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- / ISBN・EAN: 4988135805768
感想・レビュー・書評
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A CLOCKWORK ORANGE
1971年 アメリカ 137分
監督:スタンリー・キューブリック
原作:アントニイ・バージェス『時計じかけのオレンジ』
出演:マルコム・マクダウェル
若い頃にこの映画がとても好きで買ったDVDが発掘されたので久々に観賞。今回は今まで未読だった原作を先に読んでから観てみました。アレックスたちが使う独特の「ナッドサット」の言葉は、原作を読んだ直後だったので大体の意味がわかり、これは映画だけ見ていたときよりも理解しやすくなって助かった。昔はきっと感覚だけで理解できたのだと思うけど。
映像になることで、例えばコロバ・ミルクバーの内装はとてもぶっとんでいて素敵だし、近未来感は若干レトロチープでありつつもオシャレだし、全体的にサイケな印象に仕上がっているのはこの美術の力が大きいと思う。
暴力描写もスタイリッシュというと語弊があるが(原作のほうがエグかった)アレックスが「Singin' in the Rain」を口ずさみながら作家夫婦に暴行を加える場面などとても印象的だ(やってることはもちろんクズだけど)作家が後半でアレックスの正体に気づく伏線としてこの曲を使ってあるのは映画のほうの素晴らしいところ。
原作との差異としては、アレックスの凶器が原作ではブリトバ(かみそり)だったのが、あの仕込み杖みたいなのになっているところや、本を破られた老人と襲撃された酔っ払いの原作では別々のエピソードを一つにしてあるところ、あとは刑務所の中が映画は圧倒的に小綺麗で(原作はもうとにかく汚い)さらにアレックスが囚人の一人を殴り殺すエピソードが映画ではなくなっている。
映像処理として、序盤のビリーボーイの一味が女の子をレイプしようとしているところにアレックスたちが殴り込みに行く場面を劇場での芝居風にしてあるのもオシャレだった。原作ではレイプされそうになる女の子は10才くらいとなっていたが、映画は大人の女性。そして原作ではアレックス15才のためか、彼がレコード屋でナンパした二人の女の子をレイプする場面も、大人の女性で合意になってるし、早回しでコミカル。
そういう演出のおかげか、映画の暴力描写は原作よりややライト。ただ軽くなるのが良いかどうかはわからない。伏線として素晴らしかったが「Singin' in the Rain」を歌いながら暴行する場面は実際には単なる暴力描写より性質が悪いんじゃないかとも思う。
マルコム・マクダウェルは15才には見えないけれど、これ1作で映画史に名前を残す怪演。洗脳された後、暴力に吐き気を催しているが、それは条件反射的なものであって、彼自身の性根はもとのままな感じがとてもよく出ていたと思う。ルドビコ法は人間の本質まで変えられるわけではない、という根本的な欠陥。
原作も十分面白かったけれど、やっぱりこのサイケでスタイリッシュな映像と、実際に耳に聞こえてくる音楽なども含めて、やっぱり映画のインパクトのほうが大きかった。
最後に全くの余談なのだけど、たまたま嵐が配信してるYoutubeで待機児童のために紙芝居をするというのを見ていたら(https://www.youtube.com/watch?v=DfeVXUaVDh8)松潤が「A CLOCKWORK ORANGE」のTシャツを着ていて、勝手にシンクロニシティを感じました(笑)今の日本、ちょっとしたディストピア感あるかもね。 -
近未来のイギリス。ウルトラ暴力と女とベートーベンが生きがいのアレックスは、今日も敵対組織を相手にひと暴れしたりするが、仲間の裏切りによって逮捕されてしまう。
警察に逮捕されたアレックスは、ルドヴィゴ療法によって暴力にアレルギー反応するように仕込まれてしまう。
アレックスは、かつての仲間やアレックスに妻を暴行された作家によって追いつめられ、自殺未遂したショックで元に戻った。
アンソニー・バージェスの同名小説を映画化。
悪行三昧を繰り返してもセクシーでファッショナブルで悪辣なアレックスの魅力、バイオレンスシーンにロッシーニのオペラ「泥棒かささぎ」女とのベッドインに「ウィリアムテル序曲」そして作家にリンチを食らわすシーンに「雨に唄えば」を合わせることによって際立つバイオレンスシーンの残酷さ、ルドヴィゴ療法による洗脳の残酷さと比較してキューブリック監督が問いかけているのは、悪辣なアレックスのようなチンピラが暴れていることと国家によって自由意志を奪われることとどちらが残酷なのか、そして人間の本性は悪なのかです。 -
こんなに心が揺さぶられる映画は初めてでした。主人公のアレックスに抱く感情が、序盤と終盤で真逆になる、「人間は公平な目で見ることができない不完全なものなのかも知れない」と思いました。
善悪について、深く考えさせられる映画です。 -
この映画、セットが近未来的でSFっぽさがあるが、それらは所謂ミッドセンチュリーやシュルレアリスム作品。
これは未来の話ではなく、もうすでに進行している現在を見ろってことだ。
いろんな言葉をミックスしたナッドサット語も、若者の理由なき超暴力も、今では当たり前。それとも多分当時からよくあったのかな?
そして僕たちはキューブリックから問われている。
君は冒頭のアレックスのように、何にも縛られず思うままに生きているのかい?
それとも、檻の中で自分を偽り、牧師を欺きながら生きているのかい?
それとも、洗脳されている途中のアレックスのようにもがき苦しみながら生きているのか?
それとも、洗脳完了後の自分で考えることが出来ない人形かい?
それとも、入院してベッドに縛られて政治的利用されるだけのモルモットかい?
そう思いながら見ていた。
あなたはどれですか? -
悪夢のような救いのない世界を描いたストーリーは悪趣味で不愉快ですが、スローモーションを駆使した乱闘シーンにはベートーベンの「第九交響曲」を、3倍速のセックス・シーンには「ウィリアム・テル序曲」を組み合わせ、ジーン・ケリーの「雨に歌えば」を口ずさみながら暴行するなど、自分にはない感性を突きつけられ衝撃を受けました。ファッションやインテリアなどの小道具やカメラワーク、色彩のセンスも秀逸で古臭さを感じさせません。傑出した芸術作品だと思います。
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凄かった。
わけが分からなくて凄い。これを70年代に観てたら発想の凄まじさにひっくり返ってた。
本作が2001年宇宙の旅より評価されたらしいというのは不思議だけど…。原作を読んでみたい。
アレックスの俳優どこかで見たことがあると思ったらメンタリストの教祖役だった!瞳が美しい。
今後、雨に唄えばを聴いたら、こっちを思い出しそう。 -
創作された設定の映画は、その世界観を作り出す細かな描写や服装小物などに目をむける必要があると思いますが、ストーリーや内容はともかく、制作当時に作ろうとしたイメージは十分共有できたと思います。
機器や内装のデザインなど、今見ると斬新でポップで色彩豊かで見応えありました。
今を生きるボクは、この映画を踏襲してつくられたと思われる映画を観ているので新鮮味はありませんが、公開当時は新しい映画でこれが最先端だったのではないかと思いました。 -
自由な無法地帯か管理社会かという典型的なデストピアの対比
音楽や映像は特に印象的