おくりびと [DVD]

監督 : 滝田洋二郎 
出演 : 本木雅弘  広末涼子  余 貴美子  吉行和子  笹野高史  山崎努  山田辰夫 
  • セディックインターナショナル
3.97
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本棚登録 : 2701
感想 : 567
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4527427643369

感想・レビュー・書評

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  • この映画で「納棺師」という職業を知った.死の後のことが身近になった気がする.
    祖母が亡くなった時、ある葬儀屋にお願いしたのだけれど、この映画の影響の話をされていた.映画では納棺師が亡くなった人の「旅立ち」の準備をすべて一人で行っていることに違和感を覚えるのだそうだ.なぜなら、亡くなった人の旅立ちは本来、一番近くにいた家族がするべきものだから、というのがその理由.遺体に触りたくないという人も中にはいるだろうけど、私はその葬儀屋さんのことばに納得し、祖母の着替えを手伝った.
    宗派によっても旅立ちの仕方はいろいろ.やり方は一つじゃない.おくりびと、は数多ある旅立ちの形の一つにすぎない.
    でも、こういったことを身近にしたこの映画の功績は大きいと思う.

  • どうして今更「おくりびと」と自分に語りかけながら観たくなりました。最近、あまり露出がない山崎努さんの厳しい顔を観たいからです。やっぱり、いい顔してます。最近、不安定で情けない私を厳しく観てくださるような錯覚を味わうためです。とっても、良い映画でした。少し泣きました。いつか来る大切な人たちとの別れを考えさせられます。いや、しぶんが亡くなった時に、大事な人たちに何を伝えたいか考えました。大好きな余貴美子さんも出演されていて、ラッキーです。何か悲しいことを抱えた役をさせたら、右に出る人はいないですね。素敵な女優さんです。

  • 「死」は次のステップへの「門」だ。
    だから私は門番だ、という笹野さんの言葉が、
    そっか、それなら晴れの舞台だなと素直に思った。
    晴れの舞台を送ってあげられてよかったな、
    おじいちゃんおばあちゃん。

  • 滝田洋二郎監督、小山薫堂脚本、2008年作。本木雅弘、広末涼子、山崎努、余貴美子、吉行和子、杉本哲太、笹野高史、峰岸徹出演。

    <コメント>から
    〇総評
    久しぶりに全重心を預けて観られる映画。テーマがしっかりしていて、ストーリーにササクレがなく、笑って泣けて、エンドロールを眺めながら満足感に浸れる映画。

    〇納棺師
    ・大悟(本木)が納棺師の仕事に魅せられた理由は、干し柿をもらった納棺のシーンのナレーションで示されている。

    「冷たくなった人間をよみがえらせ、永遠の美を授ける。それは冷静であり、正確であり、そして何より優しい愛情に満ちている。別れの場に立ち会い、故人を送る。静謐で、すべての行いがとても美しいものに思えた」

    納棺師の仕事をそう感じることができるのは、その人にとって適性のある仕事だからだろう。仕事は生きるためにすることだし、仕事の適性なんて、してみて初めてわかる。それが社会から評価されることこそが「個性」。自分がしたい仕事のために自分探しをするなんていうのは、怠慢な自分の正当化にすぎない。

    ・自分自身、数年前に父を亡くしたとき、納棺師の人が身体をきれいにしてくれていた。おばさんの納棺師だった。遺族として普通に感謝の気持ちをもった。だから山下(杉本)や美香(広末)が納棺業を蔑んでいたことは理解できない。美香役は広末より地味な人がよかったというコメントも見たが、納棺師を「けがらわしい」と切り捨てる態度と整合する女優としては的を射た配役ということか。山形に来たことをいまさらになって恩を着せ、言い分が通らないと実家に帰ると言いだすその態度こそが汚らわしいわ。


    〇死生観
    ・社長(山崎)が良い味を出しているために、映画の風通しをよくしてくれている。生死を達観した豪快さと機微のわかる繊細さを併せ持つ。「生きるために食べるんだ。うまいんだよな、困ったことに」。
    ・もう1人、死生観を語ったのが、火葬場職員の平田(笹野)さん。生死は一本の線上にあり、死は「門」だと。そこをくぐり抜けて次に向かう、まさに門。自分は門番としてここでたくさんの人を送ってきた。死後の世界があるという死生観。

