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- / ISBN・EAN: 4988013168367
感想・レビュー・書評
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セイジの
言葉数少ないがゆえに、
その口から発する言葉は「重い」と思いました。 -
【ネタばれ注意】
一言で言えば"悲しさに溢れた映画"です。深い悲しみが霧のようにストーリーを覆っています。舞台は国道475沿いにあるドライブイン。主人公の"僕"は就活後の自転車旅行中、自動車との軽い衝突事故を起こし自転車が破損、旅を続けることができなくなり、仕方なくドライブインでお手伝いを始めます。そのなかで、社会に上手く適合できない人々との不思議な日々が始まります。
「悲しみが霧のように」と言いましたが、登場人物のひとりひとりが特段奇妙なバックグラウンドを持っている訳ではなく、それらは(一部を除き)社会的にありふれたものばかりです。離婚し子どもと会いたくても会えない女性、過去の夢を捨てきれず今も走る男、それを羨ましがりながらも一歩踏み出せない男、社会に適合しようとして虚しい日々を送る男、冷え切った夫婦、やりたいことの無い若者。でもそれらのバックグランドがたとえ社会的にありふれたものでも、その人にとってそれは逃れようのない悲しみの源泉であり、各登場人物に暗い影を落としています。そのような人々が夜になると一つのドライブインに集まり、お酒を飲み盛り上がる。それは、なんとなく辛い毎日を生きるために必要な「傷を忘れる時間」のように見えました。
このようなコミュニティのなかで、ドライブインの雇われ店長セイジは他の登場人物とはまた異色の、闇を持っていました。セイジには大切な妹がおり、彼の両親が彼らを殺そうしていることを知り、妹を守るために彼は両親を殺害し、少年院に入りました。しかし、セイジが少年院に入っている間に妹は死んでしまいました。両親が死んだ絶望を味わい、妹は死んだ。彼は社会という海から陸に放り出され、息苦しくも生きる魚でした。鑑賞中、セイジの立場に立とうとすると、胸が強く締め付けられるような痛みを感じました。
ドライブインの近くに住む小学生の女の子、りつこ。セイジはこの子と、時折時間を共にしました。妹の姿を重ね合わせながら。しかし、そのりつ子を悲劇が襲います。また同じ過ちを犯さないために、セイジは必死に行動に出ます。それは陸に打ち上げられた魚が最後の力を振り絞って身をねじるように。
セイジの最後の行動は、りつこへの強いベクトルを感じました。それまでセイジは自分の殻にこもり、妹を二度失う苦しみを味わうことから逃げていました。でも、りつこを前にしたとき、彼は殻を破り、りつこの心に迫ります。
映画は終始悲しみと緊張感に包まれ、目を話せる瞬間があまりありませんでした。また、たまに登場する自然の壮大さを映しているシーンでは目を奪われました。
相手の悲しみに迫る覚悟を行動で示す勇気。他人事ではなく、自分事として考えているよと、示すための最大の意思表示。他にもやり方はあったのかもしれないですが、セイジにとってはある種の刑罰という名の救済の意味合いも、あったのかもしれない。そういう意味では、ベクトルはりつこではなく、セイジ自身に向かっていたのかもしれないです。ただ、そこは観る人によって違うと思うので、他に観た方がいらしたら話してみたいです :)
人の持つ深い悲しみを見事に表現した、おすすめの作品です。 -
だいすきだ…かなしいけどすべて現実だからだいすきだ、夢なんていらない
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命とは?優しさとは?誠実さとは?世界とは?自分、とは?
生きていく上でそれらの答えはきっと必要なのにいつもハッキリした答えが出ない。答えが出ないからそのうち人間はそういったことを考えること自体やめてしまう。
けれどこの映画は問いかけてきた。
命とは?優しさとは?誠実さとは?世界とは?自分、とは?
逃げてばかりではいけない。答えは誰も与えてくれない。それじゃそれらの答えはどこに?だけどきっと生きていくうちに。 -
試写会で観ましたが、衝撃的な作品でした。
特にセイジが有る行動を起こすシーンがね・・・。原作を読んでから映画を観たので、怖くてドキドキしながら観てました。
セイジが撮った行動は正しかったのかは分からないけれど、それも1つの生き方なんだと思います。
自分の生き方について考え直すきっかけをくれた作品でした。 -
六本木の映画祭の時からずっと観たかった映画。伊勢谷監督作品。
西島さん、森山君の主演と豪華な作品で、その演技が素晴らしかった。
時間の流れの写し取り方、音楽と映像の感じ、すごく上手かった。
内容はとてもシンプルだけど、重くて根源的なテーマ。
救いは、等価な代償からしか生まれない。
それが人間だけでなくこの地球規模の救いと考えると
伊勢谷さんが進めているリバースプロジェクトともリンクしてくる。
心にずーんとくる映画だった。
でも、良い映画だと思う。 -
美しい風景と素敵な映画俳優たち、どこか意味を持たせた沈黙、こういった雰囲気の映画が好みなら楽しめる。
同じシーンを別角度から再度流したり、回想のシーンで突如モノトーンの画面になったりといった工夫も楽しめた。
初めて見たときは意味が繋がらなかったり、声が小さすぎて聞き取れなかったりしたが、見直してようやく分かるシーンもあった。緻密に計算されて作られた分かりやすく出来の良い映画もいいけど、こういったどこかスキのある映画もいいなあとふと思った。分かりやすい娯楽としてではなく、分かりにくい芸術にも少しずつ挑戦していきたいと思わせてくれた作品。