エル・トポ HDリマスター版 [DVD]

監督 : アレハンドロ・ホドロフスキー 
出演 : アレハンドロ・ホドロフスキー  ブロンティス・ホドロフスキー  デヴィッド・シルヴァ  ポーラ・ロモ  マーラ・ロレンツォ 
  • Happinet(SB)(D)
3.66
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感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4907953030350

感想・レビュー・書評

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  • EL TOPO
    1970年 アメリカ+メキシコ 124分
    監督:アレハンドロ・ホドロフスキー
    出演:アレハンドロ・ホドロフスキー/ブロンティス・ホドロフスキー/デヴィッド・シルヴァ/ポーラ・ロモ/マーラ・ロレンツォ/ロバート・ジョン

    砂漠を旅する一匹狼・・・もとい子連れ狼の凄腕ガンマン、エル・トポ。馬上の彼の後ろには7歳の息子(監督の実の息子ブロンティス・ホドロフスキー)父は黒ずくめの暑苦しい衣装なのに、息子のほうは靴と帽子だけでスッポンポンだ。日焼けしちゃって痛々しい。7歳になったから母親の写真とお気に入りの玩具を砂に埋めろという父親に黙って従う息子、けなげだ。

    砂漠を進むうちに二人は、住民たちが虐殺された村を通りかかる。血だらけで倒れる子供や女性たち、血が流れ込んで真っ赤に染まったいくつもの水たまり、建物の中には男たちの死体が吊るされている。唯一生き残った血まみれの男が這いずりながらやってきて言う「殺してくれ、苦しいんだ」父は息子に銃を渡す。息子はそれを撃つ。なんとも印象的な導入部。

    ここから前半は、西部劇風。修道院に巣食っていた砂漠のならず者=虐殺犯たちの首領である「大佐」をエルトポが去勢し、やっつける。しかしその大佐の愛人にされていた美しい娘がエルトポに一目惚れ、一緒に旅に連れていくようつきまとい息子(7才全裸)と対立、あろうことかエルトポは息子を捨てて女を連れて去る。かわいそすぎる不憫な息子は修道士たちが引き取ることに。

    実はこの女がとんだサゲマン。私は強い男が好き、砂漠にいる4人のガンマスターを倒せばあなたを最強の男と認めて好きになる、とエルトポを唆し、エルトポは次々砂漠のマスターたちと対決していくが、基本的に相手はみんな人格者で超越者。ゲスな女に言われるままに、卑怯な手を使いまくって彼らを倒してゆくものの、エルトポは次第に虚しさを覚え、亀仙人みたいな四人目のマスターが自ら命を絶つにいたって、ついに発狂。

    一方、途中から仲間に加わっていたレズビアンの女ガンマンがいつのまにかエルトポの女とできていて裏切り、エルトポは重傷を負ったまま倒れ・・・

    実は、ここで死んで終わりだと思ったのだけれど、なんとまだ続きが!!死に損なったエルトポ(ホドロフスキー本人)はフリークス一族の住む洞窟の中で聖者像として崇められていたが、数十年の時が流れて目をさまし、自分を世話してくれていた小人の娘とフリークスたちのために洞窟にトンネルを作る決心をする。

    資金稼ぎのため大道芸人として小銭を稼ぐエルトポと娘はいつしか愛しあうようになり娘は妊娠。一方、町にある胡散臭い教会にやってきた一人の修道士。どこかで見たような僧服。そう、彼こそは、かつて父エルトポ置き去りにされ、修道院で育った彼の息子!

