戦場のメリークリスマス [DVD]

監督 : 大島渚 
出演 : デヴィッド・ボウイ  トム・コンティ  坂本龍一  ビートたけし  ジャック・トンプソン  ジョニー大倉 
  • 紀伊國屋書店
3.60
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感想 : 101
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  • / ISBN・EAN: 4523215036405

感想・レビュー・書評

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  • すごく〇〇、といったことはないのですが、定期的に観たくなる作品。
    ただでさえ人の心は薄い層がたくさんの感情が折り重なっているのに、そこに立場や環境等が加わってさらにややこしくなるし、一筋縄ではいかなくなる。それを暑苦しくなく静かにわからせてくれる映画。
    北野作品に似た独特の余韻が残るラストの空気感が好きです。今回も終わった瞬間涙がポロッと出てきました。

    本の行間を読む、の映画版だと思います。

  • MERRY CHRISTMAS, MR. LAWRENCE
    1983年 日本他 123分
    監督:大島渚
    原作;ローレンス・ヴァン・デル・ポスト「影さす牢格子」「種子と蒔く者」(『影の獄にて』収録)
    音楽:坂本龍一
    出演:デヴィッド・ボウイ/トム・コンティ/坂本龍一/ビートたけし
    https://oshima2021.com/

    1942年、日本統治下にあるジャワ島の日本軍俘虜収容所。ストイックで厳格なヨノイ大尉(坂本龍一)、暴虐ながら人間味のあるハラ軍曹(ビートたけし)らは俘虜たちの統率に苦心していた。俘虜ながら日本文化に通じており日本語堪能なロレンス中佐(トム・コンティ)は通訳を務めていたが、ある日彼と旧知のジャック・セリアズ少佐(デヴィッド・ボウイ)が収容所に連行されてくる。美しいセリアズの存在がヨノイ大佐の心を乱し…。

    クリスマスなので数十年ぶりに名作映画を観なおしてみる。いつ見ても坂本龍一の音楽がとにかく良い。役者としての演技力はもちろんイマイチだけど、アーティスト独特の異質な存在感があり、中途半端に演技の上手い俳優よりもこのキャスティングで正解だよなあと思わされる。今や世界のキタノにまでなった北野たけしが芸人ビートたけし当時に出演しているのも同様。上手い下手では語れない存在感がある。

    そしてなんといってもデヴィッド・ボウイ!!!とにかく美しい!!ヨノイ大尉が一目で心奪われるのも納得。花をむしゃむしゃ食うボウイ、ヨノイのうなじにキスして失神させちゃうボウイ、弟との回想シーンでの寄宿学校のボウイ、どのボウイも美しくてボウイ堪能映画としては最高峰でしょう。

    戦争映画だけれど、テーマは戦争ではなくもっぱら男たちの愛憎と友情。しかしそこから戦時という非常時の人間性がにじみ出てくる。セリアズとヨノイのカップルはもちろん美しいけれど、ハラとロレンスの交流もとてもいい。タイトルになっている台詞をラストシーンでいうのはハラ軍曹だもんね。なんだかわからないままその場面で涙が止まらなくなる。やはり名作。

  • ラストシーン。
    坂本龍一の楽曲「Merry Christmas Mr. Lawrence」と、たけしの「ローレンス!メリー・クリスマス。メリー・クリスマス!ミスター ローレンス。」でグッと来ました。

    ジャワの日本軍捕虜収容所で、連合国軍のひとりの捕虜が日本軍兵士にオカマを掘られます。
    収容所所長は被害者含め関係者全員の前で、兵士にハラキリをさせ処刑します。
    既に精神的に参っていた被害者の捕虜は、残忍な処刑にショックを受けて錯乱し、舌を噛み切ってしまいます。

    原作を読んだ時に大島渚監督が「やりたい!」と感じた通り、「日本人がキャラクター的にも哲学的にも大変よく描けている」作品なのでしょう。

    欧州的合理主義者のローレンス陸軍中佐。
    己を貫く不屈のリーダー セリアズ陸軍少佐。
    名誉を重んじる ヒックスリー俘虜長。
    粗暴だが卑ではない軍人 ハラ・ゲンゴ軍曹。
    武士道に生きる二・二六青年将校の同志 ヨノイ大尉。

