日活100周年邦画クラシックス GREATシリーズ 鴛鴦歌合戦 HDリマスター版 [DVD]
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- Amazon.co.jp ・映画
- / ISBN・EAN: 4907953048768
感想・レビュー・書評
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Japan Sings!と題したJapan Societyでのミニ映画シリーズ、三日目、四本目、唯一の戦前作品として選出。 で、もっかい観てみたいと願っていたら叶いました!2年ぶりにこんどはMoMAにて。これも宮川一夫だったんだー…と素直な喜び。
片岡千恵蔵と志村喬の共演で過去に鑑賞した作品としては本作より3年先立って公開の「赤西蠣太」(1936) が記憶にある。志村喬の美声については今の街に棲みついて間もないころIFC CenterでやっていたWeekend Kurosawaという企画を通して「生きる」(1952) を鑑賞したことがその最後で、もうほぼ10年ぶりということになる。どちらも銀幕にて観れた聴けたということだからこうした引き出しがひとつづつ増えていっているのはありがたいことだ。
さて本作、片岡千恵蔵を前面に出した作品を撮るつもりが彼が大立ち回りをできない怪我をしたということで急遽彼の出番を少なくした別の作品を撮ることになったというのがそのいきさつだそうな。でもそれを準備と撮影とでかけた日数が2週間を切っていたということで、今回の上映前の紹介の言葉を借りれば「当時の日本の映画業界の成熟ぶりが伝わる」作品となっている。なかなかどうして質が高いのだ。
服部富子という女優さんが知り合いに似ててびっくり(笑) 実際には同じくJapan Societyで鑑賞させてもらった「支那の夜」(1940) にも出演していたということで、これが初お目見えではなかったという事実を後から知ると失礼いたしました!と言いたくなった。で、その美声にも魅了されたのだが、彼女からたどれる服部良一、服部克久のラインには鑑賞後のもの読みでほほうとうならされた次第。
「オペレッタ」という言葉の定義を知らない人にいきなり外国語の歌を聴かせるわけにもいかないとすればこれほど分かりやすい作品はない。それが1939年、国内初トーキー映画作品の発表から8年後という時期にこれほどまでの完成度に至っていたというわけだから、やはり1930年台の邦画は侮れない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
消臭プラグの殿のCM、あれ好きだったんですけど、あれはこの映画へのオマージュだったんでしょうか。最高に面白い。
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観ました。パブリックドメインです。
かわいくて陽気なオペレッタ時代劇でした。
序盤のディック・ミネのバカ殿の「ぼ~くはわか~い殿様~」から心を鷲掴みにされました。
歌は志村喬の方が美声でした。役は見る目の無い骨董好きのお父さんなのですが可愛かったです。茶碗の歌が好きでした。
女性陣が可愛いんだけど、武士の娘さん以外性格に難アリでそこも面白かったです。
片岡千恵蔵主演だったらしいですがお怪我されてたらしくてそこまで出てこない。でも涼やかな美男子。
てか、この時、片岡千恵蔵より志村喬の方が若かったって本当ですか…
ラストはえっそんなん!?とたいへん驚きました。お父さん無理してた。。
1939年の作品なので白黒ですが、色彩凄いんだろうな。ドットの番傘。
軽く観られて陽気になる素敵な映画でした。 -
たったの1時間がとにかく苦痛な作品でした。
ヒロインであるお春ちゃんを演じる女優さんが歌も演技も見た目も残念で、役柄の性格もかなり子どもっぽくてとても武士の娘には見えない。
ライバル役の女優さん2人が歌も演技も見た目も良いので、なんで彼女がヒロインなのだろうと大人の事情すら感じるほどでした。
せめて演技が良ければ見れたのだけど…。
ブリブリな棒読み演技で本当にキツかった。
よく「昔は良かった」というけれど、少なくとも演劇に関しては確実に今のほうが進化しているな…とわかった作品でした。
宝塚で舞台にするそうなので、そちらではせめてセリフにあるように「清く正しく美しい」作品になってもらうことを期待します。 -
オペレッタ時代劇? ディック・ミネや志村喬らのメインキャストの歌もとても達者だけど、アンサンブルキャストによる歌や合いの手もあって楽しい。ジャジーな音楽なのに、鼓や三味線なんかで演奏している様子も笑えます。
