八日目の蝉 通常版 [DVD]

監督 : 成島出 
出演 : 井上真央  永作博美  小池栄子  森口瑤子 
  • アミューズソフトエンタテインメント
3.77
  • (289)
  • (520)
  • (413)
  • (75)
  • (10)
本棚登録 : 2461
感想 : 552
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4527427649347

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 不倫相手の女に子供を誘拐された母と、不倫相手の子供を誘拐した女。3年半親子として逃亡を続けた生き様と、事件解決後に誘拐された子の、その後の生き様が描かれた作品。

    ズバリ、テーマは母性だ。
    だが、原作を読んだおじさんの私はレビューに綴った通り、狂おしいほど愛おしい衝動に駆られた。

    いつか映像でも観たいと思い続け、ようやくその機会がやってきた。

    本来なら悪役となるべき誘拐犯を演じた永作博美の演技はとても刹那的で深い。子供に対する母親の愛情を見事に表現していた。

    誘拐された娘であり、彼女もまた不倫相手の子を身籠りった女性役に、井上真央は適役だった。

    そして、複雑な事情を抱えた新聞記者役の小池栄子。
    彼女がいたからこそ、本作品が引き締まっていたと思う。

    何より、原作でも同じ男として憤りを抱いたポンコツ不倫夫役も田中哲司と劇団ひとり。情けないほどに情けなかった。グッジョブ。

    セミは数年から十数年の間を土の中で過ごし、成虫になって地上に出てから、七日ほどで死ぬという俗説がある。

    作中で井上真央演じる薫は言う。
    『七日で死ぬ蝉より、八日目の蝉の方が寂しくて悲しいだろう』と。

    作中で小池栄子演じる千草は言う。
    『私もそう思っていたけど、八日目の蝉は、他の蝉には見られなかった何かを見ることが出来る。もしかするとそれは凄く綺麗なものかもしれない』と。

    失っていた記憶のカケラを一つずつ拾い上げながら、苦しんで苦しんで苦しみぬいた末に、薫が最後に覚悟を決めたシーンにはとてもグッときた。

    まさに八日目の蝉が、新しい景色を見た瞬間のようで、原作同様に良き作品であった。

    • 松子さん
      こんばんは(^^)
      いつもいいねありがとうございます。
      試験勉強、そろそろラストスパートでしょうか
      陰ながら応援しています。
      どうぞお体に気...
      こんばんは(^^)
      いつもいいねありがとうございます。
      試験勉強、そろそろラストスパートでしょうか
      陰ながら応援しています。
      どうぞお体に気をつけて頑張って下さいね!
      2022/02/05
    • akodamさん
      松子さん、こんばんは。
      コメントありがとうございます!

      松子さんの八日目の蝉のレビューを拝読して、本作品の映像の記憶を辿っているところに、...
      松子さん、こんばんは。
      コメントありがとうございます!

      松子さんの八日目の蝉のレビューを拝読して、本作品の映像の記憶を辿っているところに、松子さんからエールが届きました♪

      日々読書の誘惑と闘いながら、試験の過去問題集とも格闘しています。

      また、松子さんの本棚にもお邪魔しますねー^ ^
      2022/02/05
    • 松子さん
      読書の誘惑⁉︎ それは厳しい戦いです!
      はい、いつても息抜きに本棚に遊びに来て
      くださいね♪
      akodamさん、がんばれー(^^)
      読書の誘惑⁉︎ それは厳しい戦いです!
      はい、いつても息抜きに本棚に遊びに来て
      くださいね♪
      akodamさん、がんばれー(^^)
      2022/02/05
  • 原作を読んだのはとうの昔なんだけど、まざまざとストーリーが蘇った。

    誘拐犯 希和子と幼い薫が親子のように慎ましく和やかに暮らしを紡ぐシーンも、その裏に本当の母親の気の狂わん程の日々があったかと思うとやるせなくなる。

    薫(恵理菜)も実の母親も悪くない。
    じゃ希和子が1番悪い?
    いやいやいや。
    自分の快楽の末に軽く「堕ろして」なんて言える男、実の所たくさんいると思う。許せない。

    それでも、恵理菜はそんな男の子供に救われたんだね。

    逮捕されてなお、謝罪の言葉をする事ができない希和子は結局自分の理想しかなかったのだろう。
    薫にすら謝罪できない想像力の欠如は。やっぱり希和子は壊れている。