    第二次世界大戦当時の、欧州の象徴のような人物たちと、日本人の象徴のような人物たちの衝突を描くことで、日本人とはナニモノなのか、を浮き彫りにするとともに、立場や宗教は違っても、嬉しいこと、怒ること、哀しいこと、つらいこと、楽しいことは、みな同じだよな、同じ人間なんだもの、ということが伝わる作品でした。

    主要人物に役者素人を多用しており、演技に魅了されることなく、作品テーマに集中できました。
    学生の自主制作みたいに、作品性で勝負するのだ!という意気込みを勝手に感じました。
    しかし、とにかくセリフが聞き取り辛かったです。
    日本語にも字幕が欲しかったです。


    日本人は決して降伏などしない。死を選ぶ。
    私は日本人ではない。
    お前は取調べで何故自分のことを語らないのだ?
    私の過去は私のものだからだ。

    わしの考えてることがわかるか?
    わかるとも。あんたはわかるのか?

    目隠しはいらない。
    バカモノ!目隠しは撃つ兵隊たちのためだ。
    死んでいくものの目を見ないで済む。

    ローレンスっぅ、こいつ、昼寝の邪魔をしおってぇ。
    せっかく今、満州でマレーネ・ディートリヒの腹の上に乗っかったところだったのに。

    戦争は男の友情を強める。
    しかし全ての兵士がオカマになるわけじゃない。

    私はあなたの助けになれる。
    日本軍人は敵に助けを求めたりしない!
    お前らは兵士じゃない。ただの捕虜だ。
    だから俺に助けを求めたりするんだ。恥を知れ。
    私は恥ずかしくは、ない。

    食事の改善はどうなった?
    君らの食事は我々と同じだ!
    ヨノイ大尉、どうか彼を理解してやってください。
    彼は名誉を重んじる男なのです。
    ゛彼らはみな名誉に生きた゛…か。
    だが俘虜長には他の男が望ましい。

    隊長殿がなんであいつを俘虜長にしたがるのかよく判らない。お前理由知っているか?
    知らない。
    知ってるはずだ、答えろ。
    彼が、生まれつきのリーダーだからだろ。

    ローレンス、お前は何故死なないんだ。ん?俺はお前が死んだら俺はもっとお前が好きになるだろう。お前ほどの将校が何故こんな恥に堪えることができるんだ。何故自決しない?
    我々は恥とは思わない。捕虜になるのも時の運だ。我々も捕虜になったのを喜んでいるわけではない。逃げたいし、また、あなたと戦いたい。
    嘘をつけ、屁理屈を言うな。
    いや。最後には勝ちたい。このターンが最後ではない。道はこれから。自殺もしない。
    死ぬのが怖いだけだよ。俺は違う!俺はな、17歳で志願して、入営する前の晩に村の神社にお参りして以来、ハラ・ゲンゴはな、御国に命を捧げているんだ!
    うん、しかし……あなたは死んではいないよ。

    変な顔だ。でも目は美しい。

    神に近付く気なんだよ。彼らは過去に生きている。
    救われんな。

    お稽古中、申し訳ございません。
    最近稽古が少々激しいということで心配しております。
    それに、あまりの気合の鋭さに俘虜が動揺しております。

    誰がやった?誰かを罰せねばならん。
    相手が無実でも償いをさせるのか?
    そうだ。
    つまり罪は必ず罰せられねばならず誰でもいいのか?
    そうだ。
    つまりわたしは死んで君の秩序を守るのだな?
    その通り。君は私のために死ぬのだ。

