ディア・ドクター [DVD]

監督 : 西川美和 
出演 : 笑福亭鶴瓶  瑛太  余貴美子  香川照之 
  • バンダイビジュアル (2010年1月7日発売)
3.75
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本棚登録 : 1605
感想 : 356
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4934569634863

感想・レビュー・書評

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  • いやはや、
    さすが西川美和監督!

    「ゆれる」同様に
    緊張感を保ったまま
    ハラハラしながら、
    最後までのめり込んで見てしまいました(笑)


    前半は村で唯一の伊野医師(笑福亭鶴瓶)の
    村での奮闘の日々を
    コミカルに描きながら、
    なぜ彼は失踪しなければならなかったのかを
    暴いていきます。


    目は決して笑っていない(笑)
    鶴瓶という人間のキャラが
    役に投影され
    見事に同化した印象。

    この役は彼でなければ
    成り立たなかったのは明らかですね。


    伊野医師の秘密を知る
    医療メーカーの営業マンには
    今回も憎たらしいほどの
    演技達者ぶりを見せつけてくれる
    香川照之。


    いやらしい刑事役がホント似合ってた
    松重豊。


    良心の呵責に耐えられなくなった伊野から
    秘密を告白されても
    まったく取り合わない(笑)
    世間知らずな研修医を
    上手く演じるは瑛太。


    おかしいと思いながらも
    伊野を助ける
    ベテラン看護士役の余貴美子の
    目の演技も圧巻!


    そして何より特筆すべきは
    一人暮らしの未亡人に扮した大女優、
    八千草薫の
    ほのかな色気すら香る
    大人な演技でしょう。

    ラストに見せる笑顔がまた
    心憎いのです。
    (このラストは賛否両論あるだろうけど
    自分は断然支持します!)




    秘密がバレそうな危機も
    なんとかやり過ごし、
    どんどん英雄に祭り上げられてゆく伊野。



    経営のことしか頭にない
    大病院の医者と


    初めは成り行きだったけど
    患者たちのために
    心で尽くす伊野医師。


    いったいどちらが
    正しいと言えるんだろう。


    伊野は伊野なりに
    この村のために
    奔走していたことは確かだし、

    祭り上げてきたのは
    周りの人たちなんですよね。


    逆に言えば今の世の中、
    資格はあっても
    資質が伴わない
    医者や教師の多いこと多いこと。


    西川監督の言いたいことは
    その辺なのかな〜って個人的には思いました(^_^;)



    人は誰もが
    何かになりすまして生きている。


    大切なのは
    与えられた情報を丸呑みするのではなく
    一人一人が
    『真実』を見極める目を持つこと。


    いろんな部分をワザと曖昧にして
    観客に委ねた作りをしているので、
    人によって評価は分かれるのは必至だし

    観るたびに
    考えさせられる作品だけど、

    芸達者揃いの
    キャストの演技合戦を観るだけでも
    充分に価値のある映画だと思います(^O^)

  • 西川美和監督作品。
    村医者として無免許で営業していた鶴瓶演じるモグリの医師が突如失踪する。彼はいったい何者だったのか、というお話。

    ともすれば鶴瓶が善人として持ち上げられて感動話になりがちなテーマだが、そこをしっかりグレーなものとして描いているのが良い。白黒の判断がつきかねるものを徹底的に描き出してから、さあ何がどうだったのかちゃんとお前の頭で考えろ!と提示するような西川監督の姿勢は『ゆれる』の時と共通していると思う。バランス取りの難しい話が真摯に、そして面白く描かれていた。

    多くの人が言っている通り監督の独特のモチーフとして「グレーなものを掘り下げて描く」という姿勢があると思うが、もうひとつ「主観が世界を決定する」という考え方があるように思う。

    『ゆれる』でもオダギリジョーの主観が重要な意味を持っていたように、今作においても鶴瓶失踪後に周囲の様々な人間達の視点で彼の人物像が語られていくことで、観客に対して、善行というのは「誰にとって」善行なのか?悪行というのは「誰にとって」悪行なのか?という問いかけが行われているようにも感じた。

    鶴瓶の「おれはにせものなんだ」という告白に対して瑛太がその言葉の意味を取り違えるシーンなどは象徴的で、後で刑事が言うように「みんな自分の見たいものしか見ていないんだ」という言葉はそのまま観客である僕にも当てはまるように思う。つまり最終的にはどのような形にせよ事態に関わった人の数だけ真実があり、彼らの主観がその善悪をそれぞれ決定していくしかないのであって、そもそも物事を「これは善」「これは悪」と部外者が一般論で断ずることそのものに意味がない、という着地なのだと自分には感じられた。

