NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2012年 04月号 [雑誌]

制作 : ナショナル ジオグラフィック 
  • 日経ナショナルジオグラフィック社
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感想・レビュー・書評

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  • 2012年4月号の目次
    タイタニック 沈没の真実

    「不沈船」と呼ばれた豪華客船タイタニックが、大西洋に沈んでから100年。最新技術によって、沈没現場の全貌と、船の壮絶な最期が浮かび上がってきた。

    文=ハンプトン・サイズ

     1912年4月15日午前2時20分に沈没して以来、大西洋の深海底にひっそりと横たわるタイタニックの残骸。ナショナル ジオグラフィック協会付き研究者のロバート・バラードが1985年に発見して以来、さまざまな潜水艇が何度となくこの難破船を探査してきた。だが、これまでは船体の部分部分を撮影できただけで、あちこちに散らばった残骸の位置関係はよくわからなかった。

     しかし、2010年8月から9月にRMSタイタニック社などが最新鋭の無人探査機3台を投入した調査で、初めて沈没現場の全体像をとらえた。さらに、映画『タイタニック』のジェームズ・キャメロン監督のチームは、独自の探査で船内を詳しく撮影することができた。

     キャメロンは専門家チームと議論の末に、タイタニックが氷山と接触してから深海底に激突するまでの一部始終を再現。豪華客船の断末魔のすさまじい“苦悶”を明らかにした。「タイタニックのこんな無残な姿は見たくありませんでした」とキャメロンは話す。
    編集者から

     今回のタイタニック特集は豪華4本立て。まず本編では、沈没の一部始終と難破船の全貌を初公開。続いて、15年以上前から探査を続けるキャメロン監督が、深さ4000メートルの海底に沈むタイタニックの船内の様子を克明に語ります。3本目は日本版オリジナルの記事で、沈没事故の日本人唯一の生存者が書いた手記の内容を日本版編集長が解説。最後に、特製ロングポスターでタイタニックの最期と沈没現場を詳しく図解します。タイタニックに興味がなくても、思わず引き込まれる内容です。(編集T.F)

    群舞するフラミンゴ

    風変わりな容姿と一糸乱れぬバレエのような動きで、危険な世界をたくましく生き抜くフラミンゴたち。

    文=ナンシー・シュート  写真=クラウス・ニガ

     華やかな薄紅色の羽に大きなくちばし、ひょろりと長く伸びた首に、細く長い脚。フラミンゴは独特の容姿をもつ鳥として親しまれているが、その詳しい生態は意外とわかっていない。

     塩湖や干潟などに大きな群れで暮らす野生のフラミンゴは、仲間同士の掟(おきて)にきわめて忠実だ。求愛のダンスを披露するときも仲間と一緒、ヒナが生まれれば共同の“保育所”に集めて子育てをする。そして危険を感じると一斉に、一糸乱れぬバレエのような動きを見せる。この集団プレーこそが、危険に満ちた世界で生き残る秘訣なのかもしれない。
    編集者から

     オープニングを飾るのは、絵本「ウォーリーを探せ!」さながらのフラミンゴの大群。集団性の強い野生のフラミンゴが、上空の飛行機に驚いて一斉に同じ方向へ動いた瞬間の写真です。でも、「もしかすると違うことをしているやつがいるかも?」と思って目を凝らして見てみると……いました。走りながら後ろを振り返っているフラミンゴが1羽、反対向きにぼーっと突っ立っているのも数羽います。まるで“子どものらくがき”のようなコミカルな姿のフラミンゴたちをお楽しみください。それにしても、フラミンゴの目って怖い。(編集M.N)

    K2 頂をめざして

    エベレストより登頂が困難と言われる世界第2の高峰K2に挑んだ女性登山家。その壮絶な闘いを記録する。

    文=チップ・ブラウン  写真=トミー・ハインリヒ

     カラコルム山脈にそびえる世界第2の高峰、K2。エベレストよりも登攀が困難と言われ、多くの死者を出しているこの山に、オーストリアの女性登山家ゲルリンデ・カルテンブルンナーが、女性初の無酸素登頂をめざして挑んだ。中国のカシュガルからK2の麓に至り、至難の北壁から標高8611メートルの頂上へと、長く厳しい道のりが続く。ゲルリンデの半生を振り返りながら、その壮絶な闘いを記録する。