    「美しいきれいなものをたくさん見せたい」って。
    小豆島のシーンは泣けたなぁ。

    小池栄子の役作りにも気迫を感じた。

  • 原作を読んでいたので結末がどうなるのかも知っているのに、希和子と薫、でいさせてあげたかった。

    憎むべきは不倫クズ野郎。女癖の悪い嘘つき男の子だけは身籠りたくないな…そもそも男の口車に乗ってはいけない。

  • 角田光代さん原作、成島出監督の『八日目の蝉』。成島監督は『ソロモンの偽証』しか観てなくて、あの映画は私にとってはがっかりというかぐったり映画でつまんなかった。
    ですが『八日目の蝉』はちゃんと面白かったです。映像がとても綺麗だし、構図も好き。ただ、最後のシーンが「なんでそうしちゃうの?」って感じでダサかったので★4。角田さんの原作のせいなのか奥寺佐渡子さんの脚本のせいなのかなんなのか。角田さんは昔、久世光彦さんに「だから何なの?」と言われたそうで笑ってしまった。久世さんと言えば『パーマンはそこにいる』。
    あと、細田守作品がつまんなくなったのって奥寺さんが抜けたからじゃないのかなあとぼんやり思っています。映画は色んな人の手が加わるから評価のしどころが難しい。成島監督は原作や脚本に左右されてしまう人なのかもしれない。

    角田さん原作だと『紙の月』の映画版を観てるくらいです。共通するのは「女性のクライムもの」。クライム映画、犯罪映画ではあるけど、あくまで女性のドラマ映画。以前書いたけど、『団地妻 昼下がりの情事』→『DOOR』→『OUT』→『八日目の蝉』→『紙の月』みたいな。クライムされる作品も混ざってしまった笑。

    私が最近考えてたこと……
    昔の小説だと男性が書いたものを読むことが多いのに、最近の小説だと女性が書いたものを読みたくなってしまう。これまでその理由を考えたことがなかったけど、この映画を観て少しわかったかもしれない。

    昔だと、戦争が文学や映画に与えた影響ってすごく大きかったから、男性作家を読みたくなるのかなと(もちろん男性作家の方が多かったこともあるけど)。皮肉な話だけど、戦争など社会的な問題があった方が、文学や映画って面白くなってしまう。対して、今の社会的な課題や私個人の関心が、女性に関することだからなのではないか……。ぼんやりと考えながら、なんとなくそう思う。

    『八日目の蝉』、永作ちゃん演じる主人公が、女の子を誘拐して育てるって話。育てられた女の子の成長後が、もうひとりの主人公井上真央。永作ちゃんが女の子を誘拐した理由が、子供を産めない体になってしまったからで……これは本当に、私は見ていて辛かった。私は男性だけど辛い。なぜかというと、女性は出産する年齢に限界があるからで、この映画のように原因がないとしても、全ての女性の話に思えるからです。私も年を重ねてきて、このことは本当によく考えます。辛いです。

    他に、チョウユンファじゃなくて劇団ひとりが演じてる男がクズすぎるなあとか、小池栄子はこういう役をさせると本当に面白いなあ、など。
    森口瑤子さん、これを観る前日に観た『鬼平犯科帳』にたまたまゲストで出ていて、若い頃はめちゃくちゃ可愛いので驚いた。ただ、顔が整ってる人イコール魅力的かというとそれはない。最近だと、この人は異常に顔が整ってるなあと思うのは芳根京子ちゃんとかですかね。この映画の頃の森口瑤子さんはちょっと年とってシワが増えてるから、そこが良い。

    あと、永作ちゃんってほんと老けないですね……この映画では役の為か痩せてて逆に老けて見えるけど。永作ちゃんみたいにちょっとエラが張ってる顔の人って、老けにくい気がする。だから有村架純ちゃんとかは老けにくいのではなかろうか……女優さんの顔のことばっかり書いてしまった。

    この映画、以前テレビで放映していて、ラストの方で吉田羊さんがチョイ役で出てるシーンがあって、そこだけ偶然観てしまった。ネタバレしないようにすぐチャンネルを変えたけど、クライマックスのめっちゃ重要なシーンでしたね……観ないようにしてて良かった笑。

  • 形は歪んでいたのかもしれないが、
    愛し、愛されたかった。

    だからこそ、
    世界が美しいのだということを、
    伝えたかった。
    歪んでしまったけれども、
    世界が美しいのだと伝えたかった愛情は、
    確かに伝わっていたんだ。

    誰も、憎みたくなどなかった。
    そうして、愛され、愛したかった。



    何度観ても涙してしまう。

  • 小説を省いたところも多く、ラストの演出なんかは映画ならではだと思った。
    どの女優さんも自分の役を演じきっていて、小説では泣かなかった私も、なぜか涙が誘われた。