    〇家族の絆
    ・口では父(峰岸)を嫌っていた大悟が、父の納棺に及び、涙を流しながら儀を執った。息子がおカマになってまともに顔も見なかった父が、ほほえんだ亡骸の息子に猛烈な愛しさを感じたシーンもあった。
    家族の思い出は、憎悪の感情にもなるが、何かのきっかけで同じ量の愛情にも転化する。その意味で、憎悪の感情は家族の絆になり得る。
    子どもの大悟が父に贈ったツルツルの石文は心の平穏の意。その思いがこみ上げ、憎しみの感情は同量の愛情へと転化した。
    逆にいえば、面白くないから実家に帰るなどというのは、浅はか。この映画で美香はヒールのように思う。
    逆に、それだけ家族と多くの時間を過ごすことは、愛に満ちた葬儀の前提になる。ルーズソックスを履かせたり、顔をキスマークでいっぱいにして泣かれたり、愛用のスカーフを巻いたり。そういう故人の日常を容れる納棺は、お互いに幸せ。

    〇映像
    山の風景、納棺の映像、川辺のチェロと演奏の音がマッチしていた。



    <あらすじ/ネタバレ>
    大悟(本木)は東京の管弦楽団で念願のチェロ奏者となるも楽団はすぐに解散、妻の美香(広末)と、2年前に他界した母が住んだ山形に転居する。大悟の父はそこで喫茶店をしていたがウェイトレスと駆け落ち、母が居酒屋に改装して大悟を育てた。
    職探しをしていた大悟は、「旅のお手伝い」をするNKエージェントの求人に応募、社長の佐々木(山崎)は少し話しただけで採用。旅行代理店ではなく納棺業の会社だった。妻には冠婚葬祭の仕事とごまかす。
    納棺マニュアルDVDの遺体役、死後半月の遺体処理もあったが、徐々に納棺の仕事に魅せられていく。しかし、幼なじみの山下(杉本)には「もっとマシな仕事さつけや」と、また納棺師と知った妻からは「恥ずかしい仕事」と言われるも仕事を続けたため妻は実家に。さらにヤンキー女の納棺で親族が、運転していたヤンキー男に大悟を指さして「この人みたいな仕事して一生償うのか?」となじる。などなどから大悟は心が折れ、辞意を伝えに社長のところに行く(辞意を切り出そうとした瞬間、社長の肩越しに亡き妻の写真が目に入り、言うのをやめる本木の演技が秀逸)。社長は、妻を失ったことを悲しみ、自身で妻を納棺して以来、この仕事を始めたこと、死ぬ気になれなきゃ食うしかない、食うならうまいほうがいいなど、その死生観を話し、大悟は辞意を言いださず。
    ある日、大悟が帰宅すると、妻は戻っていた。妊娠したこと、納棺師をやめるよう話したところで大悟に入電、山下の母、ツヤ子(吉行)が亡くなり、その納棺の依頼だった(いくつかの伏線がある。大悟が子どものころ父と通った銭湯をツヤ子にが1人で仕切っていたこと、銭湯を閉めてマンションを建てる山下案にツヤ子は、銭湯を楽しみにしている人のために反対していたこと、大悟は外風呂をもらいに妻を連れ、ツヤ子に紹介していたことなど)。
    大悟は妻と山下らの前で納棺の儀を行う。死者への愛情を込めた真摯な仕事ぶりに彼らは、納棺の仕事への認識を改める。火葬は、ツヤ子の銭湯で50年来の常連だった平田(笹野)が担当し、「死は門である」と残す。
    大悟の母宛に電報が届く。失踪した父の遺体引き取りの求めだった。うけとった妻の美香は会社の大悟に連絡、大悟はいったんは受け取りを拒むも、事務員の上村(余)の説得もあり、遺体のある由良浜漁港の詰所へ。上村は帯広から子を捨てて好きな男に走った過去があった。
    横たわる父の遺体(峰岸)を業者が棺に入れる様が事務的すぎるのを見かねた大悟は、自ら納棺を行う。父の手を開いて前に組ませようとすると、小さな石を握りしめていた。子どものころ、大悟が河原で父に贈った石文(いしぶみ)の石だった。ツルツルの石は心の平穏の意味。当時の父への思いがこみ上げ、涙を流しながら納棺する大悟。
    その石を、懐妊した妻のおなかに当てる場面で幕。