    西川監督作はズシンとくるようなトーンではなくむしろふわふわとした印象があるが、体の節々にその映画のふわふわが付着していて鑑賞後にも作品のことをずっと考えてしまうような、そんなところがある。

  • 大勢は簡単に意識を変えてしまう、のだろうか
    表面上は「なりすまし」に抵抗を感じて、感じているふりをして
    あのような態度を取り
    世間体を保とうとしているけども「実は・・・」なのではないだろうか
    何せ、村八分、という言葉があるような土地ですからね

    本当の村人たちの気持ちは最後のあの「笑顔」にあるのではないかなと

  • 以前、河瀨直美監督の『あん』について「『ブレードランナー』と話の構造が似てる」という暴論を書きましたが、この西川美和監督の『ディアドクター』も、私からすればまさにブレラン的話でした。

    別に、過疎の村に酸性雨が降り注いだり、香川照之演じる医薬品営業マンが強力わかもとを売りつけるとかそういう話ではないけど笑。
    ブレランのロイ=笑福亭鶴瓶、デッカード=若い医師の瑛太や井川遥や刑事の松重さん。

    最近観た映画のジャケットを見てるとちょっと面白くて、『プリズナーズ』だとヒュージャックマンとジェイクギレンホールが違う方向を向いている。つまりふたりは対照的な関係。
    『ディアドクター』のジャケは、鶴瓶と瑛太が同じ方向を向いてますね。

    『ディアドクター』はとても有名な映画だけど、だいぶ前にBSで序盤だけ観ていて、その後見逃してしまってなかなか観ていなかった作品。
    観たのが序盤だけなので、鶴瓶が単純な良い人だと嫌だなぁと思っていたら、そうではなかったので良かった。
    というのは、鶴瓶って元々相米慎二作品の脇役として出てて、嫌な役をしていたから。いわゆる「悪べえ」というやつ。『ディアドクター』で初主演だったそうですが、目の奥が笑ってないのが良い。この後山田洋次監督の『おとうと』で、あれも良かったです。
    『家族に乾杯』で良い人イメージが定着しそうになると、きちんとチ◯コを出してバランスを取る、それが鶴瓶師匠の魅力。

    過疎の村の地域医療のお話で、社会問題も交えつつ、でも全体的にはしっかりと娯楽作品になっている。
    ただ、西川美和さんの映画って「モヤモヤする」。鑑賞後に心に残る良いモヤモヤの部分もあるけど、映画の演出的な部分での不満、悪いモヤモヤもあるから、そこまで好きにはなれない監督さん。演出面だと『ゆれる』の方が好きかなと思います。

    好きなシーン、泣けたシーンは鶴瓶と瑛太がスイカ食おうとして話すところです。

    村人の描き方、コメディタッチなところもあって「田舎モンをバカにしとるんか!」と少しだけ思いましたが、最後の方で嫌な面もキチンと見せてくれたので良かった。
    農村の嫌な面というのは、黒澤明の『わが青春に悔なし』や『七人の侍』によく出ていると思う。

    ヒロイン、八千草薫さん。
    昨年惜しくも亡くなられましたが、八千草さんて童顔だったからおばあちゃんになってもあんまり雰囲気が変わらなくて、最後まで上品な方だったなあと思います。
    八千草さんと言えば、たぶん海外でも有名な『ガス人間第1号』。若い頃の八千草さんは、今で言うと永野芽郁ちゃんレベルのすごくかわいい女優さん。
    『ガス人間第1号』って特撮映画だけど、ちゃんと良い恋愛映画(元ネタは『オペラ座の怪人』かな)なのでお薦め。プライムビデオにもあります。

  • 瑛太を見るためだけに観た。
    真実がわかってからの村人の反応の変わりようにぞっとした。そばにいた看護師や研修医は気づいていたが、英雄に祭り上げられ重宝がられていた状態ではああするしかなかったのか。だとしたら、医者って何を求められているんだろうと。ホンモノとは何か。寿司をのどに詰まらせた老人に対しての家族の反応も。
    瑛太は良かった。声も髪もチャラい感じもすべて。

  • 凄く淡々としているんだけど、人間はままならなくて、でも愛しいものなんだなぁと感じながら静かに見れる映画

    鶴瓶さんだからこそちょっと怪しく、でも人間味溢れるお医者さんを演じられたんだろうな~

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「鶴瓶さんだからこそ」
      私も、そう思います。西川美和が鶴瓶を思い浮べた時点で、8割は出来上がっている感じですね。
      「鶴瓶さんだからこそ」
      私も、そう思います。西川美和が鶴瓶を思い浮べた時点で、8割は出来上がっている感じですね。
      2012/11/12
  • 資格を持っていない医者の役を演じる鶴瓶。
    それを知っていて患者の対処を手伝う看護師に余貴美子さん。
    余さんが、うまい具合にアドバイスして鶴瓶がやったこともない
    処置もしてしまう。
    その時ある意味緊張が走るのだが、それがうまくいってしまい、続けざまなので田舎の村の中では信じて疑わない村民たち。