    日本人は焦ってた。
    個人では何も出来ず、集団になって発狂した。
    殴らんでほしい。
    私は個々の日本人を憎みたくない。

    ハラ軍曹、あなたもやっぱり人間だ。
    んふっ、うはっはっは!ローレンスさん、ファーザル・クリスマス。ご存知かな?え?
    知ってますよ、ハラさん。ファーザー・クリスマス。サンタクロースのことですね。
    うふっはっはっは、そうそう、おいら?おいら!わたし!ファーザル・クリスマス!わたし、ファーザル・クリスマス。ファーザル・クリスマス!
    ファーザー・クリスマス。
    へぁ、うはっはっはっはっ。ファ、ファーザー・クリスマス!あっはっは!……はぁはぁ。はっはっはっははは。……この男と一緒に帰ってよろしい!
    メリー・クリスマス。
    いっひっひっひっ、あっはっはっはっ、はははは
    ありがとう
    っはっはっは……止まれっ!……メリー・クリスマス、ローレンス。メリー・クリスマス。

    西も東もない。立場も、人種も。
    人類共存、共感の奇跡を感じさせる音楽だから、坂本龍一の「Merry Christmas Mr. Lawrence」は感動するのですね。

    4年後……1946年

    やはり来てくれましたね、ミスター ローレンス。
    英語を?
    ほんの少しです。どうぞ、かけてください。
    連絡を貰えて良かった。
    明日の朝です……。
    私なら今すぐあなたを自由にして家族のもとへ帰す。
    ありがとう。覚悟はできています。
    ただひとつ。私のした事は他の兵隊と同じことです。
    ……あなたは犠牲者なのだ。かつてのあなたやヨノイ大尉のように、自分は正しいと信じていた人々の。
    もちろん正しい者などどこにもいない。
    ……セリアズのことを?
    不思議なことに、夕べ彼の夢を見ました。
    夢を?……私はヨノイ大尉からセリアズの髪を預かりました。日本の彼の村へ持ち帰り神社に奉納してくれと。
    残念です。大尉は終戦後、処刑に…。
    同感です。
    考えてみれば、セリアズはその死によって、実のなる種をヨノイの中に蒔いたのです。
    ……あのクリスマスのことを覚えていますか?
    覚えています。
    いいクリスマスでした。
    素敵なクリスマスでした。あなたは酔っていた。
    ははは。
    はっははは。
    たぶんこれからも酔い続けますよ。
    サケは素晴らしい。
    サンキュー、ファーザー・クリスマス、サンキュー。
    ……勝利がつらく思われるときがあります…グッバイ、ハラさん。神の恵みを。
    (立ち去るローレンス)
    (蛮声で呼び止め、笑顔を見せるハラ。)
    ローレンスっ!!
    メリー・クリスマス。メリー・クリスマス!ミスター ローレンス。

    大島渚監督の言葉です。
    日本人としては、相手を好きになっても、好きだと言いたくない。そのへんのことがいろいろドラマを生んでいくわけだけど、しかし本当はやはりことばを通じさせたい、心を通じさせたいと思っている、という人間同士の気持ちの葛藤が出て、最後は美しい理解に達すればいいと思ってるんですけどね。


    「戦場のメリークリスマス」
    Merry Christmas, Mr. Lawrence(1983、日本、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド)