  • 2008年作品 滝田洋二郎監督

    期待した以上の出来だった。
    この映画を見るために 伊丹十三監督の「葬式」を見た。
    エネルギッシュなチカラが その中にはあふれていたが、
    おくりびとは 山形の自然 そして チェロ という 
    環境にやさしい という基調の上に 人を思う気持ちが優しい
    今の すさんだ人情が 取り戻されるように 描き出されている。

    日本よりも 海外で評価されたことが よくわかるような気がする。
    偶然によって 迷い込んだ場所で・・・
    なにゆえ 「納棺師」 になったのか を問いかけながら
    納棺師であることを 納得していく 本木雅弘 の切なげな表情は
    なんともいえず 好感が持てる。
    チェロもなんなく弾きとおしたねぇ。

    広末涼子の 泣きそうでもけなげに微笑む表情は 
    演技の熟度が増したと思わせるに 十分だった。

    山崎努は 葬式と 今回では 風雪にたたかれて いい老人になっているよ。
    フライドチキンを食べるシーンや 炭火であぶった白子を食べるシーンは
    「生のあかし」なんだよね。
    死んだものをいただいて もしくは 殺して いただくことによって
    生命は 存続できる。
    山崎努の 「困ったことに・・・」という表現がいいなぁ。

  • プロのチェロ奏者として東京の管弦楽団に職を得た小林大悟(本木雅弘)。
    しかし、ある日突然楽団が解散し、夢を諦め、妻の美香(広末涼子)とともに田舎の山形県酒田市へ帰ることにする。
    就職先を探していた大悟は、新聞で「旅のお手伝い」と書かれたNKエージェントの求人広告を見つける。てっきり旅行代理店の求人と思い込み「高給保障」や「実労時間僅か」などの条件にも惹かれた大悟は面接へと向かう。
    面接した社長(山崎努)は履歴書もろくに見ず「うちでどっぷり働ける?」の質問だけで即「採用」と告げ、名刺まで作らせる。
    大悟はその業務内容が実は「旅立ちのお手伝い」であり、具体的には納棺(=No-Kan)と知って困惑するが、強引な社長に押し切られる形で就職することになる。
    しかし妻には「冠婚葬祭関係」としか言えず、結婚式場に就職したものと勘違いされてしまう。
    出社早々、納棺の解説DVDの遺体役をさせられ散々な目に遭い、さらに最初の現場では夏、孤独死後二週間経過した高齢女性の腐爛屍体の処理を任され、大悟は仕事の厳しさを知る。
    それでも少しずつ納棺師の仕事に充実感を見出し始めていた大悟であったが、噂で彼の仕事を知った幼馴染の銭湯の息子の山下から「もっとましな仕事に就け」と白い目で見られ、美香にも「そんな汚らわしい仕事は辞めて」と懇願される。大悟は態度を決めきれず、それに腹を立てた美香は実家に帰ってしまう。さらに、ある現場で不良学生を更生させようとした列席者が大悟を指差しつつ「この人みたいな仕事して一生償うのか?」と発言したのを聞いたことを機会に、ついに退職の意を社長に伝えようとするが、社長のこの仕事を始めたきっかけや独特の死生観を聞き、思いとどまる。
    場数をこなしそろそろ一人前になった頃、突然美香が大悟の元に戻ってくる。妊娠を告げられ、再び納棺師を辞めるよう迫られた大悟に仕事の電話が入る。
    それは、一人で銭湯を切り盛りしていた山下の母、ツヤ子の納棺の依頼であった。山下とその妻子、そして自らの妻の前でツヤ子を納棺する大悟。その細やかで心のこもった仕事ぶりによって、彼は妻の理解も得、山下とも和解した。
    そんなある日、大悟の元に亡き母宛ての電報が届く。それは大悟が子供の時に家庭を捨て出て行った父、淑希の死を伝えるものであった。
    「今さら父親と言われても…」と当初は遺体の引き取りすら拒否しようとする大悟に、自らも帯広に息子を残して男に走った過去があることを告白した同僚の上村(余貴美子)は「最後の姿を見てあげて」と説得する。
    美香の勧めもあり、社長に車を借りて遺体の安置場所に向かった大悟は、30年ぶりに対面した父親の納棺を自ら手掛ける。
    大悟の目線を通して孤独死した老人の腐乱遺体を扱って臭いが取れなくて生肉を見て吐き気が止まらなくなったりなどの納棺師の仕事の厳しさや遺族の悲しみを和らげ死者が安らかに旅立つ手伝いをする真摯な祈りが込められた仕事であることを描いた前半、社長の仕事ぶりに感化され納棺師として一人前になっていく中で行きつけの銭湯の女将や自分を捨てて逃げた父親の納棺を通じて死者への敬意や死と向き合っていく中で生きる貴さを大悟の周りの人々が学んでいく後半、生と死とは何か?死に向き合って分かる生きることの貴さ(仕事終わりの大悟や社長が美味しい食べ物を貪るシーンのバイタリティ「美味いんだよな、困ったことに」)そして死とは悲しみだけでなくやすらぎやもう1つの始まりであるということを伝えてくれる傑作ヒューマンドラマ映画。

