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- / ISBN・EAN: 4988126204525
感想・レビュー・書評
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1993年公開のアメリカ映画。
人口三千人ほどの田舎町、アイオワ州エンドーラ。
生まれてから24年間、この退屈な町を出たことがない青年ギルバートは小さな食料品店で働きながら、
給水塔に登るのが好きな知的障害を持つ弟アーニー、
夫が自殺した悲しみから過食症を病み250kgの巨体となった母親、
そして2人の姉妹の面倒を見ている。
袋小路のような毎日を
ただ生きるだけで精一杯のギルバートの前に、ある日トレーラーハウスで祖母と旅を続ける少女ベッキーが現れる。
ベッキーの出現によりギルバートの疲弊した心にも少しずつ変化が起こっていく……。
監督は大好きな「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」のラッセ・ハルストレム。
ジョニー・デップもレオナルド・ディカプリオも特別好きな俳優ではなかったけれど、
主人公ギルバートの心情が当時の自分の状況とあまりにもシンクロして、
何度となく観てしまう作品。
誰よりも強くありたいと願い、
誰よりも早く大人になりたかった10代の頃。
僕自身ギルバートと同じく
1日でも早く、退屈な町を抜け出すことをいつも夢見てた。
RCサクセションやルースターズに頭脳警察、
佐野元春や浜田省吾や尾崎豊やBLANKEY JET CITY、
Rolling Stones、Bruce Springsteen、The Clash、Tom Waits、Miles Davis、Chet Bakerなどの不良音楽を聴き、
ボードレールやランボーやケルアック、
ギンズバーグにバロウズにサリンジャーにチャンドラーに中原中也などの不良文学を読み漁り、
ヌーヴェルヴァーグやアメリカン・ニュー・シネマなんかを夜中に観ては家出を繰り返したり、
ギター担いでゲリラライブをしたり、
駆け落ちの約束をした女の子にすっぽかされて
一人で上京して旅館の布団部屋で
住み込みさせてもらったり。
ここではないどこかを夢見て、
逃走することにこそ意味があるのだと本気で思っていた。
今考えると若気の至りだけど(笑)、
なんやったんかな~、あの頃の焦燥感は(笑)(^^;)
壊れてしまいそうな家族を思い守るために
自分を犠牲にし、町に止まってきたギルバートの孤独はもちろんだけど、
(家族という存在が無意識下では重荷になってるという事実のやるせなさ…)
自分がいることでギルバートが自由になれないことを知り、
最後の決断に出る母の想いを考えると本当に辛い。
重く暗いテーマを毎作品ごとに扱いながら
しかしそこはラッセ・ハルストレム監督。
家族という集合体の現実や逃れられないしがらみを描きながらも、
それでも人は家族という絆に救われるという希望を見せて物語は終わる。
記憶に残る印象的なシーンが本当に多い映画だけど、
アニーが給水塔のハシゴを登ってしまう有名なシーンや
アーニーをお風呂に入れてギルバートが言う
「イジメられたら俺に言えよ」ってシーン。
「なぜ僕を選んだの」とギルバートが不倫相手である女性に聞いた時、『あなただったらずっと町から出て行かないでしょ』と言われ傷ついてしまうシーン、
ケーキをつまみ食いしたアーニーを見てたまりたまった苛立ちが爆発し、
ギルバートがアーニーを殴ってしまうシーン。
ベッキーが町を去る時、「どんな言葉を言えばいいか分からない」と戸惑うギルバートに、
いつもとは逆にアーニーがギルバートに教えた言葉。
「ありがとうって言えばいいんだよ」ってシーンも良かった。
特筆すべきは「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」の成功で
アメリカに招かれたラッセ・ハルストレム監督が、
本作ではハリウッドのこれからを担う若手俳優たちを迎えて製作したということ。
だから若手俳優たちの演技の瑞々しいこと。
それにしても今から考えるとデップとディカプリオが兄弟だなんて、
なんと贅沢なキャスティングだろう(笑)
ガリガリで痩せっぽちのディカプリオは当時19歳!