    映像がつくことによって、母娘の双方のやりとりがより鮮明になった感じ。
    お互いの間に流れている空気が、親子そのものだから、より2人の時間の幸福感が感じられた。
    小豆島の雰囲気がとてもよかった。
    沢山愛してくれた人が、自分から普通の暮らしを奪った人でもあって…。
    その事実がとても切ないと思う。

    どうしょうもない男を好きになって、別れを告げる場面。
    希和子が薫に感謝を伝える場面。
    恵里菜が小豆島を訪れる場面。
    失わなきゃいけないものが沢山あって、自分自身がこれまで失ってきたものを思い出されて、涙が出たのかもしれない。

    改めて見ると、やっぱり男が元凶じゃないか!と思うんだけど…。
    劇団ひとりが気持ち悪かったからかもしれないけど。
    女はたくさんの喪失を経験させられて、男は面倒からは逃げて。
    ずるいなぁと思う。
    夢ばっかり見せられて信じてしまうのも悪いのかもしれないけれど、恋愛している時は夢を見てしまう人だって多い。
    好きな人なら信じたいし。

    誘拐犯が悪いと一言で言えなくて。
    私はどうしても希和子に同情してしまう。
    客観的に見れば間違っているのは希和子なのはわかる。
    恵里菜から全て奪ったのは間違いなく希和子だし、いろいろな人たちを不幸にしてしまったし…。
    それでも、からっぽのがらんどうだと言われて、子どもを産み育てる喜びも奪われて追い詰められて。
    そんな彼女が子供の姿を見て自分の生まれるはずの子どものように感じてしまう。
    なんにもなくなったから、もしかしたらの子どもの存在を感じてしまったら止められなくなって。

    そこまで追い詰めた恵津子の気持ちも少しわかる。
    旦那を取られて家庭を壊した元凶に、言い過ぎでも復讐心があって、追い詰めて追い詰めて。
    自分には子どもがいるってマウント取らなきゃ許せなかったんだろうなと。

    何もかも奪ってしまった希和子だけど、愛情だけはしっかりと恵里菜に伝えていたことがよくわかる。

  • ドラマと違って、徹底的に「男」を排除してるように思えた。
    説明っぽいシーンも少ないので、心をとにかく揺さぶられる。
    映像的には、圧倒的にNHKのドラマの映像が美しかったけど。
    映画、独特の映像と、ムダなセリフの少なさと
    井上真央と永作博美の演技が光ってた。


    原作を読んでるときにも、野々宮希和子はアタマの中で
    永作博美をイメージしながら読んでしまったので
    もしかしたら、映画、見たかもしれないと思ったほど
    この小説には、移入してた。

    生後6ヶ月で、父の愛人である野々宮希和子(永作博美)に
    誘拐され、4歳まで育てられるという
    衝撃的な人生。

    でも、ミツゴノ魂百までも。
    というだけあって、
    キワコは、本当の母よりも母親らしく
    愛情たっぷりに、その子、
    薫(井上真央)を育てていたのだ。


    誘拐してから、途方にくれ、
    近くの薬局でおむつを買ったりするときに
    薬局の人から、助言もらったりするシーンが
    原作にはあるんだけど、
    細かいシーンは、一切はぶいた
    キワコと薫。
    二人の心情を中心に描かれた、この映画は
    本当に素晴らしかった。


    学生時代の友人に助けられ、
    宗教ではないとしながら、ボランティア団体を自称する
    「エンジェルホーム」での生活。
    転々としながら、薫と、ただ一緒にいたい。
    それだけを思いながら、生きるキワコの
    許されない母性。


    そのまま、薫は、キワコと一緒にいたほうが
    シアワセだったんじゃないだろうか。とさえ
    思わせてしまうほど、穏やかな小豆島での生活。


    自分が被害者で、世間の目をあび
    他人のような不確かさな思いを実の母に感じながら
    また、実の母親も、夫の不倫と、愛人の堕胎と
    実子の誘拐と、いくつもの大きな傷をおいながら
    どんな気持ちで生きてきたのか。


    冒頭、実母である秋山恵津子(森口遥子)の
    アップが映し出されたとき、
    森口遥子じゃないんじゃないかと思うほどの
    <美しくない女>だったのが印象的。

    薫。本名、恵理菜(井上真央)が
    自分の本当の気持ちに気づくキッカケとなった
    エンジェルホームで一緒に育った千草 ( 小池栄子)の
    再会によって、その「思い出」が明らかになっていくのだけど。
    小池栄子の、猫背な姿。エンジェルホームで受けた心的影響。
    これまた、すごいな。色んな役をこなせる女優になったんだな~と感じた。

