去年マリエンバートで HDニューマスター版 [DVD]

監督 : アラン・レネ 
出演 : デルフィーヌ・セイリグ  ジョルジョ・アルベルタッツィ  サシャ・ピトエフ  フランソワーズ・ベルタン 
  • 紀伊國屋書店
3.50
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4523215037938

感想・レビュー・書評

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  • これほど監督のイメージを精緻に具現化した作品もあるまい。ここでは登場する俳優ですら1個の物であり駒であり風景であるに過ぎない。豪華絢爛な背景にその抽象度の高い映像表現ゆえに、もはやひとつの美術品のような作品である。

    1961年フランス・イタリア合作映画。監督はヌーヴェル・ヴァーグの旗手のひとりアラン・レネ。脚本はヌーヴォー・ロマンの旗手アラン・ロブ=グリエ。
    主演は謎の男役のジョルジョ・アルベルタッツィと、その愛人(かもしれない)謎の女役デルフィーヌ・セイリグ、それに彼女のたぶん夫であろう役にサシャ・ピトエフ。
    前衛的で難解な映画だが、時代を反映するかのように1961年ヴェネチア映画祭金獅子賞を受賞している。

    クラシックなパイプオルガンのBGM。どこかの宮殿だったと思しき豪華なホテル。そこで上演される舞台劇の出だし。彫像と絵画に満ち溢れた豪華な廊下が延々と続いていく。上流階級の人々がそこかしこで社交を繰り広げる。そして謎の男が謎の女に話しかける。「去年お会いしましたよね?」女には何の事だかわからない。そして朧気ながら判明する事情。「去年、駆け落ちの約束をしましたよね?」「・・・。」

    時間と空間を無視するかのように現実と過去とイメージがコマ切れに錯綜しほとんど状況説明のない脚本と演出にて、ストーリーはほぼ何も無きに等しいが、白黒の映像に荘厳な音楽そして寸分違わず幾何学的に計算され尽くされた重厚な映像表現が観る者を圧倒する。
    主演女優のデルフィーヌ・セイリグのまさに作られたような美しさと、ひたすらトランプと数取りゲームに興じる夫サシャ・ピトエフの能面顔、そして周囲の人々の動と静、これらはさらにこの作品の美術品のような印象を強調している。
    全てが幻想的で美的センスに支えられた作品だが、謎の男性の問いかけと謎の女の困惑した姿は観客を大いに惑わせ、最後は錯乱する女の姿に、ますますこの無意味で不条理な世界への耽溺を可能にすることだろう。この不思議な映像トリックの中に仕掛けられた、謎かけの罠とのギャップに魅せられるのも無理はない。まるで、果てしなく続く抽象絵画の絵巻物を観ているような感覚か。はたまた映像の造形美の極致に漂う感覚だろうか。

  • L' ANNEE DERNIERE A MARIENBAD
    1960年 フランス 94分
    監督:アラン・レネ
    脚本:アラン・ロブ=グリエ
    出演:デルフィーヌ・セイリグ/ジョルジュ・アルベルタッツィ/サッシャ・ピトエフ
    http://www.cetera.co.jp/marienbad4K/

    マリエンバートにあるバロックなホテル、女(デルフィーヌ・セイリグ)に会うためにやってきた男(ジョルジュ・アルベルタッツィ)。男は、去年マリエンバートで、その女と出会って恋に落ち、しかし夫(サッシャ・ピトエフ)のいる女は、1年後同じ場所に会いに来てと言い別れる。その約束を守り男は彼女に会いに来たのだが、彼女は男のことを全く覚えていないという。男は思い出してくれと彼女につきまとい、去年の思い出を語り続け…。

    随分前に金井美恵子の小説(どれだったか忘れた)で頻繁に名前が出てきて、いつか見ようと思っていた映画をようやく。脚本はアラン・ロブ=グリエなので、なんとも解釈の難解な迷宮感。黒澤明の羅生門に触発されて書かれた脚本だそうで、なるほど、男の言い分と女の言い分は食い違い、つまり藪の中というわけですね。

    とにかくモノクロの映像が美しい。舞台になったホテル(マリエンバートはチェコだけれど、撮影されたのはドイツのお城だそうで)がシンメトリックでとにかく美しい。眼福。そしてヒロインの着ているドレスのデザインはシャネル。まるで羽のようなレースの袖が蠱惑的。デルフィーヌ・セイリグも美しい。ただ男性陣は、М字額の押しつけがましい思い込み激しい男と、テーブルゲームがやたら強いけど死神みたいな容貌の夫、どちらもあまり好きではなかった。

