しさ。
    場合によっては子供っぽいファンタジーになりがちな映像がここまで芸術的な映像美で仕上がる事にはただただ脱帽。

    映像の素晴らしさがどうしてもクローズアップされがちだがストーリーも、そしてアレクサンドリアの役をやった少女の演技の何とも愛らしい事!
    演技だとはとても思えない片言話し方や、喜怒哀楽の表情は、それだけで目が離せなくさせてくれる。

    映画を観ているだけなのに少女と同じように、不思議な魔法にかかったようにしばらくこの映画の事が離れない作品でした。

  • 映画のスタントでの大怪我と失恋で自殺願望を持って入院してるロイが
    幼い少女アレキサンドリアにお話を聞かせて自殺用の薬を持ってこさせようとする
    そのお話の夢物語が万華鏡の様に繰り広げられる
    アレキサンドリアが美少女でなくふっくらとした移民の子供だという所がいい
    鼻をこすったり、ちっともじっとしていない
    映画の始まりも白黒のアート写真集のようだ
    象が透明度の高い緑の海を泳いだり、白い布地に赤い血がしみこむ所、霊者が木から現れ、緑の草地から
    マヤの生贄みたいに横たわり、身体中に世界遺産を含めた地図が浮き出るシーンは度肝を
    抜かれました
    ダーウィンの蝶の様な衣装、オウディエンスの手下の異様な鎧、奴隷の水牛の角のついた兜がとてもいい。
    特にリンゼイ姫の初登場のシーンの扇のベールの付いた衣装は扇の赤のグラデーションが美しく、衣装も異国情緒に溢れ、結婚式の白い衣装も香り高い
    乾いた赤茶の土
    水中宮殿や青い城壁、水中階段など、結婚式での白い服を着て廟の中を回転する人たちの孤が調和が取れて水の波紋を思わせる
    廻るスカートの差し色の青など、どのシーンも映像美に満ちて、洗練されている
    どれもこの世界には触れてはいけないような美しさの宿った場所と映像でお話は進む

    霊者の死んだときに口から鳥が旅たち、奴隷は矢で射抜かれる死に方さえアートみたいだ
    音楽も美しさに花を添えている。

    そして夢の物語に入り込んだアレキサンドリアが最後の夢のシーンのロイに泣きながら死なないでと訴える気持ちがいじらしい
    このおたふくちゃんがこの夢物語の本当の姫。また2人はいつでも合える
    そして誰でも自分の王国を持っている

  • あまり期待していなかった。
    想像と全然ちがうものだった。
    見たことのないタイプの映画だった。
    女の子が可愛い 可愛い。
    この子の好奇心と、純粋で確かな、とても大きい心に泣けた。
    大人の否定なんてこの子の心の前では敵わない。
    笑顔が本当に可愛らしかった。
    あの子のような手紙を書きたい。
    自分にいつか子供が生まれたら、あの仮面を作ってあげよう。
    お腹に、アメリカーナエキゾティカ、とあの子の発音で、あの蝶の絵を、
    書いてあげよう。

  • 映画館で観て、あまりの映像の美しさに感動した映画。作って聞かせる虚構の世界と実際の世界とがあいまいに交差する、その不安定な感じが内容と合っている。死にたいほど絶望している人でも、純粋なものには心惹かれてしまうんだなぁ。子供は強い!
    「The Fall」という題名がとってもいい。

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