ジョニーは戦場へ行った [DVD]

監督 : ダルトン・トランボ 
出演 : ティモシー・ボトムズ  キャシー・フィールズ  マーシャ・ハント  ジェイソン・ロバーツ  ドナルド・サザーランド 
  • 角川書店
3.96
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  • / ISBN・EAN: 4988111241108

感想・レビュー・書評

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  • スピルバーグ祭りから横すべりしつつ、『チャーリーズエンジェル』観たり
    『地球の静止する日』を観たりジョージ・パルの宇宙映画を観たりと
    関連作品を同時に観てますが、
    『戦火の馬』からの流れでキューブリックの『突撃』を観たので
    さらにその流れで、同じWWIものの『ジョニーは戦場へ行った』。
    ここからダルトン・トランボ祭りに移行します。
    ダルトン・トランボ祭りだけど、『オールウェイズ』で
    またスピルバーグ祭りに帰ってくるという。

    ちなみにダルトン・トランボ祭りの〆はもちろん、12月のNHK-BSの
    オードリー・ヘップバーン祭りの『ローマの休日』!


    『ジョニーは戦場へ行った』を知ったきっかけは、
    若松監督の『キャタピラー』を何年か前に観たから。
    この原案はキャタピラー=『芋虫』、乱歩ですけど
    もうひとつの先行作品がこの映画ということで。
    『芋虫』は1929年、『ジョニーは戦場へ行った』は1939年発表。

    '39年発表ということで、第二次世界大戦の始まった年。
    太平洋戦争の2年前。
    当時から反戦小説的な内容だったんじゃないかと思いますが、
    ダルトン・トランボさん本人が監督して映画化したのが'71年で
    ベトナム戦争の最中。なので完全に反戦映画。

    「まったく救いのない話」と聞いてたんだけど、そうかな・・・?と思いました。
    同時に「めちゃくちゃ怖い映画」とも聞いてたんだけど、そうかな・・・?と。
    いやたしかにそうなんですけどね。
    そうだけど、僕は怖いと感じなかったし、むしろ希望が持てる作品でした。
    面白いか面白くないかで言えば、たいして面白くなかったので
    最初は★4つにしたんだけど・・・
    一晩寝て朝目覚めて、「あっ!」と気付いて★5に増やしました。


    あのですね、これただの「反戦映画」じゃないですよね。
    もっと違う側面が同時に色々あって・・・
    観てる最中は人間讃歌や尊厳死の話だとも思ったんだけど、
    それでもまだ足りない。

    この映画は実存主義の作品なんじゃないですかね。
    安部公房とすげえ近いなあと思ったんですよ。
    あんまり詳しくないですけど、シュルレアリスムと実存主義って地続きで、
    安部公房もそうだろうし、ダルトン・トランボさんって
    メキシコ逃亡時代はルイス・ブニュエルに影響されたと言われてます。
    だから、シュールと実存主義ってキーワードで全部説明がつく気が。
    カフカっぽいし、神・・・キリストは無力なんです。
    ドナルド・サザーランドがちゃんと大工仕事してて面白いんだけどw

    そして、安部公房と同じくアイデンティティーを消失しますよね。
    手足や表現手段を失って、名前すら番号で呼ばれる。
    でも考えるんです。認識するんです。
    その認識が現実なのか、夢なのか・・・夢が現実なのか混濁するという
    認識するから脳内に夢という現実がある。
    『砂の女』みたいに脳内に監禁されてるんですよ。

    実存主義というとちょっと難しいので、
    個人的には「青春映画」なんじゃないの?とすら思い始めました。
    単純な反戦映画ではないのは、ここのメッセージ性。
    何にもできないけど、でも何かやるんだよ。何かやれよ!!
    声を挙げろよ!!行動しろよ!!っていう。
    そうじゃないと、この世界(ベトナム戦争)はずっと続くんだぞ!!
    肉塊と同じなんだぞ!!
    そんな映画じゃないかなあ。