まだミュージカルという言葉が普及していなかったのかもしれませんが、思ったよりミュージカルしてる! なかなか楽しかったです。 -
モダンな時代劇オペレッタ、粋なメロディと粋な歌、志村喬の美声が白眉
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市川春代さん。
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最近観た映画の備忘録。
「鴛鴦歌合戦」。1939年公開、日本映画、モノクロ、69分。
脚本監督・マキノ正博。撮影・宮川一夫。出演・片岡千恵蔵、志村喬、市川春代、ディック・ミネ、ほか。
観るのは20年ぶりくらいで、多分2回目です。DVD、衝動買いしてしまいました。
この映画は、傑作です。未見の方は羨ましいです。
時代劇です。多分江戸時代で、場所は江戸でしょう。
ミュージカルです。というかオペレッタです。
多分ですけど、
●「オペラ」いわゆる舞台の歌い上げるアレですね。
●「オペレッタ」もっと軽い、短い、基本、バカバカしい喜劇です。
●「ミュージカル」もっとアメリカ的な、ダンスも総合的に含まれている感じの出し物です。
という区別なんだと思います。
詳しい人がいたら教えてくださいね。
これは「時代劇オペレッタ映画」です。
そんな映画ほとんどないんですけどね。
あえて言えば「ジャズ大名」とかになりますかね。アレも最高でしたね。
服部富子が美人町娘です。いきなり冒頭、服部富子を取り巻く男たちの唄からはじまります。合唱です。
バカバカしく、最高です。楽しいです。
ちなみに服部良一さんの妹です。元宝塚です。
そこにディック・ミネの殿様が登場です。「ぼーくーはとのさまー」と歌ってます。
もうここでノック・アウトです。素晴らしすぎます。
もうここで、映画は物語から大きく離陸しています。
ストーリーは、必要などうでも良さとシンプルさを備えています。
片岡千恵蔵が、美青年の裏長屋で自由に暮らす浪人です。
ブルジョアお嬢さんの服部富子と、貴族(武士)の深水藤子と、裏長屋の町娘の市川春代がみんな、千恵蔵に惚れています。
市川春代のお父さんが志村喬。気のいい骨董狂いの傘貼り浪人です。
この三人の娘の恋の鞘当て、ラブコメディ。
そこに、志村喬が骨董で騙されて落魄する危機。
そこに、おバカな骨董好きで女好きの殿様ディック・ミネが絡まります。
最後は、なんだか良く分からないけど市川春代を腕ずくでさらいに来た殿様の家来たちを、千恵蔵がやっつけます。
そして、千恵蔵は自由と気楽を愛して、出世と金持ちを憎んでいます。
最後はその思想に共感した市川春代と結ばれて終わりです。
歌って笑ってみんな仲良し大団円です。
これ、1939年ですから。当時のマルクス主義/社会主義的な思想の普及が偲ばれます。
だけど、映画としては素敵にバタ臭い。でも時代劇。セリフとか、超・いい加減に現代風。
もう、最高にオフビート。そして王道、オンビート。自由自在です。脱帽です。
撮影は、何でも時間がなくて千恵蔵が病気して、急遽適当に作った企画を1週間くらいで撮ったみたいで、ラフです。
だから、千恵蔵は意外と出番が少ないです。志村喬の方が、市川春代の方が多いのでは。
でも、バランスとしては千恵蔵の映画になってる。ちょっと番外編ぽい気もするけど。
B面映画の気楽さですね。それが全部、いい方向に回っています。
ズバっと長回し、セットアングル使い回し。自由闊達のびのび、偶然と奇跡と才能とゆとりと適当さ。
時間のなさ、予算のなさ、制限が思い切りの良さになってると思います。映画への愛情がキラキラと溢れています。
志村喬、美声です。そしてなんと、このとき片岡千恵蔵より若かったそうです。
笠智衆の老け役なんて目じゃないくらい、この人の老け役は年季が入ってますね。
日中戦争中、真珠湾の2年前にこの映画。
こういう映画を苦しい中でも作ることができる。
例えばそういうことだけが、僕にとっては愛国心です。
日本、素晴らしい。ありがとう、マキノさん。
マキノ映画を見ると、つくづく日本人が、日本が、日本語が、好きになります。
日本は、歌う楽しい自由で明るい素敵な国なのかも、しれません。
DVD買ったら、意外と音質も良かったです。
これ以上語るときりがないのでやめます。素晴らしいです。
ちなみに、マキノ雅弘(正博)というだけでいくらでも夜通し語れるんですけど、
一つ言うなら、小堀明男主演の東宝版「次郎長三国志」シリーズ。これ、至高の映画です。