    再会した親子、息子は父を恨んでおり殺そうとするが、トンネル貫通するまで待ってくれという父の言葉に従い一緒にトンネルを開通させるが・・・

    エルトポはメキシコ語(?)でモグラのこと。映画冒頭で「モグラは穴を掘って太陽を探し、時に地上へたどり着くが、太陽を見たとたん目は光を失う」という哲学的なナレーションが流れたとおり、トンネルを開通したのちエルトポはその生命の光を失う。

    個人的には砂漠の西部劇風な前半部分のほうが圧倒的に面白かった。テーマ的には後半のほうが深いのだろうけれど。一心同体な腕のない男と脚のない男のコンビ、大量のうさぎの死体(本物・・・)で覆い隠される死体、群れをなすフリークス、干からびた羊のミイラ、去勢と四肢切断のモチーフなど、えげつなくもホドロフスキーらしいモチーフは長編1作目のここですでに網羅されている。

    そして対立する父と息子の構図も。でも結果、ホドロフスキー自身も、自分の息子(ブロンティス当時7歳)に、ほとんど虐待か!という芝居をさせているので、息子たちが実は父を恨んでないか心配(苦笑)

  • ホーリーマウンテンに続いて二作目の鑑賞。終始やばいものを見た。やっぱりこの感じが出せるからすごいんだなと思った。

  • カルト映画の"金字塔"
    http://matome.naver.jp/odai/2139148745298818601

    感想をどう書いて良いのか考えがまとまらず、DVDリマスター版で観て1ヶ月以上経過。
    同じような映画をつくれる監督は他にはいないと思うし、今の時代二度とこのような作品は生まれない(映倫的に)。

    (古典で出てくる言葉を使用すると)不具者が…、実在の身体障害者が出演。両腕を失った男が両足を失った男をかたぐるまのようにして一体となり常に共に行動していた。
    鳩やうさぎ等、亡骸も本物。

    後半の詩篇からは、心身ともに体力のある時でないと観れない。

    迷ったけど、☆4。
    繰り返し観たいとは思はないが、不思議と魔力的な何か…があり評価下げられない。
    ボドロフスキー監督の「DUNE」と、新作「リアリティのダンス」は怖いもの見たさ的に観たいと思う。

  • カルト映画。
    あまり、意味のない事だが、話のテーマを挙げれば、人の業か。
    救世主みたいな主人公。
    子供を捨て、女の願いのために世界一強い男を目指し始める主人公。
    女に捨てられ、坊さんになりだす主人公。
    奉仕するも、結末は散々なものになり、
    街の人達を皆殺しにして、焼身自殺を遂げる主人公。

    人が生きるということは、各々に何か目的があったり、
    意味があったりするのは確かだろうけど、
    それ以上に行動の結果一つ一つがただ積み重ねに
    過ぎなかったりする部分もある。
    意思を持って、何かを成し得るからこそまた、
    人は愚かでもあるのだろう。

    空と砂漠の色のコントラストが素晴らしかった。

  • 本作の評判は幾度となく耳にしており、
    いつか機会があれば観てみたいと思っていた。
    ジョン・レノンが「けたはずれの映画」だと絶賛し、
    ウォーホール、ミック・ジャガーら数多のアーティストを魅了した。

    砂漠…傘をさす馬上の男…背中にしがみつく裸の少年。
    冒頭シーンから、一気に観る者を異空間へ誘う…
    残虐なシーンが重なってゆくが、ボクには不思議と神話的な
    敬虔さが感じられた…画面のつくりかたも美しい…

    1970年当時…これは前衛的とされただろう…
    形而上的なシークエンスが編まれてゆく映画なんだけど、
    それほど、わかりにくものではなかった…ときおり、
    フェリーニのテイストを感じたが、それよりずっと常套的だ。

    カルト映画の傑作の誉高い本作なんだけど…やはり、
    そこまでかな…観ていて、後半がダレた…さらに、
    エンディングが、どうにもチープに思われてならない…
    評価の高い本作だけに、ちょっと評価は辛めです。

  • 考えたら負けで、ただ映画の発するパワーを受け止めればよいのだと思う。二部のが分かりやすい展開なんだけど、好きなのは圧倒的に一部です。多分に宗教的で、同じぐらい禁忌。女の名をマーラとしたのはとても暗示的だ。

  • 前半はドラゴンボール的コミック・ラテンフレーバー・ウエスタン。これはこれでツッコミどころ多くて面白かったのだが、後半のフリークスを中心とした人間賛歌的内容に圧倒されてしまった。辛辣なカトリック批判、白人批判精神も最高。まさかの伏線回収も。

