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- / ISBN・EAN: 4988021154499
感想・レビュー・書評
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しっかり者の妻(木村多江)とフワフワした夫(リリー・フランキー)の物語。生後間もなくして子供を亡くしてしまうことで妻はウツになっていく。毎日が辛くって、逃げ出そうか踏ん張ろうか悩む夫。「(こんな事してると、あなたが)離れていくとわかっているのに。ちゃんとしたいけど、ちゃんとできない」と号泣する妻。ここを乗り越えられるかどうかが、夫婦の転換点ですね。二人の演技が自然でよかった。
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橋口亮輔監督は『ハッシュ!』が大好き。
一昨年見た『恋人たち』もとても良い作品だったので、その間に撮られたこの作品も見なきゃ、と思ってたのだが、今回ようやく観られた。
やっぱり橋口監督好きだなあ。
人を見る視点の温度が熱すぎず、ぬるすぎずに感じられ、私にはちょうど良い。
主演の木村さんとリリーさん、ふたりが一緒にいるところの雰囲気も素敵。
リリーさんは一見‘いい加減’にみえる。
でもその裏にある繊細さ優しさに泣きそうになるシーンも。
法廷画家の役で、劇中でしょっちゅう絵を描いているのだが、ほとんどリアルな人物画なのに、一枚だけ『おでんくん』のようなテイストのイラストを描くシーンがあって面白かったです。
そういえば彼は元々イラストレーターだった。コラムの文章も素敵だし(えげつない内容のものも多いが)、小説はべストセラーだし、この作品ではないけど日本アカデミー助演男優賞まで獲っちゃうし、ほんと多才な方だなー。
他のかたも書いてますが、出演者が豪華!
山中崇さん、江口のりこさん、安藤玉恵さんなど後に人気になる役者さんや、倍賞美津子さん、寺田農さん、柄本明さんなどのベテランさんまでいる!
邦画ファンにはたまらないのでは。
作品をガンガン撮る監督さんじゃないけど、ずっと待っています。 -
二度観てからというもの、なにかにつけ、思い出す。
恋人との接しかた、書けない文章や描けない絵のこと、喜怒哀楽とその発露のありかたのこと、愛のこと、歳月のこと、人間のこと、言葉の粗さのこと、変わっていくこと、などなど、具体的になにを考えてるのと問われれば口ごもるようなことに、ぐるりぐるりと想いめぐらしている。人生の折々に見なおしたい作品です。 -
「お前は色んなことが気になりすぎる。考えてばっかりで。みんなに嫌われてもいいじゃん。好きな人に沢山好きになってもらったらそっちの方がいいよ。」
夫婦のお話。カナオみたいな優しさを持てる人は素敵だ。
どうしようもなく壊れてしまった翔子にそっと言った言葉に涙がでた。「ちゃんとしたいのにうまくいかない」と泣き崩れる翔子に、多くを語らずやさしくポソポソとしゃべる言葉に滲む優しさ。
翔子が本屋で狼狽して、顔を隠して泣くシーンや、家で鼻をたらしてぼろぼろ泣くシーンをみて、男の監督さんにこんな表現ができるんだとびっくりしたのを覚えてる。もろく、弱くどうしようもなくなってしまった女の人の感じがよくでてる。なんでわかってしまうんだろう。 -
ようやく観た橋口亮輔監督の『ぐるりのこと。』。
私が今まで観た映画監督のうち、一番わけがわからないのが橋口監督作品だと思う。それは、彼がゲイだとかうつ病だったからとかそういうことではなくて、映像やテンポ、発想が毎回「不穏」で奇妙でとても気持ち悪い。狂っている。
一見、普通の感動作のように見えるのだけど、どれもこれもなにかがズレている。私自身が「普通の人間」で、橋口監督が狂っているとは別に思わないけど、すごく変。ものすごくリアルな部分と、まったくリアルじゃない部分が混在している。そう感じているのは私だけだろうか。
賛否あった石井裕也監督の『夜空はいつでも最高密度の青色だ』は、橋口監督の『恋人たち』の後継作品ぽい感じなんだけど、石井監督はやはり「笑い」の人で、主義や主張もわかりやすいのに対して、橋口監督は全く意味がわからない。ねじれている。いや、ねじれているのは社会の方で、橋口監督がまっすぐなのかもしれない。