  • 納棺の所作が、尊く美しくて、目が釘付けに。
    特に仕上げのお化粧は、あたたかく、崇高な儀式のようで、じわりと鳥肌がたちました。

    「生と死」という人として逃れられぬ必然のテーマについて、安穏と過ごす日常のなかで、ふと立ち止まり考えるきっかけになる映画。
    と同時に、自分の生きていく上での仕事のこと、夫と妻の関係について色々思い巡らせてしまいました。
    (あんな奥さん可愛すぎて現実感なくて反則。セロ弾きのもっくんも素敵すぎるぞ!激しく憧れる。もんもん。)

    白子をむしゃむしゃ食べながら「旨いんだよなぁ。困ったことに」という社長の台詞が、噛めば噛むほど深い気がして印象に残っています。

    人に堂々とお薦めできる良作品。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ふと立ち止まり考えるきっかけに」
      DVDは買わなかったのですが、原作にノヴェライズに漫画と手当たり次第に買って人に薦めました。
      お葬式とか...
      「ふと立ち止まり考えるきっかけに」
      DVDは買わなかったのですが、原作にノヴェライズに漫画と手当たり次第に買って人に薦めました。
      お葬式とか●●式と言う形式ばったモノが苦手なんですが、ヤッパリお葬式だけは、何とか都合つけようと思っている今日この頃です。。。
      2012/05/02
  •  自分の本棚に並んでいる映画のDVDなりBDは,200枚ほどしか無いのだが,そのうちの一枚。
     NHKでもやってくれたので,久しぶりに見てみた。
     こういう職業にスポットを当てて描ききったということのすごさを改めて感じた。

    《NHKプレミアムシネマの解説を転載》
     本木雅弘が遺体を棺に納める“納棺師” を演じ、日本映画初のアカデミー外国語映画賞を受賞。誰もが迎える最後の儀式にまつわる人間ドラマを滝田洋二郎監督が端正に描き、国際的にも高く評価された感動のドラマ。チェロ奏者の夢に挫折し、故郷の山形に妻とともに戻ってきた大悟。新しい職を探し求めるなかで、“納棺師”の仕事を知り、見習いとして働くことに。さまざまな経験を経て大悟は自分の仕事に誇りを見いだしていくが…。

  • その人の今まで生きぬいた目にみえない人生を想像して創造できるかが大切なんだと感じました!   ぜひ〜

  • TVにて
    死ぬこと、きちんとお別れをすること、そして生きることを静かに、所々ユーモアも交え、温かい作品になっている。チェロの調べと風景が美しい。

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