    原題は『Johnny Got His Gun』。
    これはWWI以降のアメリカの軍歌、募兵の謳い文句。
    アンクルサムの『I Want You for U.S.Army』みたいなもんですかね。

    だけど、僕はこの「Gun」の部分にひっかかってて
    「Gun」って一体何だろう?と考えてます。
    男性器の暗喩もあるんじゃないかなあ・・・。
    この映画ではもうひとつ、お父さんの釣竿も男性器の象徴として出てきます。
    釣竿=男性器=武器や兵器なのでは。

    途中でお父さんの釣竿を川に流してしまって失くしますよね。
    どこにあるかというと、インディアン(ネイティヴアメリカン)を
    殺して沈めたという湖の底に引っかかってるんですよ。

    これってアメリカの歴史そのものじゃないですかね。
    お父さん=アメリカそのもの、若者より前の世代なんです。
    で、そのアメリカがやってきたのは
    インディアンを武力で制してどんどん追いやっていって
    自分達の国を作ったこと。
    前の世代の古いアメリカ人が誇れたことって、
    このこと・・・武力で征伐したことしかないんです。

    でも、お父さんは釣竿(武力)を失くした息子(新世代の若者)を
    最後は許しますよね。「たかが釣竿じゃないか」って。

    無力な息子がやりたいことってのは、見世物なんですけど
    見世物って芸術なんかも実はそうで・・・
    トランボさん本人の、映画や文学という仕事もそう。
    何にも役にたたないなら、せめて芸術の世界に生きたい。さもなくば死を。
    そういう風に受け取ったんで、僕の中では青春映画なんです。
    もうほんとうに、ギリギリのところで生きてる青春映画。


    トランボさんはこういう映画脚本ばっかりやってると思いますよ。
    自由を奪われてる状況から脱出して自由を求める話。
    『ローマの休日』なんかもそういう話だし・・・。

  • この映画に関しては百聞は一見にしかずということわざの通りですね。
    いろいろ語らないでおきます。
    究極に忘れない痛烈な作品。
    すごい映画でした。

  • 制作年:1971年
    監 督:ダルトン・トランボ
    主 演:ティモシー・ボトムズ、キャシー・フィールズ、マーシャ・ハント、ジェイソン・ロバーツ
    時 間:112分
    音 声:英:モノラル


