- Amazon.co.jp ・電子書籍 (288ページ)
感想・レビュー・書評
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著者の作品は2作目。
1作目の慟哭と同じく、まんまと騙されました。
とある凄惨な事件について、いろんな人たちが立ち代わりインタビューという形で夫々の視点で語っていく話。
夫々の話がどう繋がるんだろう...と思ったら、最後綺麗にすべて収まるところに収まります。
そして最後まで読んで、タイトルが「愚行録」であることに納得。(一体誰の愚行なのか?)
人間だれしもちょっとズルくて見栄っ張りでバカだと思うんですが、そういう人間の嫌なところが染み出してくる描写がお見事です。
自分が糾弾されている訳では全くないし、語られているエピソードに似たような経験をした訳でもないのに、読んでいると精神にずしっと来るので、心身ともに元気なときに読むことをお勧めします。笑詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読んだこと絶対あるはず…と思ったのに読んでなかったのかな?
いやあ、さすがの貫井節。ほんと、嫌なことこの上なくて最高。慟哭で度肝を抜かれて以来、大好きで作家買いしているのだけどこれもまた、いい。
肩を持つように話してどんどん相手を貶める人っているものだけど、そのいやらしさが頭抜けて凄かった。挟まれる会話のオチも気持ちよく決まって、ほんとうに最高のイヤなミステリだったなあ、感服。 -
はたして誰の【愚行録】なのか。タイトルが秀逸。
ある凄惨な事件の被害者たちについて、知人たちが一人称で語っていく。これはどう展開していくのだろうという懸念とは裏腹に、事件の全貌が徐々に明らかになっていく。
この小説の軸となるのは恐らく事件の犯人解明ではない。特定のイメージの不確かさ、他人からの評価の曖昧さ、そしてさらに言えば、人間は誰しも醜く卑しい部分があるのだという自戒の提示ではないか。まさに「他人は自分を映す鏡」である。インタビュイーたちはそれぞれ「特定の人物に対するイメージ」を語るが、その人物像は語り手によって大きく異なる。それは人間の多面性を表すと同時に、語り手の人間性をも露呈させる。人間の評価というものは何とも身勝手で曖昧なものか。ただ生きているだけでこんなにも勝手なことを言われたらたまったもんじゃないとも思う。
ナレーションによる情景描写を挟まず語り手のセリフだけでここまで物語を展開できる作者の作力に脱帽。 -
映画版を観たので再読。いやあ巧いわ。このインタビューを使った叙述トリックを脚本化するのはさぞかし骨が折れただろうなあ。そう考えると、映画かなりよくできてたな。しかし貫井哲郎のエリート観もしょーもないな。普通のサラリーマンの2倍稼いでる程度のやつをエリートって位置付けにすんなよそんなの掃いて捨てるほどいるじゃん。登場人物がしょぼいのにエリートだって自分で言ってるのが痛々しかったよ…
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一家惨殺事件、怨恨か? 誰もが羨む家庭で、恨む人もいなさそうなのに!? 話は記者目線で夫、妻それぞれの過去を知る人達のインタビューを通して徐々に輪郭が見えてくる。すると出るわ出るわ、それぞれのグレーな過去。生まれもっての性(サガ)って誰にでもあると思うけど、それに振り回されすぎるとろくなことにならんよなぁ...と思ったよ。人間らしいっちゃ人間らしいけど、こういう話を読んでると気が滅入ってくるなぁ。最後まで救いのない感じでした。
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東京の郊外の一戸建てに住む四人家族全員が何者かによって惨殺される事件が起きて一年、その被害者夫婦の人柄を取材するインタビューの形式として話は進む。
夫は早稲田大学卒の大手不動産会社に勤めるやり手のサラリーマン、妻は慶應大学卒の落ち着いた雰囲気の美人。近所の評判も良い。誰からも恨まれそうにない家族を包丁で滅多刺しにした犯人の動機は怨恨なのか?強盗なのか?
インタビューに答えるののは家の近所に住むおばさん、殺された家族としての夫の会社の同僚、妻の大学時代の友人、夫の大学時代の恋人、妻の恋人…それぞれのインタビューを読み進めるうちに、幸せなエリート家族という平面的な像から、誰でもやっていたことかもしれないが、決して善人というわけでもない夫婦の姿が立体的に立ち上がってくる。
そして、インタビューの合間に挟まる、インタビュアーの妹と思われる女性の話は、この事件とどう絡むのか?…
今年の2月に妻夫木聡と満島ひかりの共演で映画化された「愚行録」の原作です。
映画が良くできていたので、原作もと思い読みました。映画独自の捻りもありますが、ほぼ原作通りに映画が作られていました。だから、原作も面白かった。
しかし、やはり、映画は誰がどういう言動をしたかがビジュアルに表現されるので、ある時点で、「そうか、この人だったんだ」とわかる瞬間の衝撃は映画の方が良かったかも。 -
これ健康な時に読まないと、マジで体調悪くなる。人間の嫌なところ、だけどリアルなところが、全部詰め込まれてる。映画のファンで先に実写化を見ているので、原作どんなふうに感じるかなぁと思ったら映画より薄気味悪かった。そう、人は人に対していろんな思いを抱いて生きるものだけど、「不快感を溜め込む」の対比が「愚痴を言う」でなければならないのしんどいんだよねぇ、陰口って回り回ってちゃんと本人や本人を愛する人に届くし、ちゃんと殺人の動機になったりする。人は誰からも忘れられず、誰の目からも逃れることができず生きていくものなのかもしれないと思った。行き過ぎた兄弟愛は美しさを超えた恐怖があったし、小説ならではの「描き切らない」面白さに想像力掻き立てられて、私の解釈でもう一本の映画を作りたくなったよ◎人間は恐ろしい、それを知らずして生きてはいけない。
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ジャーナリストがとある事件について、関係者に取材する形で進められる本作。
今回はレトリックには気づかなかったが、またまた登場人物の描写が非常にリアルで手触り感があるため、思わず一気読みしてしまった。
人は一体どんなきっかけで狂ってしまうのか、全くわからず、思わず恐怖を覚えてしまった。 -
まず事件の凄惨さに心がやられた。
一見いい人そうな人でも愚行を繰り返し周囲の恨みを買っているということが徐々にわかっていく様子は面白く、一気に読んでしまった。
ですがいまいちこの本のテーマが掴めず、ラストに関してはただ嫌なことを詰め込みましたという感じでちょっと興醒めしてしまった。
あと主人公(インタビューの聞き手)の取材目的を知ると、事件の取材は安易に受けてはいけないな、、と小心者の自分は思った。笑 -
いやーな後味が残る話だった。
氷川台の戸建てに住むエリート一家が惨殺される。近所の住人や被害者夫婦の友人達への取材を重ねる記者。取材される人々のインタビューの文字起こしにより各章が構成される。旦那は早稲田から三井不動産に入社した人物。妻は大学から慶應文系に入って美人、という設定。早稲田と慶應の学生事情が誇張されて描かれる。全て読むと冗長なので読み飛ばした。
こうして慶應に関するファンタジーが流布するのね、と苦笑した。霧で閉ざされてすることがない洞爺湖ウィンザーホテルにて読了。