    正直、理解できたかといわれると、ごめんなさいって感じだけれど、この迷宮のような雰囲気に浸り、美しい映像を眺めているだけで満足。

  • 主人公の男( ジョルジュ・アルベルタッツィ)は、ある人妻(デルフィーヌ・セイリグ)と再会する。男は去年マリエンバートで会ったと語りかけるのだが、女は記憶していない。しかし、女は男の話を聞く内に、おぼろげな記憶を取り戻していく。人妻の夫( サッシャ・ピトエフ)は実際に何が起こったのか知っているらしいのだが…。

    男が人妻に向かって具体例を上げながら「俺たちは愛し合ったんだ」とずっと語りかけるだけの話ですが、突然人妻の着ている服が変わったり、背景が切り替わったりするなど不可解ですし、時間軸もシャッフルされているので非常に難解です。どうやら「現在」「男の記憶」「人妻の記憶」「旦那による客観的視点」の四つをバラバラに繋ぎ合わせているらしいのですが、改めて鑑賞すると誰の視点のシーンなのかが解ってなかなか面白いです。凝った映像、建物の美しさも印象的で、アート映画としても一見の価値があると思います。

  • どこまでも抽象的で混濁した夢の中。
    全ての映像、イメージがそこに収斂されていて、いかにも西洋的な、静謐な芸術作品である。

    ただ、後半の男の回想、あるいは妄想が細部に渡っていくと同時に激化していく様は、記憶の迷宮に閉じ込められるに至るにあたって必要であることは理解できるが、作品から美しさを奪っており、やりすぎであると感じた。

    優れた作品に変わりないが、もう少し静かに作品を閉じた方が、美しかったのではと思う。

  • 美しくて難解。作り手が敢えて不親切に複雑にしている。
    そもそも昔読んだ小説にしきりに登場するから興味を持った映画だったんだけど、一つの事実を複数の視点から観た時に起こる齟齬という、恩田さんが非常に好きらしい手法だなと思った。
    だからこれは研究してその事実を解いていくのも一興。また、夢の様に美しい映像と計算されたその齟齬を楽しむのも一興。

  • 途中で訳がわからなくなった

  • 自分の理解力が足りなのかorz

  • ”ヌーヴェルヴァーグがセーヌ右岸派としたら、レネはセーヌ左岸派・アンチロマン派。前者がジャズの即興性を好むのに対し、後者はクラッシックの譜面を好んだ。”
    台詞も映像もまるでゴシック音楽のよう。

  • はぁ、なんて美しい映像美溢れた画面なのだろうか。
    ただひたすらその美しさに惚れ惚れです。
    あいかわらずヌーベルバーグ特有フランス詩的な独特感には理解出来ているのかなんとも言えずな不明なところはあれども見ていて気持ちのいい1時間半でした。

    ヌーベルバーグの難解を謎解きするかのように頭をフル回転しながら見るのも一種の鑑賞法だとは思いますが何も考えずにぼけーとその映像美の浮遊感に漂うのもまた1つの醍醐味ではないかと思います。
    後方の点で言えば私としては素晴らしい作品であると思いました。

    豪華絢爛なヨーロッパのお屋敷、その柱や絵画や鏡等をいろいろな角度から捉え間接的に取り入れながらもこれでもかっという程にその舞台の建物を舐め回すかのような撮影は艶かしい。
    この華やかさと裏腹になんだか浮遊しているかのような不安定感と冷たさがモノクロームの画面に張りつめている。
    カラー画面のように鮮やかな画面でありながらも確実にモノクロームに近いこの冷ややかで鮮麗された画面がことさら新鮮でアメリカンニューシネマ期の殺人や暴力的な意味で効果をもたらすモノクローム感に近いものを感じました。
    ただ女優さんの美しさが画面を華やかに和らげているのが絶妙。
    ココシャネルプロデュースだというその衣装の鮮麗さもとても美しくこの作品の映像美にとても貢献しているように思います。
    ・・・と言うのもかの有名なイーグルスの名曲「ホテルカリフォルニア」in フランス、とでも思わせぶりな彷彿をちらつかせるように私には感じました。笑

    この艶かしさがこの作品の美しさの秘訣のように思います。
    ワンシーンごとにこだわり抜いた色気が漂っています。と言っても女優さんが別に脱いで頑張ってるというような意味ではなくこれは舞台風景の耽美映像とでも言えましょうか。笑

    個人的には同時期のヌーベルバーグでの筆頭のゴダールよりも本作の空気感は好みです。
    アート映画としては最高域の作品だと思います。

  • 幾何学的に剪定された緑のある庭を歩いているシーンだけが残ってる。

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