    第1次大戦にアメリカが参戦し、中西部コロラド州の青年ジョー・ボナムは、ヨーロッパの戦場へと出征していった。
    鼓膜を引き裂くような不快音をたてて落下してくる砲弾が炸裂し、大地がわれる。
    ジョーはいま、<姓名不詳重傷兵第407号>として、前線の手術室に横たわっている。
    延髄と性器だけが助かり、心臓は動いていた。軍医長テイラリーは「もう死者と同じように何も感じない、意識もない男を生かしておくのは、彼から我々が学ぶためだ」と説明した。
    こうして<407号>と呼ばれるようになったジョーは陸軍病院に運ばれた。
    出征する前夜のことを、ジョーの意識はかけめぐるカリーンは小さくて可愛らしい娘だった。
    彼女の父親の許しがあって、ジョーとカリーンは残り少ない時間を寝室で過ごす。
    そして出征の朝。
    駅には愛国歌が流れ、ごったがえしていた。
    涙を流すカリーンを抱きしめ、ジョーは軍用列車に乗った。
    ジョーはあの時、泥水のたまった穴の底で、砲弾にやられたのだ。
    軍医長の命令で<407号>は人目につかない場所に移されることになり、倉庫に運び込まれた。かゆかった。
    腕のつけ根あたりがかゆい。
    ところが何もないのだ。
    両手も、両足もないらしい。
    切らないでくれと頼んだのに。こんな姿で生かしておく医者なんて人間じゃない。
    ジョーは少年時代を思い出していた。
    父は貧しかったが特別な釣竿を作るのが好きで、いつも手を動かしていた。
    そんな平和な家庭にも不幸な出来事が起こった。
    ジョーが働くようになって間もなく父が死んだのだ。
    母は気丈に耐えていたが、幼い妹たちは床にうずくまっていた。
    顔をおおっているマスクを変える時、あらゆる神経を総動員してジョーはさぐってみた。
    舌がなかった。アゴがなかった。
    眼も、口も、鼻もなかった。
    額の下までえぐられているのだ。
    ある日、ジョーは何かが額にさわるのを感じた。
    そうだ、これは太陽だ。
    あのなつかしい暖かさ、そのにおい。
    ジョーは、野原で真っ裸で陽の光を浴びていたあの日のことを思いだした。
    ジョーは悪夢のような戦場での体験を思いおこしていた。
    その夜、塹壕の中で悪臭を放つドイツ兵の死体を埋めていた。
    その最中に、あの長い砲弾のうなりがのしかかり、強烈な白熱が眼前にとび散り、それきり暗黒の世界にしずみこんでしまった。
    <407号>は新しいベッドに移し変えられた。
    看護婦も変わった。
    その看護婦はジョーのために涙を流し、小瓶に赤いバラを1輪、いけてくれた。
    やがて雪が降り、看護婦は<407号>の胸に指で文字を書き始めた。
    M・E・R・Y。
    メリー、…そうか、今日はクリスマスなのか…ぼくもいうよ看護婦さん。
    メリー・クリスマス!
    クリスマスの夜ジョーの勤め先のパン工場は熱気にあふれていた。
    皆はダンスを楽しんだ。
    父はジョーにいった。
    何もいえないなら電報をうて、モールスだ。
    頭を使うんだ。
    その日、<407号>が頭を枕にたたきつけているのを見た看護婦は軍医を呼んだ。
    数日して、テイラリーと神父が倉庫を訪れた。
    頭を枕にうちつける<407号>を見た将校は「SOSのモールス信号です。」といった。
    将校は<407号>の額にモールス信号を送った。
    「君は何を望むのか…」「外にでたい。人々にぼくを見せてくれ、できないなら殺してくれ」上官は愕然とした。
    そして一切の他言を禁じた。それに対し神父がなじった。
    「こんな蛮行を信仰でかばいたくない。
    諸君の職業が彼を生んだのだ!」一同が去ったあと、1人残った看護婦は、殺してくれと訴えつづける<407号>の肺に空気を送り込む管を閉じた。
    しかし、戻ってきた上官がこれを止め、看護婦を追いだしてしまった。
    倉庫の窓は閉ざされ、黒いカーテンが全てをかくした。
    暗闇にジョーだけが残された。
    ぼくはこれ以上このままでいたくない。
    SOS、助けてくれ、SOS…その声なき叫びはいつまでもひびいている。

  • スターチャンネル無料放送にて。この映画は、メタリカの「One」のビデオでお馴染みですね。

    当時のメタリカはアルバムを4枚出して人気絶頂。でもビデオクリップを全く作らないという硬派なバンドで、世界中がメタリカの映像への飢餓感がマックスの状態で、満を持して放たれたのが「One」。本作「ジョニーは戦場に行った」の映像をフィーチャーした衝撃的な内容で、それは繰り返し繰り返し観たのです。

    まぁメタリカの話はどうでもよいのですが、とにかくずっと観たかった映画だったのです。内容はだいたい知っていたのですが、やはり衝撃的な映画でした。まず、手足も五感も全て失い、脳だけが機能している男による一人称の独白という設定が狂っています。この映画の主題を軽くまとめると「伝わらないことのもどかしさ」なんですが。映画のテーマとしてはよくあるものの(「ロストイントランスレーション」「バベル」なんかそうかな)、本作の絶望感は極北です。

