渚にて 人類最後の日 (創元SF文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 十代の時以来ウン十年ぶりの再読。2009年の新訳で読み易くなっていたような気はする。自分にとって終末ものの原点とも言うべき一冊。核戦争の恐ろしさを初めて教えられたSFでもある。静謐な全体の印象は初読時から変わらないけれど、タワーズ艦長の高潔さは、社会人になり家族を持った今だからこそ心に響くものがある。不可避の死といかに向き合うかじっくり考えさせられる、まさに不朽の名作。淡々と綴られる平穏な日常生活がこれほど残酷に感じられたことはない。読了後、勢いでグレゴリー・ペックが艦長役の映画も(配信で)再観賞。こちらも良作。

  • 人類の終焉を描いた名作SFである「渚にて」。
    これは第三次世界大戦でソ連、中国がそれぞれ核攻撃を行った結果北半球が壊滅、生命が軒並み死滅し、さらにその高濃度の放射性物質が南半球へじわじわと押し寄せ、最後にオーストラリアのメルボルンにおいて地球にわずかに残った人間たちがどのようにこの運命を受け入れ、そして死んでいくかというのを実にリアリスティックに淡々と描写していく。

    オーストラリアが舞台というと、こういう終末期になった場合どうしてもマッドマックス的世界感になるようなイメージが個人的にあるのだけれど、この作品の中では非常に人々が粛々と、自暴自棄にもならず破滅的にもならず静かに運命を受け入れていく。

    作者のネヴィル・シュートは、その追いつめられていく人々の精神を不思議な二面性で描写している。精神の均衡を保つ為の自己防衛反応なのか、ちょっと理解しがたい部分ではあるのだけれど、あと数週間で誰もが死に至るということはしっかりと認識しているにも関わらず、来年の庭の心配をしたり、アメリカの家族にお土産を用意したりする、それも自分でも意味の無い行為だということを頭の片隅に置きながら、どうしてもそういう行動をとってしまう、という描写が非常にリアル。

    しかしその反面どうせ将来のことを考えても無駄だから、と努力するのを止めたり準備するのを止めたりいろんなことを諦めている様子もある。なんともそのあたりが不思議な感じだ。

    はたして実際にこういう状況下に置かれた場合、人類がどんな反応を示すのかは想像の枠外ではあるけれど、東日本大震災後の日本の様子を見ていると、核戦争などおこさずとも人類の終末を招くカタストロフは我々のごく近くに準備されているのかもしれない。

  • 事前にネタバレは知っていた謎の無線を探究するシーンで終わる、と想像していたのだが、その後に日常パートが続く。正直退屈だな、と思っていたが、最後のみんなが自死するシーンを読むと、日常の大切さが浮かび上がってくる。小松左京が「復活の日」を書いたのは、人類に希望を持たせたかったのだろうか??

  • 救いのない話で淡々と進む感じが新鮮だった。
    設定は無茶がありそうだけど、心情の動きとかの描写はなるほどと思わされた。
    コロナが本当にやばいところまできたらこういう世界観になったのかもしれない

  • 第三次世界大戦が起き、使われた核兵器により北半球が全滅。
    徐々に放射能が南下してくるオーストラリアを舞台にした話。
    天災やコロナなど、何が起きるか分からない世の中。悔いのないよう生きたい。

  • 日曜日の昼下がりのような、白い時間が過ぎていく。淡々とした筆致なので、平気かもしれないと思ったが、幕切れは想像以上に胸にくる。
    声高な怨嗟は描かれず、人々は愛するもの、取り組むべき仕事に没頭する。誰もが少しずつ歪で、利己的で、善性を持つ。死はすべてを悲しくしてしまう。

    主な人物の中で、タワーズの最期だけは描かれない。祖国へ帰る船が表紙に描かれている。

    こういう味わいの作品を面白いと形容するのはためらいを覚える。傑作というのはよく分かる。

  • 2019/1/27
    死んでいくのが切ないなあ
    故郷がなくなることは体験したことがないけど、やはり戻りたくなるもんだろうなあ

  • 核戦争によって北半球が全滅。南半球にも徐々に放射線の影響が忍び寄り…。
    原発事故を経て、ある程度の知識がある今の日本人からすると、少し首を傾げる表記もあります。しかし、終末が近づく中、不自然なまでに普段通りに生活する人びとの描写が、いびつに感じられれば感じられるほど、何とも言えない恐怖が読後に余韻として残ります。傑作の誉れに納得の一冊でした。

  • オリジナルは1957年刊行。原題"On the beach"は、巻頭に掲げられたT.S.エリオットの詩からとられているが、巻末解説によれば「陸上勤務となって」という慣用句でもある。

    核戦争後の世界を描くというのはSFとしてはステレオタイプでもあるが、1957年という年代を考えると、本作はそのはしりだったのだろうか。どちらかといえば牧歌的ですらある、取り残されたオーストラリアの光景にはじまり、物語が淡々と進む。たいした仕掛けもないまま終盤へ向けて息の詰まるような感じになってくのは見事。ここまで枯れた味わいのSFというのも珍しい。しかしながら、ある状況を設定してみて、そうした状況のなかで人々がどう行動するかを描く、というのはSFの王道でもある。

    メアリの言動がなんだかうちのカミさんを思わせてラストがますます切なくなる。

  • 素晴らしいの一語に尽きる。

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