手塚治虫のブッダ 赤い砂漠よ！美しく【blu-ray】

監督 : 森下孝三 

出演 : 堺雅人  観世清和  吉岡秀隆  吉永小百合 

• TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)

感想・レビュー・書評

[ぬいぐるまーさんの感想 · 2012年1月19日]

原作未読なのですが、投げっ放し的壮大感と残酷感はまさに手塚治。
他の作品じゃあり得ない冷静で残酷な救われなさすぎがある意味新鮮。
全三部作の映画一作目らしく、シッダールタが出家をするシーンで終わってしまいビックリ！
サブタイトル意味不明。実際はチャプラ編ですよね。
駆け足過ぎる脚本で感情移入する間もなく別の場面がに移っていく。
それなのに主題と遠そうな不要シーンも多い。
宗教的に意味のある物を作るか、子供向けエンターテイメントとすべきか目的がはっきりしていておらず、結局戦いのみが描かれダラダラと抑揚のない詰らない作品となっている。
手塚治としては、ブッタの幼少を語ることがおこがましいので
チャプラという架空のキャラクターを通し時代背景を語り、
キャラクターに共感し制度や世界に憤ることによって
シッダールタの苦悩に繋がるようにしたと思われるのに映画では上手く繋がっていない。
そのため正直どっちつかずでシッダールタの悩みもチャプラの悩みも両方とも全く見えてこない。
仏教的に重要であろう、「生老病死」の悩みも「天上天下唯我独尊」のシーンもなんとなく流れていく。
ばシッダールタの出家前の重要な部分だし出家の動機だと思うのですが
こんなに薄くては協賛する各宗教団体も納得するのだろうか？宗教教育ツールにすらならなそう。
比較的有名な脚本家なのだけれど手塚治の壮大な物語を纏めるのは酷だったのか？
山なし、オチなし、観る価値なし。
タッタって何者？手塚作品によく出る超自然的道化師？
能力といい、ずっと子供のままなのが違和感ありなのだけどツッコミ不可？
正直これは「仏陀」の物語ではないと思う。

スッドーダナ王（シッダールタの父）の観世清和の棒読みが酷いというか惨い。
シッダールタ（青年期）のアンニョイ演技しか出来なすぎる吉岡秀隆に相変わらず失望。
覇気が無さ過ぎるのは俳優として致命傷だと思うが
せめてシッダールタの知性位は表現して欲しい。演技というより役者の雰囲気だけ過ぎ。
ミゲーレ（シッダールタの恋人）の水樹奈々は悪くないがもいつもの演技すぎる。（ホントに声優？）
ミゲーレの張付けシーンは皇と皇子の迫力の無い演技せいでシーン台無し。
永井一郎は波平の顔が浮かぶ。こうなるともう俳優と同じで観ている方としては困る。
吉永小百合のナレーションは聞き取りづらく、重要な事が頭に入りません。チャプラの母親役も声年齢的に不自然です。
XｰJAPANの起用が不明。タイアップとしても話題性も無く音楽的にも大して評価できない。
俳優勢はイマイチでしたが、脇を固める声優陣は手堅い印象。
主役であるチャプラの堺正人は意外と良かった。


時計を見ながら映画を見たのは久しぶり。タダでも辛い映画鑑賞となりました。
褒めるべき所が本当に少ないのですが、
猛烈な不快感と不消化感のせいで原作を読んでみようと思ったのが唯一の収穫かもしれません。

[smilelandさんの感想 · 2012年1月12日]

どうやら、三部作の第一作目らしい。

まだブッダに焦点が当たっておらず、カースト制に苦しむブッダの周りの環境を描いている段階にすぎない。

ブッダの思想・哲学は好きで、なぜそう考えるようになったかを記すためにはブッダの生きた時代を描く必要があることは理解できる。　だけど、週一のドラマでさえ前回の内容を忘れるような人間が多いのに、一年はあくと思われる映画で三部作とは。　私も、次作が出たときには、確実に今作の内容を忘れている自信があるし、流石に見直す気力もないと思う。七人の侍みたいに四時間の映画にして一気に見せたほうがブッダの為になる気がする。

映画なので、ブッダという「人」に焦点を当てているのだが、ブッダ自身が言っているように、人ではなく「思想」に焦点をあてて欲しかった。

仏教は複雑すぎるし、キリスト教の聖書にあたる書物が無いので理解しようと思ってもどこからどのように手をつけたらいいのかわからない。

正しい行いをしなさいとあっても、そもそも何が正しいのかわからないのだから困ってしまう。　その辺をある程度噛み砕いて、解説映画にならないようにうまく表現できたらいい映画になると思うんだけど、無理かなー。