恐るべき10代の感性でアーニーになりきっているし、
かたやストレートの長髪姿のジョニー・デップは当時30歳。
抑制の効いた演技でギルバートが抱える空虚な心や閉塞感を見事に表現していた。
(“目は口ほどにモノを言う”を実感できる彼の目の演技はスゴい)
そしてギルバートが淡い恋心を抱くベッキーを演じたのは
当時まだ日本では無名に近かったジュリエット・ルイスで公開当時は20歳。
決して美人ではないし、この作品後はぶっ飛んでたりエキセントリックな役柄が多くなるのだけど、
それだけに本作の彼女の
自然体でチャーミングな魅力は貴重だし忘れがたく胸に残る。
人は3つに分かれるという
ギリシャの格言。
死んでる人。
生きてるけど死んでる人。
そして自らの意志で歩き出す、
海の向こうに旅立つ人。
ラストシーンでアーニーとともに歩き出したギルバートもまた
海の向こうに旅立つ人であったのかな。
「どこまでも どこまでも」と言いながら、
今も旅を続けてるのだろうか。
★雄大で美しい自然を捉えた映像と音楽も秀逸です。
『ギルバート・グレイプ』 予告編↓
https://www.youtube.com/watch?v=X6sLIP3908w&feature=youtube_gdata_player -
見どころ
くすぶった生活を送る青年を、寂れた町を絡めて表現した映像は見事。知的障害を持つ少年を演じたディカプリオの演技は必見。やり切れなさの中にも希望を見い出せる秀作だ。
ストーリー
アメリカの田舎町に住むギルバートは、知的障害を持つ弟と過食症の母、そしてふたりの妹の面倒を見て暮らしていた。ある日、トレーラーハウスで旅するベッキーと出会ったギルバートは、トレーラーが直るまで町に滞在するという彼女と急速に仲良くなるが…。
アーニーを演じるディカプリオの演技のすごさにめちゃくちゃ引き込まれる。演じてるように見えない。もともと、先天的に障がい者で、いつも楽しく自分の世界で生きている弟とその弟の世話をかいがいしくする兄にしか見えない。
兄があまりに天真爛漫で自分の言いつけを聞かない弟を、自身が自由に行動できない足かせであるかのように苛立ちを覚えて、ケーキを食べたことをきっかけに殴りつけた後、一晩明かした後にアーニーと顔を合わせる前に妹に、どんな様子かを尋ねるのだけれども、「本人に聞けば」と一蹴されてしまう。おそるおそる話しかけるとアーニーはいつもの彼と変わりなく、起こることもなく屈託なくギルバートに話しかけてくる。
言うことを聞かずにわがままであったり、怒ってへそを曲げていたりするわけではなく彼はずっと彼のままであり、その弟にわがままを押しつけていたのは自身であったと思い知らされる。
母の死の後、家を焼き払って一位所に留まり続けた彼が何かをする為に弟と歩き出せたエンディングはものすごくすばらしいものだと思う。 -
アメリカの片田舎で暮らす青年が主人公。
父親の自殺以来引きこもる母親、知的障害の弟、姉妹を支えるため地道に生きているが、旅をする女性と出会い徐々に変化していく。
93年公開ということで、俳優たちも若い。
家族を優先し夢を語ることもできない青年を演じるジョニー・デップは、諦めをまとった優しさを抑制の効いた演技で魅せる。周囲を振り回す18歳の知的障害者を演じるディカプリオも、無垢な表情と動きが天才的に素晴らしい。
大好きな映画『マイ ライフ アズ ア ドッグ』の監督だったことは、見終わってから知った。
なるほど、辛く悲しいはずの状況をあえて深刻ぶらず淡々とときにはユーモラスを交えて描き、無理がつもり積もって爆発する瞬間を凝縮させて見せるなど、共通している。やるせない状況だけに、悪意のある人が出てこないのもいい。
何の予備知識もなく、タイトルに覚えがあったためたまたまBSで観たのだが、哀しみを優しさでくるんで心の奥底を温めてくれるような、心地のいい作品に出会えてよかった。 -
田舎から一度も出ずに、自分の人生をすり減らして家族を支えてるって自分だったらできるかな?
ギルバートはベッキーに会えて本当に良かった。
あと、ディカプリオの演技にはオスカーを1000000個あげたい。 -
若い頃のジョニー・デップとレオナルドディカプリオがW主演している、
それだけで見応えのある作品。
見た目の美しさは信じないと言ったベッキーさん。あなたが言ってもその言葉は説得力に欠けます。それくらいに祖母と共に世界を放浪し、ギルバートの心の扉も開けようとする彼女は魅力的です。 -
TVにて
デカプリオ、ジョニーデップの演技力が光る。 -
プレミアムシネマで見たが、以前から見たかったがストーリーは、あまり、好きでないが、ジョニー・デップは、やはり、存在感があり、また、ディカプリオが演じるアーニーも本当の障碍者のようで素晴らしい演技でした。
しかし、やはり、弟がいるので、自由に行動できるかというと難しいと思った。 -
タイタニックを観た後にレオ様のことを知りたいと観た映画。レオ様天才だと思った。
ストーリーも共感できるところが多くて目が離せなかった。だけどもう少し何かが欲しかったなぁ。
レオ様とジョニーデップの演技に星4つ。 -
出演者後から見て驚きました。
全く気付きませんでした。
重たいテーマではありましたが、救いもありそれなりのストーリーでした。
メイプルマフィンさん、コメントありがとうございます!
あはは(笑)
「大~~~好き」って表現で
どれくらい好きかがリアルに伝わ...
メイプルマフィンさん、コメントありがとうございます!