    ドラマも映画も、どちらも良かった。
    個人的には、やっぱりキャスティングも演出も
    映画のほうが良かったかな。
    何より、原作が良すぎて、夢中になって読んだものだったので
    どちらも裏切らない映像表現で
    素晴らしかった。

  • 長い映画は嫌いなんだけど、これは長さを忘れて見入ってしまったのを覚えています。
    日本映画で長さを忘れさせてくれるなんて、とてもレア。

    -------------
    2016/4/16 鑑賞

    最初っから最後まで引き込まれて見ました。

    失礼ながら、永作博美さんがやたらに人気がある理由が分からない…とずっと思っていたけれど、この映画ですっかり納得。すごく良かった。

    物語は前半と後半でテーマが違っていて、前半は女の中にある狂気の数々(←1つではないところがミソ)を描いていますが、後半はまるで交響曲が楽章ごとに曲調を変えるみたいにガラリとトーンを変えて、誰かに全身全霊をかけて愛されるということが一体どういうことなのか、が描かれています。
    その2つの印象があまりに違うせいか、見終った時、どっち寄りの感想を持てばいいのか少しとまどってしまい、若干モヤモヤします。
    でも、文句なくおもしろかったです。

    前半は、出てくる女、出てくる女、みんなが何かしら問題を抱えていて、少し狂っている、という設定。
    どう考えてもみんな普通じゃないのだけれど、なぜか彼女たちの「狂気」の部分は自分の中にもあるかもしれないな、と思わされる。
    私は登場人物の誰とも似ていないのに、彼らの狂気にそんな風に普遍性を感じてしまうなんてすごいなと思った。

    後半は、ただただ美しくてはかなくて切ないです。
    小さい頃に、親から愛されて育つということがどんなにすごいことか、それは物質的豊かさを凌駕し、恐怖やトラウマや何もかもに打ち勝つくらいの力を持つんだということが描かれています。
    心から人を愛するということは、人を根底から揺るがすくらいにすごいのだということ、ただ愛するだけでいいんだ、ということを思い出させられました。

    ということで、映画はとてもおもしろかったのだけど、でも内容が内容だけに、原作まで読みたいとは思わなかった。大前提の設定があまりにも理不尽で。

  • 私は、原作が良い場合、映画版は大抵★一つは下がるのだが、本作は、私が原作で物足りないとしていた所を補っていた点で正直驚いた。

    例えば…
    名古屋の地上げ空き家の部分は全く要らない。
    千草の描き方は映画の方が良かった(小池栄子の演技力も見直した)。
    宮田京子と薫が別れるシーンが大きく長く、且つ最も重要なモノとなっている。

    過去と現実を交互に描写した点は与しないが、それを除けば文句はない。
    ※平成邦画にありがちな、うるさい位の音楽でお涙頂戴的な演出もないし…

  • 角田光代の原作小説を読んだのは、だいぶ昔になるんですが、、、うむ。映画観て、思いました。やっぱ俺は、角田光代の小説が好きなんだな!って事を、再認識。

    この映画版も、勿論いい。良い。いいんですが、、、うーむ。あの、もう結構昔ですが、角田さんの小説版を読んだ時の感動には、及ばないなあ、というのが正直な感想でした。

    この映画を見て思う感想でもないんですが、
    「八日目の蝉」「ひそやかな花園」「予定日はジミー・ペイジ」あたりは、ああ、全部繋がってるなあ、ってね、角田光代作品の繋がりをシミジミと感じられたのが、なんかね、凄く嬉しかった。母性の強さと美しさと、氏より育ちを重んじる、みたいなんと、なんか、そんな角田さんの哲学みたいなんを、この映画で改めて感じられた、ような、気がする。自分の勘違いかもしれませんが。

    そういう意味では、これ、この映画を見た感想としては大変にズレていると思うのですが、、、小説版「八日目の蝉」を、久々に読み返そう!ってね、思いましたね、ええ。なんじゃ、この感想は。映画の感想に、全くなっていない、、、すみません。

    小池栄子は、良かったなあ。いわゆるコミュ障のオトコ経験のない女性を、極端なくらいの演技で良く表していた気がします。お、スゲエな小池栄子、って思った。ちょっと極端なくらいの演技だったと思うんですが、あのぐらいの極端さが、ええ塩梅だったと思います。

    あと、永作博美は、やっぱスゲエな、って思いましたね。ちょっとなんだか、良い意味で、うーむ、ぶっ飛んでる女優さんだなあ。ってね、思いましたね。永作博美の他の作品もガンガン見てみたい。そう思わせる、なんらかのキャラは、間違いなく持っている。おっとろしい女優さんだな、って思いましたね。「人のセックスを笑うな」を見てみたいなあ、って思いましたね。

全552件中 1 - 10件を表示

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×