    監督︰大島渚
    脚本︰大島渚、ポール・マイヤーズバーグ
    原作︰ローレンス・ヴァン・デル・ポスト「影の獄にて」収録の「影さす牢格子」(1954年)、「種子と蒔く者」(1963年)
    製作︰ジェレミー・トーマス
    音楽︰坂本龍一
    撮影︰杉村博章(撮影)、成島東一郎(撮影監督)
    編集︰大島ともよ
    製作会社︰レコーデッド・ピクチャー・カンパニー、大島渚プロダクション
    出演︰
    ジャック・セリアズ陸軍少佐︰デヴィッド・ボウイ(青年期)/ クリス・ブラウン(少年期)
    ヨノイ大尉(レバクセンバタ俘虜収容所所長)︰坂本龍一
    ハラ・ゲンゴ軍曹︰ビートたけし
    ジョン・ロレンス陸軍中佐︰トム・コンティ
    ヒックスリー俘虜長︰ジャック・トンプソン
    拘禁所長︰内田裕也
    イトウ憲兵中尉︰三上寛
    カネモト朝鮮人軍属 - ジョニー大倉
    カール・デ・ヨン オランダ軍兵士︰アリステア・ブラウニング
    ウエキ伍長︰飯島大介
    ヤジマ一等兵︰本間優二
    ゴンドウ大尉︰室田日出男
    軍律会議通訳︰戸浦六宏
    フジムラ中佐(軍律会議審判長)︰金田龍之介
    イワタ法務中尉(軍律会議審判官)︰内藤剛志
    軍律会議検察官︰石倉民雄
    俘虜収容所勤務の兵︰三上博史、車邦秀
    セリアズの弟︰ジェイムズ・マルコム
    あらすじ︰
    1942年、ジャワ。山岳地帯の谷間レバクセンバタに日本軍の浮虜収容所がある。まだ夜が明けきらない薄闇の中日本軍軍曹ハラは、将校宿舎に起居する英国軍中佐ロレンスを叩き起こし、閲兵場に引き連れて行く。広場にはオランダ兵デ・ヨンと朝鮮人軍属カネモトが転がされていた。カネモトはデ・ヨンの独房に忍び込み彼を犯したのだ。ハラは独断で処置することを決め、万一の時の証人として流暢に日本語を操るロレンスを立ち合わせたのだった。そこへ、収容所長ヨノイ大尉が現れ、瞬時にして状況を察した彼はハラに後刻の報告を命じて、軍律会議出席のためバビヤダへ向かった。

    バビヤダ市内の第16軍拘禁所にある法廷では、英国陸軍少佐ジャック・セリアズの軍律会議が開廷された。ヨノイは魔に魅入られたかのように異様な眼差しでセリアズを凝視する。

    セリアズはレバクセンバタ浮虜収容所へ送られてきた。ヨノイはハラに、セリアズをすぐに医務室へ運ぶよう命令する。そこへ浮虜長ヒックスリが連れてこられた。ヨノイは彼に、浮虜の内、兵器、銃砲の専門家の名簿をよこせと命ずるがヒックスリは、敵に有利となる情報を提供するわけにいかないと拒否する。

    ある日、ヨノイの稽古場にハラが現れ、気合の鋭さに浮虜が怯えているため、ロレンスが面会を申し入れていると告げる。そんなロレンスに、ヨノイは唐突に、自分は二・二六事件の3ヵ月前満州に左遷されたため決起に参加できず、死に遅れたのだと語った。そして、その場でカネモトの処刑をいい渡した。

    処刑場にはヒックスリ以下浮虜側の上級将校も強制的に立ち会わされ、ハラがカネモトの首を切り落とした瞬間、デ・ヨンが舌を噛みきった。「礼を尽くせ」とヨノイは命ずるが浮虜たちは無視する。激昂したヨノイは、収容所の全員に48時間の謹慎と断食の〈行〉を命じる。

    無線機を持ちこんでいたという理由でロレンスとセリアズは独房入りとなった。壁越しに話をする2人。ロレンスは、たった2度しか会わなかった女性の思い出の中へ。セリアズは、耳許に内向的だった弟の歌声を聞く。衛兵の長靴足音が聞こえ、2人は司令室に連行された。そこには酒で上気し「ろーれんすさん。ふあーぜる・くり~すます」と笑いかけるハラがいた。ハラは2人に収容所に帰ってよいといい渡す。ハラは自分をサンタクロースだと言い、これはプレゼントだと言う。

    情報提供の要求に応じようとしないヒックスリーに対し業を煮やしたヨノイ大尉の命令で浮虜全員が閲兵場に整列させられたが、病棟の浮虜たちがいない。全員揃っていないと分かると病気の捕虜も並ばせるよう命じたが、これはジュネーヴ条約に違反していた。重症の捕虜が1人倒れて死亡する。病人たちをかばうヒックスリに、激怒したヨノイは再び「兵器の専門家は何人いるか」と問う。「おりません」とヒックスリ。ヨノイは「斬る」と軍刀を抜いた。そのとき、浮虜の群からセリアズが優雅に歩み出、両手でヨノイの腕をつかむと、ヨノイ大尉に抱擁し頬にキスをした。予想外の展開にヨノイ大尉は驚き後ろに崩れ落ちる。

