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- / ISBN・EAN: 4988111287663
感想・レビュー・書評
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何十年ぶりかで再見。
薬師丸ひろ子の映画デビュー作であり、『犬神家の一族』『人間の証明』に次ぐ角川映画第3弾(1978年公開)であった。
オーディションで1224人の中からヒロイン・長井頼子役に選ばれた薬師丸は、当時13歳の中学2年生。
この映画のパンフ(定価300円。安!)を見ると、彼女のプロフィール欄には、「評判をよそに、本人は、まだ女優に専念するかどうかは決めていないという」と書かれている。
が、やがて角川映画を背負って立つヒロインとなり、国民的アイドルに成長していったことは、周知のとおり。
いま観ると、ストーリーはけっこうムチャクチャである。
東北の架空の市・羽代市のすべてを牛耳る独裁者(三國連太郎)が登場したり、自衛隊が悪の秘密結社みたいに描かれていたり……。まるで中学生が考えたかのような幼稚さ。
Wikipediaによれば、《作中に自衛隊が登場するものの、本作では権力志向の強い幹部に率いられた、目的のために民間人の謀殺も辞さない組織として描かれて好意的に扱われていないため、防衛庁(当時)の協力は一切得られなかった》という。
まあ、そうだろうな。
テレビドラマ『3年B組金八先生』に、強烈な自衛隊ディスり回があった(=クラスの男子生徒が「自衛隊に入りたい」と言ったことが、あたかも大問題のように描かれる)。あれも、この映画とほぼ同時代であった。
当時(70年代末~80年代初頭)は、映画やドラマで自衛隊を理不尽にディスっても問題にならない時代だったのだな。いまなら炎上必至だ。
羽代市を牛耳るドンと、自衛隊の腐敗幹部が結託し、主人公の元秘密工作隊員・味沢岳史(高倉健)を闇に葬ろうとする。
彼がレンジャー訓練中に民間人を殺した(謎の風土病で発狂した村人が娘=長井頼子を殺そうとしていたところに出くわし、村人を殺害する)事件を隠蔽するためだ。
そして、味沢は愛する者を守るため、たった一人で彼らと戦おうとする。
……というような話。
緻密に作ればジェイソン・ボーン・シリーズみたいになったかもしれないが、何とも大雑把でリアリティのない作り。
とくに、原作にはないラスト30分の展開は大仰すぎて、観ていて鼻白んでしまう(とはいえ、封切り当時、13歳だった私は涙まで流して感動したものだが)。
ストーリーはともかく、13歳の薬師丸ひろ子が天使級に可愛い。聡明そうで凛とした、目ヂカラの強い、つややかな黒髪の「日本の美少女」ぶりは、まさに眼福。
私は同い年の彼女に一目惚れして、その後長きにわたってファンとなった。だが、この映画以上に彼女が可愛い作品は、その後なかったように思う。
また、ストーリーは粗雑でも、戦車やヘリ、自動車などをガンガン爆破したり破壊したりするシーンの迫力は、日本映画としては上出来の部類だ。
キャストも超・豪華。ほかの映画なら主演級の人たちが、惜しげもなく脇役で登場する。
たとえば、芦田伸介はワンシーンにしか登場せず、誰が演ってもよさそうな役なのに、あえてこの大物俳優が起用されている。
高倉健と松方弘樹の共演作。最近読んだ『無冠の男 松方弘樹伝』(伊藤彰彦)で松方が高倉をディスっていた(※)のを思い出して、ちょっと複雑な気持ちに……。
※/『無冠の男』には、松方弘樹の次のような発言がある。
《健さんはものすごくバリアを張る人で、ぜんぜん男らしくない。〝男高倉健〟はまったくの虚像です》
《僕はほんとうに先輩方に恵まれましたが、高倉健はそのなかで唯一、好きになれなかった先輩です》詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