    訂正
     2012年4月号の特集「K2」に誤りがありました。104ページで「2010年のエベレスト登頂数は延べ5104回だが、K2はわずか302回」としましたが、数字は2010年単年のものではなく、同年までに各峰に登頂した総回数でした。お詫びして訂正いたします。
    編集者から

     ドキュメンタリーの王道を行く本特集、一気に読み終えました! 最後にビバークした場所や北壁を登っていく豆粒ほどの隊員たちの写真が、ナショナル ジオグラフィック 英語版のウェブサイト(英語) で見られます。「え! こんなところにいたの!?」と驚くこと請け合い。本誌と併せてぜひご覧ください。(編集H.O)

    生き続ける仮面の魂

    アフリカと黒人奴隷の子孫が生きるハイチでは、伝統的な仮面舞踏が今も暮らしの中に生き続けている。

    文=キャシー・ニューマン  写真=フィリス・ガレンボ

     写真家で美術の教授でもあるフィリス・ガレンボはアフリカ大陸と黒人奴隷の子孫が暮らすハイチで、仮面を着けて踊る人々を撮影し続けている。宗教の儀式や社会的儀礼などで行われる仮面舞踏には、神聖さや伝承、風刺が込められているという。伝統的な仮面や新しい要素を取り入れた仮面など、現代に生き続ける仮面舞踏の世界を訪ねてみよう。
    編集者から

     なんとも風変わりな仮面が面白い特集です。アフリカとハイチで“現役”の仮面舞踏が紹介されていますが、ガレンボは文化人類学的なアプローチというより、仮面の美に焦点を当てているように思いました。伝統的な部分と新奇な部分、こうしてアップデートされることで、仮面舞踏は今に生き続けられるのだろうな、と感じました。ガレンボの著作『Maske』には、こうした仮面が100点以上も紹介されているといいます。こちらも見てみたいですね。(編集S.O)

    ブラジル 逃亡奴隷の闘い

    かつてジャングルに隠れ里を築いたブラジルの逃亡奴隷たち。数世紀にわたる彼らの闘いを追った。

    文=チャールズ・C・マン、スザンナ・ヘクト
    写真=タイロン・ターナー

     ヨーロッパ人はかつて南北の米大陸に、アフリカから多くの黒人奴隷を連れてきた。奴隷制が行われた時代は数世紀に及び、農園や鉱山での過酷な労働に耐えかねた奴隷たちは次から次へと逃亡、奥地へと逃げ込んだ。「マルーン」と呼ばれた彼ら逃亡奴隷たちは、先住民とともに各地で共同体を形成していった。

     迫害と差別の後には忘却が訪れた。ブラジル奥地に形成された逃亡奴隷の集落「キロンボ」では、忘れ去られた奴隷たちの末裔がひっそりと暮らしていた。ところが、アマゾン川流域に開発の手が及ぶと、鉱山開発や森林伐採の横行とともに、長年暮らした土地を追われる住民が続出。土地の所有権を求めて、抗議の声が上がりはじめた。ブラジルではここへ来てついに、彼らの存在が認められつつある。自由な暮らしを求め、人間としての権利を求めた彼らの、数世紀にわたる闘いの歴史をひもとく。
    編集者から

     「奴隷制なんて遠い昔の話でしょ」。島国日本でのほほんと暮らしているうちに、ふと気づくとそんな感覚に陥っていたりします。そんな生ぬるい考えを、この特集は吹き飛ばしてくれます。現在、ブラジルにはかつての逃亡奴隷が築いた集落が5000カ所以上もあると言われています。多くの集落がアマゾン流域に集中していて、その面積は少なくとも30万平方キロ。日本の本州と北海道を合わせた広さにほぼ匹敵する規模です。ジャングルの中で歯を食いしばって生き延びた逃亡奴隷とその子孫たちの闘志と生命力を感じずにはいられません。(編集M.N)

  • タイタニック、フラミンゴ、K2、仮面、ブラジル逃亡奴隷

  • 今年は、タイタニック号の悲劇から100年目に当たるそうで。
    水深4000メートルの深海底に眠るタイタニック号。

    氷山に接触してから沈んでゆくまでに、およそ2時間40分。
    乗客は2208人。一体どんなドラマがあったんだろう。。。
    とても読み応えのある特集記事でした!