    感受性の強い看護婦が彼の様子に気付き、指文字で「メリークリスマス」と書くところで、ようやく希望の光が見えて来るのです。この後の展開は、彼の絶望に気付いた彼女が彼を命を絶つのだろうと予想したのですが、そうではない虚無的な結末を迎えます。彼の「SOS」のリフレインが鼓膜に貼り付いて離れない。この無間地獄に救いはないのか…。

    そういえばブルーハーツの歌で「ジョニーは戦場に行った。僕はどこに行くんだろう」って歌詞がありましたね(また関係にない話)。

  • 公開当時高校生でクラスの朝の1分間スピーチで観てきた友人がとりあげてた。手足が無くなっても生きている兵士、という映画の宣伝は当時耳に入っていたが、こういう映画だったのか。この冒頭から顔に木枠で白い布に囲われた頭が出てきて、しかも頭の中の声が「一体どうした、あ、目も耳も舌も無い」と喋っている、思考しているシーンはじわじわと見ている者に不安な気分を高める。と同時に、なんともいえないやり場のない気持ちになっていく。

    軍医は脳の一部が動いているだけのもはや人間ではないモノとしてめずらしい事例だから生かす、といい、しかしジョニーは陽の光を感じると、懸命に思考する。思考していることは「生きたい」ということなのか。頭を振ってモールス信号で会話ができることが分かり、「自分が生きるには金がいるから、せめて見世物にして金をいくばくかでも稼がせてくれ」と願うジョニー。主体的に「生きよう」としている。が、拒否されると「殺してくれ」と願う。

    一転出征前の恋人との逢瀬。いかないでという恋人に「戦争には協力しなくちゃ」という意味の言葉をいうジョニー。原題のタイトル『ジョニーは銃をとった(Johnny Got His Gun)』は、第一次世界大戦時の志願兵募集の宣伝文句で、軍歌『オヴァー・ゼア』(Over There)でも有名になった「ジョニーよ、銃をとれ(Johnny Get Your Gun)」という呼び掛けへの痛烈な皮肉となっている、と検索には出てくる。

    原作者でもある監督のダルトン・トランボ、発表は1939年、第二次世界大戦前。あまりに反戦的ということで本は1945年に絶版・発禁処分。共産党員でもあったトランボは戦後1947年赤狩りにあい逮捕・禁固刑。刑期満了後、映画界からは事実上追放され、その後は偽名で脚本の仕事を続けていたが、1960年代に正式に映画業界に復帰、長年の宿願だった本作の映画化を実現させた。



    原題:Johnny Got His Gun
    原作:ダルトン・トランボ「Johnny Got His Gun」1939発表


    1971アメリカ 日本公開1973.4.7
    2020.8.29BSプレミアム

  • 反戦映画と銘打たれているが、それに止まらない。人間とは、他者との関係を構築し、さらに環境から情報を取得し、これを内外に放射することで生きていることを、こういう表現で描写できるのは凄いの一言。他に形容する言葉を持たない語彙の不足を嘆くばかりだが、強烈な印象を残す逸品である。

  • 父さんの釣竿を川に落とし喪失する パン工場 戦場に赴く前に一度だけまぐわい妊娠? 四肢喪失 メリークリスマスと身体に指を這わし伝える 死んだ敵兵の腐敗臭が気になり埋めに行った結果爆撃を受け瀕死の負傷 鼠 サーカスの見世物 モールス信号 殺して欲しいと懇願するが無為にされる 看護婦が見るに見兼ねて手を下そうとするが自殺幇助を止められる 愚かな行為

  • 四肢はもがれ身体は動かせず、意識があるのに意思表示できないので植物状態だと思われ、夜な夜なネズミに齧られてもどうすることもできない恐怖。どんなホラー映画よりおそろしい。

  • 2016/10/14/Fri. 10:30〜12:30
    イマジカBSにて視聴。

  • なぜ、死なせてあげない。

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