昭和スター祭りでランボーを撮ったという印象。薬師丸ひろ子のPTSD、局地的健忘症自体は良かったが予知能力は果たして必要だったのか。この頃の角川の予算は凄かったのだろう。
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BSで「高倉健」追悼番組として、『野性の証明 /1978』を放映していました。
東北の寒村での虐殺事件から、元自衛隊員の「味沢」が虐殺事件の生き残り「頼子」を引き取って護ろうとする序盤はサスペンスっぽい展開でしたが、、、
後半の自衛隊の特殊部隊を相手に「味沢」が対等以上に戦う展開はリアリティがなかったなぁ… 「シルヴェスター・スタローン」主演の『ランボー』を彷彿させましたね。
当時の日本映画としては迫力のあるシーンだったんでしょうが… ちょっと真実味に欠けましたね。
音楽は「大野雄二」が担当していたので『ルパン三世』っぽかったですけど、なかなか良かったな。
-----story-------------
大ヒットとなった『人間の証明』に続いて「森村誠一」のベストセラーを映画化。
東北の寒村で大量虐殺事件が発生。
唯一生き残った少女「頼子」はショックから記憶喪失となっていたが、当時山中でサバイバル訓練を行っていた自衛隊員「味沢」に引き取られる事になる。
退役した「味沢」と「頼子」は地方都市で平穏な生活を行っていたが、予知能力とも言える頼子の持つ不思議な力が二人を巨大な陰謀へと巻き込んでいく……。
クライマックスの軍事演習シーンはアメリカで撮影され、本物の戦車が大挙登場する迫真の画面が展開された。
「頼子」に扮したのはデビュー間もない「薬師丸ひろ子」。
-----staff/cast-------------
監督:佐藤純彌
製作:角川春樹
坂上順
サイモン・ツェー
松田文夫
原作:森村誠一
脚本:高田宏治
撮影:姫田真佐久
美術:徳田博
編集:鍋島惇
音楽:大野雄二
照明:熊谷秀夫
出演:
高倉健 味沢岳史
薬師丸ひろ子 長居頼子
中野良子 越智朋子/美佐子(二役)
夏木勲 北野刑事
三國連太郎 大場一成
舘ひろし 大場成明
田村高廣
ハナ肇
松方弘樹
丹波哲郎
成田三樹夫
原田大二郎
梅宮辰夫
江角英明
田中邦衛
角川春樹
リチャード・アンダーソン -
健さん追悼鑑賞、まだまだ続く。
この映画が公開されたとき、10代として観たかった。そうすればもっと単純にこの良くも悪くも「角川」な映画を素直に楽しめたことだろう。それにしても本作においても同じく40代後半の健さんの肉体はきっちり磨きこまれており、当時13歳で本作がデビュー作となる薬師丸ひろ子は片手でも持ち上げられそうな感じだった。
それにしてもキャストは豪華。
鬼籍に入った人もちらほらいながらも、ここ数年居座り続けている邦画熱のお陰で再会に喜ぶことの出来る人ばかり。夏八木勲(当時夏木勲名義にて)にはつい先日「戦国自衛隊」(1979) にて豪快な謙信役でお会いしたばかりではなく、「希望の国」(2012) での鬼気迫る演技も観せてもらっていた。佐藤オリエは「続・男はつらいよ」(1969) にて、三國連太郎・北村和夫ペアには「神々の深き欲望」(1968) にて、ハナ肇・鈴木瑞穂ペアには「遙かなる山の呼び声」(1980) にて、寺田農・北林谷栄ペアにいたっては「肉弾」(1968) にて。番外的には「007は二度死ぬ」(1967) での丹波哲郎もいれば、他にも田中邦衛、大滝秀治、梅宮辰夫、松方弘樹、田村高廣、殿山泰司、渡辺文雄、芦田伸介、金子信雄、原田大二郎、舘ひろし…と枚挙にいとまがない。
さて、次なる健さんは…。
やはり中野良子つながりで「君よ憤怒の河を渉れ」(1979) か。やっぱりそうでしょう! -
佐藤純彌監督が亡くなったので、追悼放送された『野生の証明』。ようやく観れた。
ツッコミ所が山ほどあるけど、同時にめちゃくちゃ面白い!すごい映画でした。