  • 原題:El Topo
    レンタルで鑑賞。

    一度、通しで見てすぐには理解できず。
    見終わって、全体を俯瞰して漸くフワッと理解できるような気がした。

    画面の迫力が物凄い。
    脳裏に焼き付いてしまう。
    2時間に渡ることと、後半のエルトポの復活から、シーンで思い出しても一本の映画だと思い出すのに時間がかかる。
    「あれ、このシーンの映画って、何だっけ……エルトポだ」
    「ん? じゃあ、あのシーンは……エルトポだ!」

    西部劇の体裁を取っていた序盤から、緩やかな坂を降るように神秘主義な世界へと突入してゆく。

    全体像を把握した上で、コメンタリーの説明はわかりやすい。
    勿論、製作裏話もある。
    『エルトポ』という夢の夢解きのよう。

  • 最強を求めさすらう男が、戦いの果てに無常に気付き、
    愛に救われ、愛を知り、報いた愛を失い、死んでいく物語。
    「北斗の拳」がちらりと浮かんだ。

    娯楽作品に必要な判り易さを排除した、芸術寄りな作品だった。
    監督のコメントにもあるように、セリフは映像を観て判らない処にしか入っていないし、
    役者が皆 素人なので、演技から意味を汲み取ることも容易ではない。

    作品に意味・意図・ストーリーを求めたがる私としては、
    以下に監督のコメントの抜粋を載せることとしたい。
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    崇高な精神と平和を探し求めた男 エル・トポ(もぐらの意)。
    だが結果は見るも無残なもの。復讐の神に堕ち焼身自殺を遂げた。
    暴力抜きに神秘は撮れない。恐怖と美が一体となるのだ。血は生命力を表す。

    私は普通じゃないものを愛する。想像力のあるものを。
    異形は自然の想像力が生んだ 遺伝子の想像力だ。

    自分の敵と仲直りすることは この上ない幸せを生み出す。
    世界は変えられるし戦争も止められる。
    人の争いが止められるなら国の争いも止められる。
    世界は病んでいる。癒しとなる映画をつくる必要がある。
    アートを使うのは 薬が社会にとって 毒だから。

    モグラは穴を掘って太陽を探している。
    ときに地上へたどり着くが、太陽を見た途端 目は光を失う。

    今日で7歳になった もう一人前だ おもちゃと母さんの写真を埋めろ。
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    しゃべり声、雑音や効果音のバックでひたすら“No.9”と繰り返すだけの
    ジョンの「レボリューションNo.9」や、
    白塗りの男や同性愛者が登場し、快楽を貪り、暴力と狂気の退廃の極の世界を描いた
    フェリーニの「サテリコン」、
    ただ缶詰のコピーを一面に敷き詰めたウォーホールの「キャンベル缶」などのように、
    大衆への迎合(=判り易さ)や商業的価値を排除した作品といえる。
    ただそれにしても、映画は2時間見続けるので冗長の感は否めず、編集等に工夫が欲しかった。

  • モフ…

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著者プロフィール

1929年、チリでロシア系ユダヤ人の子として生まれる。映画監督、映画プロデューサー、芸術家、劇作家、俳優、詩人、作家、音楽家、漫画作家、タロット研究家、サイコセラピスト。『エル・トポ』(1970)、『ホーリー・マウンテン』(1973)など前衛的作風の映画がカウンターカルチャーを代表する人々に絶賛され、カルトムービーの鬼才として名を馳せる。2013年には〈実現しなかった映画〉として知られる『DUNE』を題材とするドキュメンタリー映画『ホドロフスキーのDUNE』が話題を集めた。タロット研究家、サイコセラピストとしての活動も長年おこなっており、フィリップ・カモワンとともに製作した〈カモワン・タロット〉によるリーディングセラピーで知られるほか、芸術によって魂を解放する独自のセラピー〈サイコマジック〉の取り組みをライフワークとしている。現在はパリを拠点に活動しており、自伝『リアリティのダンス』を原作とする映画2作『リアリティのダンス』(2013)『エンドレス・ポエトリー』(2016)に続く3作目、『エッセンシャル・ジャーニー』を2021年現在製作準備中である。

「2021年 『サイコマジック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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