    仮面の特集も面白かったです。

  • もう5月号は出ているが、これは前月の号。

    ・タイタニック 沈没の真実

    今年はタイタニックの沈没事故から100年目にあたるそうで、タイタニックと同じルートを通る追悼ツアーのニュースも目にした。

    今号の表紙は海に沈んだタイタニックの船体の写真だが、2つ折りになっているのがなんとも奇妙。
    ・・・というか初めて見た。

    海底のタイタニックの船内の写真とオリンピア号(タイタニック号の同型船)の同じ部分の写真が並べて掲載されているページが印象的。
    一方が「死」
    一方が「生」
    何とも不思議な、というより不気味な感じだ。

    ところで、タイタニック号にはただ一人、細野正文、という日本人乗客が乗っていたそうだ。
    その人は、元YMOの細野晴臣の祖父との事。

    ナショナルジオグラフィックのサイトに細野晴臣氏へのインタビューも載っている。
    http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/article/20120330/304047/
    (本人は祖父が亡くなった後に生まれているので、直接の面識はない)

    それによると祖父に対しては「他人を押しのけてまで生きて帰った卑怯者」という中傷があったらしい。
    非常時の判断を平常時の状態にいる者がどうこう言う筋合いはないだろう、と思ったが「時代背景」というものもあったようだ。
    (幸い、映画「タイタニック」撮影時の調査の際、脱出時の祖父の行動を記録していた資料が見つかり、まったくの言いがかりだった事が証明された)

    そう言えば、タイタニック号は当時「絶対、沈まない船」と言われていたそうだが、沈没した。
    どこかの国にも「絶対、安全な”アレ”」が事故を起こした。
    教訓になってなかったようだ。

    ・生き続ける仮面の魂
    アフリカや黒人奴隷の子孫が住む地域に残る伝統的な仮面舞踏祭のコスチュームの写真を集めた記事。

    単純にデザイン自体もユニークだが、仮面を着ける事で、外見も内面も普段と違った存在になる、というのが面白い。
    演じているのではなく、「何か」になっているらしい。

    日本の祭りでも仮面を着けた踊りを目にすることはあるが、それも「何か」になっているのだろうか。

  • 仮面の魂とフラミンゴの写真が美しい。
    女性登山家のK2登山、おもしろい。

  • タイタニック沈没の状況を最新の海中探査から解明していて、興味深い。潜水撮影された現在のタイタニックの光景に余りにハッキリ鮮明に映し出されておりビックリした。

  • 大特集のタイタニックより
    『群生するフラミンゴ』
    『生き続ける仮面の魂』
    『ブラジル 逃亡奴隷の闘い』
    の記事が印象深い。

    フラミンゴ特集は、写真が秀逸。フラミンゴは未だ生態不明な点が多く、例えば片足で立つあのポーズもまだ解明されていないのだとか。

    アフリカの仮面舞踏特集も写真がすごい。ユーモラスな仮面とコスチュームから、強い美と迫力を感じた。

    ブラジルの逃亡奴隷の集落「キロンボ」の土地所有問題を巡る闘い。
    涙しながら読んだ。今後どうなっていくのだろうか。

  • 書評を読もうと新聞を開いたら広告が載ってたので、家庭内で借りて読了。特集がタイタニック号だったから。

    映画『タイタニック』(97年の新しい方)を監督したジェームズ・キャメロン、ナショナル・ジオグラフィック協会付き研究者ーー による探査のおかげで、100年経ってようやく全貌がみえてきた、というのがメイン。
    調査はせず遺物だけを回収し展示し莫大な利益を得、非難を浴び続けてきたRMSタイタニック社による、ラスヴェガス・ルクソールホテルの展示室の話題。経営陣が変わり、タイタニック号の専門家を雇い入れ、調査にも出資貢献するように方向転換したおかげで、キャメロンの調査技術が飛躍的に活かされたのらしい。
    別添挟み込みで、キャメロンチームによる沈没時のシミュレーション図まで付いている。小型潜水艦による艦内の様子も。映画『タイタニック』そのままの位置に今も金時計が残っているスウィートルームにはぐらりとした。
    伝えられてきたような静かなものではない凄絶な沈み方をしたらしき、海底4000メートルの水圧を受ける船の残骸のなかに、水差しとグラスがそのまま残っているなんて。

    特集の最後には、この客船に乗っていた唯一の日本人・細野正文氏が、救出された船の上でニューヨークに戻るまでに認めたという手記も掲載。"On board R・M・S Titanic" =「タイタニック号にて」と印刷された備え付け便箋がとてもこの世のものに思えない自分なのだった。
    彼の孫はなんと、YMOの細野晴臣。知らなかった。

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