    遠まわしに医学界の世界を皮肉る瑛太のセリフもありますが、
    いい雰囲気で話は進んでいく。

    こうゆうことあるのかな?
    無免許だから現実だったら捕まってしまうだろう。
    けど鶴瓶さんが演じるからなんかいい具合に力が抜けていて、
    あまり頭つかわずに観ることができました。

  • 2010/05/03
    「ゆれる」に続いて西川美和作品は2作品目。
    最近は小説やら漫画に頼った映画ばかりの中、この監督には映画に対する強い意志みたいなものが伝わってくる。

    キャストも最高で、この役は鶴瓶のためにあるんじゃないのかなぁと思った。時間を置いて、もう一度見たい作品。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「映画に対する強い意志みたいなものが」
      映画制作は共同作業ですが、全部自分で背負い込むような感じがありますね、、、
      この作品での鶴瓶、「夢売...
      「映画に対する強い意志みたいなものが」
      映画制作は共同作業ですが、全部自分で背負い込むような感じがありますね、、、
      この作品での鶴瓶、「夢売るふた」(観逃してます)での阿部サダヲとキャスティングも絶妙です。。。

      手塚治虫「BJ」に同じモチーフの話がありました。昔から問題があったのに改善される兆しがないのは悲しいコトです。
      2013/02/15
    • moko*さん
      夢売るふたりの鶴瓶の胡散臭さ最高でしたよ。笑
      でも西川美和は男性を描く方がうまいと思いました。
      夢売るふたりの鶴瓶の胡散臭さ最高でしたよ。笑
      でも西川美和は男性を描く方がうまいと思いました。
      2013/02/15
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「鶴瓶の胡散臭さ最高でしたよ。」
      ほほー、鶴瓶なら目だけで表現しそう~
      香川照之も出ているそうで、全体的に濃いキャスティングですね。。。
      「鶴瓶の胡散臭さ最高でしたよ。」
      ほほー、鶴瓶なら目だけで表現しそう~
      香川照之も出ているそうで、全体的に濃いキャスティングですね。。。
      2013/03/28
  • 山あいの小さな村。数年前、長らく無医村だったこの地に着任して以来、村人から絶大な信頼を寄せられている医師、伊野治(笑福亭鶴瓶)。
    そんな彼のもとに、東京の医大を卒業した青年・相馬(瑛太)が研修医としてやって来る。
    へき地の厳しい現実に戸惑いながらも、伊野の献身的な姿に次第に共感を覚えていく相馬。
    そんなある日、一人暮らしの未亡人かづ子(余貴美子)を診療した伊野は、彼女から都会で医師をしている娘に悟られないよう、一緒に嘘をついてほしいと頼まれるのだったが…。
    「ゆれる」の西川美和監督が人気落語家の笑福亭鶴瓶を主演に迎え、過疎の進む小さな村で住民から信頼され慕われていた一人の医師を巡って巻き起こる騒動を描いた異色のヒューマン・ストーリー。
    笑福亭鶴瓶演じるニセ医者と瑛太演じるチャラい医者が成り行き任せで住人を救っていく中で住人から慕われていく過程を、淡々とした中にも人を食ったユーモラスなタッチで描いています。
    押し付けがましくないタッチで、田舎の僻地医療の問題やニセ医者が医者の真似事をすることは、いけないことなのか問いかけています。鶴瓶と余貴美子がお互いに駆け引きしながら気胸の患者を救うシーンのサスペンスや余貴美子、香川照之などの好演も見どころです。

  • 良い。
    西川監督、良い。
    ラストシーン良い。
    八千草薫さん、品があって素晴らしい。もうあんな昭和的な女優は出てこないだろう。
    鶴瓶しか出来ない役ではないだろか。

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著者プロフィール

1974年広島県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。在学中から映画製作の現場に入り、是枝裕和監督などの作品にスタッフとして参加。2002年脚本・監督デビュー作『蛇イチゴ』で数々の賞を受賞し、2006年『ゆれる』で毎日映画コンクール日本映画大賞など様々の国内映画賞を受賞。2009年公開の長編第三作『ディア・ドクター』が日本アカデミー賞最優秀脚本賞、芸術選奨新人賞に選ばれ、国内外で絶賛される。2015年には小説『永い言い訳』で第28回山本周五郎賞候補、第153回直木賞候補。2016年に自身により映画化。

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