もしかしたら橋口監督は社会的なことにさほど興味なく、ただ背景として描いてるだけ、描きたいのは自分自身のことだけなのかもしれない。
この映画、たまたま『ベティブルー』の後で観たのだけど、かなり近い。そして救われなかった主人公が、『ぐるりのこと。』では救われる。芸術によって。
最近そういう似た傾向の映画を観ることが多い…『潜水服は蝶の夢を見る』とか。『鍵泥棒のメソッド』は全く違う映画だけど、あの映画の広末涼子と、この映画の木村多江も若干近い。
序盤から木村多江は、強迫性障害のような感じで(これは私自身が若干そうだから気持ちがわかる部分あり)、こうと決めたら「そうしなければならない」性格が描かれる。
彼女が芸術によって再生し、救われたことを表現するシーン、黄色い銀杏並木?が非常に美しい。これは橋口監督自身が「うつヌケ」した体験そのものだそうだ。
(以下引用)
「鬱から抜けたのは、ある秋に、僕の家の近くにある大きなイチョウの木を見たとき。黄色のイチョウに、青い空の色がスコーンと抜けていて、世界はなんて美しいんだろうって思ったんです。鬱の時って色彩の感覚とかが無くなるんですけど、その風景を目にした時に「あっ、抜けたかな」と。それからですね、また映画をやろうかなと思うようになったのは。鬱の時に感じた色々な事を、なんとか形に出来ないかと作りはじめたのが『ぐるりのこと。』でした。」
リリーフランキーの演技はものすごく自然体。アドリブも多いんじゃないだろうか。私がリリーさんのイラストを初めて目にしたのは95年ごろで、おでんくんのようなの+エロという、今のイメージそのまんまの絵を描いていたのでよく記憶に残っている。まさかここまで俳優として大成するとは当時思っていなかった(そして当時は女性だと思っていた)。
リリーさんは高校が私の地元で、高校生の頃スケッチで消すためのパンを食ってたらしい笑。この映画で初主演だったそうだけど、当て書きぐらいにリリーさん本人に寄せている役。特に下ネタが楽しい…この映画では、性に関することが非常にリアル。
橋口監督はゲイだからだと思うけど、「女性に対する幻想がない」らしい。だからここまで性に対してリアルに描けるのでは、この点は素晴らしいと思う。
反面、傍聴する被告人たちはリアルに感じなかった。ほんとうに客観視している感じ。そしてここの俳優たちで『アウトレイジ』ができるというメンツ笑。
脇役の女優さんたちも江口のりこや菊池亜希子ら、今では有名になった方々が多い。安藤玉恵の役、雅子さま御成婚、水、向井千秋なんかはそのまま『恋人たち』につながる。
この映画は昔つきあっていた人の好きな映画だった(ベティブルーとは別の人)。
私が橋口作品を最初に知ったのは『二十才の微熱』の頃で、コピーがものすごく印象に残ってたのだけど、いまだに観ることができていないので、今度観てみます。 -
まずは自分のこと。
次に、となりにいるひとのこと。
それから、ぐるりのこと。
すごい腑に落ちた。 -
本当に弱ったことがある人たちが描かれる映画で、誰もが強い思いをとても不安定な場所から発信しようとして生きている。
そんな映画だと感じる。 -
とてもよかった。リリーさん演じる旦那さんは、大切なものとそうじゃないものをよく知っている人だと思った。ああいう人になりたい。
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すき!私と同じ名前なんです。しょうこさん。はじまった時はまた、しょうこ、暗い役に使われてらぁって思ったけど、うんうん、しょうこだいすきだよ。ぶさいくに泣くとことかちゃんとしなきゃって思ってるのにだめだめよわよわとか、うんうん。夫、暖かい、あぁ、ゆるがないって、こういうことなんやなーって。大した事やないさー、っていうと思う。でもこういう人なかなかいない。真剣な話するの苦手なところも、なんだか、出来すぎてなくて、すごくすごくよかった。登場人物もすてき、取り方もすてき、絵もすてき、良い映画でしたー、映画館で見たかったなー好きな人とぶっとうしで、エンドロールまで無言でまたみたいーよかったー