あはは(笑)
「大~~~好き」って表現で
どれくらい好きかがリアルに伝わってきましたよ~(笑)
そうなんです!今から考えたら
嘘みたいに豪華なキャストだけど、当時はまだみんな新人と呼ばれる時期だったんですよね(笑)
今の若い子たちはこれを観ても
アーニーがディカプリオだとは気付かないみたいです(笑)
(今のディカのふくよかな風貌とこの映画の痩せっぽちの少年がどうも結びつかないみたい)
僕も同じく今よりこの頃(90年代)のデップが好き(笑)
「シザーハンズ」「妹の恋人」「エド・ウッド」「デッドマン」「フェイク」「スリーピー・ホロウ」「ショコラ」など、
今数えてみたら我ながら結構な数観ててビックリしました(笑)
ジュリエット・ルイスも当時は可愛かったですよね。
「ナチュラル・ボーン・キラーズ」に出たあたりから、
まるで役が乗り移ったみたいに(笑)、ぶっ飛んだキャラに変わっててコレにもビックリでした(笑)
あっ、YouTube映像は英語版だけど、美しい風景と音楽だけで僕は胸がきゅい~んってなりました( >_<)
大変ご無沙汰しております。
事情があって少しお休みしていたのですが、
先週からぼちぼちレビューを載せるこ...
大変ご無沙汰しております。
事情があって少しお休みしていたのですが、
先週からぼちぼちレビューを載せることにしました。ぼちぼち、ですが。
さて、何から行こうかしらと考えて、こちらにコメントさせていただきます。
何せ、あまりにも懐かしいので。(メイプルマフィンさんと同じですね・笑)
多くの感動が伝わってくる、とても素敵なレビューです!
お母さん役が、体型だけでアカデミーを取れそうな女優さんだったのがすごく印象的です。あとはジュリエット・ルイスの愛らしさ。
それから「いい人になりたい」とジョニー・デップがつぶやく場面が特に好きですね。
ああ、アメリカ映画もこういうセリフを主人公に言わせる時代になったんだと、危うく騙されそうになったものです(笑)
ラストが切なくてね。いろいろ考えさせられました。
簡単に着地点を差し出すラストじゃなかったことで、よけい記憶に残っているような。
同じ監督さんの作品では【サイダー・ハウス・ルール】も好きです。原作も読みました。
超有名なソウルシンガーさんが登場しますよ
。
円軌道の外さんも、いつかぜひご覧になってくださいませ。
nejidonさん、お久しぶりです!
こちらこそお返事遅くなってしまいすいませんでした!
それとかなり古いレビューにまで目を通してい...
nejidonさん、お久しぶりです!
こちらこそお返事遅くなってしまいすいませんでした!
それとかなり古いレビューにまで目を通していただき
本当にありがとうございます!(T-T)
嬉しいやら恥ずかしいやらで
本当に恐縮してます(^^;)
あっ、事情があってお休みされてたんですね。
いや、ついにnejidonさんにまで嫌われてしまったか~っと
なにげに凹んでましたよ~(笑)
(最近古くからのユーザーさんがみんないなくなっちゃうんで…)
お身体はお変わりないですか?
僕は暑い夏を乗り切らなければと
連日大食いしてしまい、
一番太ってはいけない時期に
5キロも太ってしまいました…(T_T)
また試合の前に落とすのが大変です(笑)
おお~っ!記念すべきnejidonさんの復活コメントが
この映画で僕も嬉しいです!(笑)
そうですそうです!
お母さん役だったスゴいおデブな人は女優ではなく
体型ありきで選ばれた素人さんやったみたいですよ。
一度見たら忘れられないくらい
とにかくインパクトありましたもんね(笑)
ジュリエット・ルイスは本当に愛らしかったです。
基本ショートカットの女の子が好きな僕は
この作品でかなりハマってしまい、
忘れないよう名前をメモしてました(笑)
あはは(笑)
「アメリカ映画もこういうセリフを主人公に言わせる時代になったんだと、危うく騙されそうになったものです(笑)」には笑いました!
僕も何度となくアメリカ映画に騙されてきたか…(笑)(^^;)
ジョニー・デップの「いい人になりたい」は他のキャラが言うとなんてことのないセリフだけど、
あの家族を一人背負って自分を殺してきた彼だからこそ、心に響くものがありましたよね。
仰るとおりですね。
僕も答えを提示して終わる映画より、余白を残して観客にいろんな思いを巡らせてくれる映画が好きなんで、この作品はずっと心に残ってます。
あっ、「サイダー・ハウス・ルール」は実は未見なんです(汗)(^^;)
わぁーっ!気になる!
有名なソウルシンガーって誰やろ?
ちょい役ですか?
ラッセ監督の作品は眼差しがあったかいですよね。
特に初期の作品はハリウッド映画のような媚びやあざとさがなくて
好きです(笑)
今DVDプレーヤーがぶっ壊れてるんで
復活しだい観てみますね!
これから暑さ本番なので
体調崩さぬようお身体御自愛くださいませ。
あとでそちらの本棚にも遊びに行きますね!
ではでは~(^^)