    その後、ヨノイ大尉は更迭され、新任のゴンドウ大尉が着任した。閲兵場の中央に深い穴が堀られ、セリアズは首だけ出して生き埋めの刑に処された。セリアズは弟のことを思い出しながら衰弱死し、その夜中にヨノイ大尉は垂れた頭のみが地上に露となった無残な形相のセリアズの元へ密かに歩み寄り、彼の髪を一束切り、目の前で敬礼し、切った髪を持って立ち去った。

    時は流れ、1946年、戦犯を拘置している刑務所にロレンスがやってくる。処刑を翌日に控えたハラに面会にきたのだ。ロレンスは、ヨノイから日本の神社に捧げてくれとセリアズの遺髪を託されたことを告げる。クリスマスの日の思い出を語り合う二人。やがてロレンスは出口へ向かう。その瞬間、収容所で何度も聞かされたあの蛮声でハラが「ローレンス」と怒鳴る。そして、振り向いたロレンスの眼前に「めりい・くりすます。みすたあろーれんす」と告げるハラの笑顔があった。

  • 「憎めない」と「憎まなくてはいけない」のあいだで。
    集団と集団が接触して生じた優劣は、必ずしも集団内の個人に浸透しきらない。
    だから相手に憤慨もすれば、許す気も起きる。しかしその揺れを状況は認めない。
    集団の論理は、人びとのあいだに想像の境界を敷いて細かく分断すると同時に、境界内部の連帯を強固たらしめる。愛は神聖化し、憎は外部に向け徹底される。愛憎半ばする朧げな感情は、認められない。

  • 1983年公開、今や古典的作品となるのか、大島渚監督の作品。
    4Kリマスターされたのを映画館で観てきました。

    第二次世界大戦中、インドネシア・ジャワ島の捕虜収容所を舞台にした作品。
    中心人物は北野武演じる単純で軍律を絶対視するいかにもな日本兵ハラ軍曹、坂本龍一演じるエリート将校のヨノイ大尉、
    日本語を話し、ハラ軍曹をはじめとする愚直に非人道的行うを繰り返す日本兵にもあくまで人間として接し、交渉を試みるローレンス英国陸軍中佐。
    そして捕虜として捕まったセリアズ英国陸軍少佐を演じるのがデヴィッド・ボウイ。決して折れない芯の強さを持ち、その堂々たる振る舞いでヨノイ大尉を困惑させる。
    デヴィッド・ボウイはすべてにおいて美しすぎて、同性愛的なメッセージが強くなってしまっているような気もしました。

    戦争映画でありますが、戦闘シーンはありません。捕虜の収容所という特殊で極限的空間での、価値観・死生観の異なる人間同士の折衝。絶対的かつ原理主義的な日本軍の振る舞いに疑義を突きつけるセリアズ少佐と、正面から突きつけられたヨノイ大尉の迷い。
    セリアズの行動に動揺するヨノイ大尉、”行”の命令に違反したセリアズ、ラジオの持ち込みの疑いをかけられ処刑を言い渡され激高するローレンス、疑念を晴れたセリアズとローレンスに酒を飲み陽気に釈放を言い渡したハラ軍曹。

    釈放を伝えられ「ハラ軍曹、あなたもやっぱり人間だ」というローレンスの言葉がこの映画の主題でしょうか。セリアズ少佐がヨノイ大尉の頬にキスをするシーンは色々含みすぎ。戦争と、ルールと、もっと根本的なヒューマニズムと。
    英語タイトルの「Merry Christmas, Mr. Lawrence」はラストシーン、BC級戦犯として処刑が決まったハラ軍曹が、ローレンスにいう言葉。
    そうだよなあ、やっぱり人間だよなあ。と思う映画でした。観てよかったです。