この映画は、日本でもハリウッドみたいなアクション映画を作るぞ!という感じのもの。近い傾向の作品だと『レイダース(インディジョーンズ1)』が1981年、『ランボー』が82年、『コマンドー』が85年でしょ?この映画は1978年でそれより前なんですよ。すごいことです。この頃はお金かけたこういう映画があったんだねえ。
高倉健さんが亡くなった時に『新幹線大爆破』を観ましたが、佐藤純彌監督はあれ以降大作映画をやってて、たぶん『君よ憤怒の河を渉れ』とかも同じ傾向の作品かと。
町山智弘&春日太一の『日本沈没』と『新幹線大爆破』を語ってる動画を以前観たけどとても面白い。この中で、五社協定が無くなったあと、1971年以降の日本映画について語られてましたが、その後に作られ始めた角川映画(1976年の『犬神家の一族』が最初)って、各社のクロスオーバーが進んでいってるのではないかと思う。
『野生の証明』は東映系だけど、角川映画だから東宝系の『犬神家の一族』も入ってるなーと。三國さんが出たり、序盤の事件は津山事件(『八つ墓村』)に似てるし、音楽が大野雄二さんなので、雰囲気が金田一ぽい。
でも東映系なので、敵側はほぼ『仁義なき戦い』という。キャストがいちいち最高。松方弘樹最高!成田三樹夫さんが大好きすぎる!
アクションものをやるとき、主人公が普通の人だと現実味がない。では現実的に日本で一番強いのは?と考えると、自衛隊のレンジャー…となったのではないかと。これなら相手が警察でもヤクザでも暴走族でも勝てそう。あくまで原作ありきですが、角川春樹って人はやっぱりプロデューサーとしての嗅覚がすごいなと思います。
薬師丸ひろ子の映画デビュー作で、先日『翔んだカップル』を観たので丁度良かった。そろそろ『里見八犬伝』を観返したいところ。
薬師丸演じる少女は予知能力あるエスパー的設定でして、73年以降のオカルトブームの流れを感じる。たぶんこれ、ゴジラの三枝未希に繋がるのではと。
戦車がいっぱい出るんですが、これ61式でも74式でもなくて、あれ?M48?と。内容が内容だけに自衛隊に協力してもらえず、アメリカでM48を使って撮ったらしい。すごすぎる! -
自衛隊の特殊工作員が起こした事件を隠蔽しようとして、戦車やヘリま動員して目撃者の民間人を殺そうとする。この映画の魅力は、この過激な設定に尽きると思います。今では絶対こんな映画作れないし、「戦国自衛隊」といい、この時代の角川はほんとラジカル。
物語の真相が早々に明らかになって、やくざや事件記者によりいざこざは結構かったるいんですけど、最後の自衛隊演習地での派手な銃撃シーンはなかなか盛り上がります(あまりリアリティはないですが)。自衛隊が極力しなかったということは、戦車も銃器も全部民間からチャーターしたってことか。すごいなぁ -
集落の殺戮シーンがものすごくバイオレンスでびっくり。
守るべきもののため、地方都市を牛耳る企業の暴力団連中や、反体制的日本人の殺害を任務とする陸自の架空の部隊、特殊工作隊と戦う男の物語。
古臭いけど、当時としてはお金がかかってそう。戦車とか。
ストーリーに脈絡はあまりない。
ミステリーとアクションがちぐはぐだったり、あとで、結局あれは何の意味があるシーンなのか?と思わせるのが多かった。 -
昔の角川映画。
脈絡のないシーンの連続でイミフ。
とりあえずエンタメ臭させとけば良いみたいな、牧歌的な時代の雰囲気を感じさせる。
クソみたいな出来だけど、憎めない作品。 -
WOWOWで。これまた配信終了前に駆込み視聴。「この作品には、一部不適切と思われるセリフがありますが、作者の意図を尊重して、そのまま配信いたします。ご了承ください。」との事でしたが、音が消されてました。残念。それより不適切な映像の方が凄かった。いや斧で首が飛んだりするだけですが。自衛隊特殊工作隊のヘリや戦車に一人で挑む高倉健にただただ驚愕。でも中野良子も薬師丸ひろ子も結局助けられず、何が言いたいのかわからん内容であった。