  • 中学生ではじめて見て、衝撃のあまり口も利けなかった。・・・純情だったあの頃(笑)。戦争映画なんか大嫌いですが、これだけは特別です。本作でデビッド・ボウイに惚れてしまったとか、音楽が素晴らしいとか、ビートたけしの真の才能にびっくりしたとか。・・・個人的に大好きすぎる映画。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「本作でデビッド・ボウイに」
      私の知り合いに、そのような方が一杯居るコトを考えても、そうなるのが自然だと思います。
      しかしボウイが不運なのは...
      「本作でデビッド・ボウイに」
      私の知り合いに、そのような方が一杯居るコトを考えても、そうなるのが自然だと思います。
      しかしボウイが不運なのは、本作と「地球に落ちて来た男 」くらいしか素晴しい作品が無いに等しいコトかなぁ、、、でも格好イイです!
      2013/03/01
  • 1942年、日本統治下にあるジャワ島レバクセンバタの日本軍俘虜収容所で、朝鮮人軍属カネモト(ジョニー大倉)がオランダの男性兵デ・ヨンを犯す。日本語を解する俘虜(捕虜)の英国陸軍中佐ジョン・ロレンス(トム・コンティ)は、ともに事件処理にあたった粗暴な軍曹ハラ(ビートたけし)と奇妙な友情で結ばれていく。
    一方、ハラの上司で所長の陸軍大尉ヨノイ(坂本龍一)は、日本軍の背後に空挺降下し、輸送隊を襲撃した末に俘虜となった陸軍少佐ジャック・セリアズ(デヴィッド・ボウイ)を預かることになり、その反抗的な態度に悩まされながらも彼に魅せられてゆく。
    同時にカネモトとデ・ヨンの事件処理と俘虜たちの情報を巡り、プライドに拘る空軍大佐の俘虜長ヒックスリー(ジャック・トンプソン)と衝突する。東洋と西洋の宗教観、道徳観、組織論が違う中、各人に運命から届けられたクリスマスの贈りものが待っていた。
    捕虜から敵の情報を得るために厳しい待遇をするヨノイ大尉と障害者である兄に酷いことをした罪悪感を持ちながら誇り高いセリアズ、ハラ軍曹とローレンスの信念も民族も違う者同士の対立と友情そして贖罪のドラマを丁寧に描いた傑作戦争映画。
    中盤とラストに彼らに訪れたクリスマスの贈り物が、切な過ぎます。
    「メリークリスマス、Mr.ローレンス」

  • デヴィッド・ボウイがイケメン。

    一般人を囚人役と看守役に分けて生活させると…っていう実験を扱った映画があったけども、この映画の日本兵と捕虜たちも同じような関係だわ。みんなちょっとずつおかしくなっている。

  • 昭和映画、そして大島渚監督の凄さを感じられる作品でした。
    大島作品らしい、ほんのりとした同性愛の香り、上手すぎない演技で「本当の人間」を演出する手法が、この作品を有名にしている要素なのは確かだと思います。
    北野武も坂本龍一も演技がイマイチと評されますが、大島作品には演技している人間はいらないのです。「映画」として観るから彼らに違和感を感じるだけで、人間が一生懸命その場で生きているのであれば、それが正しいのが監督の世界観なのでしょう。なんだかんだで、あのラストシーンが観た人の心に種を撒いているのだから、してやったりでしょう。
    戦闘シーンがまったくなく、俘虜というテーマで日本の戦争と終戦を描いたのも、戦時を生きた監督なりの視点なのではないかと思いました。

  • 何回も冒頭だけ観てやめてしまっていたけど、ブラックレイン観てる途中で思い出して観たくなって勢いの二本立て。
    こんなに有名な作品なのにちゃんと観たのは初めて。初めてのことが多い。セブンアップも昨日初めて飲んだ。

    これが坂本龍一?!美しい…
    観ながらなぜか二重整形のことを考えていて、ラストシーンを観て片目だけ一重な不完全さも美しくて愛せるなと思った。

    誰も誰のことも恨んでなくてファンタジーだとしても美しい話だった。愛についての話だと感じた。

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