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- / ISBN・EAN: 4907953042698
感想・レビュー・書評
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一見して完璧でハイソサエティな生活を送っている男の抱える性依存症の側面を描いたヒューマンドラマ。
素晴らしかった。極限まで無駄をそぎ落としたシンプルで硬質な画面の迫力。一辺の無駄なカットもなく完成されている、という印象。
過去に起こった何らかの要因によって損なわれた心がその人を蝕み、本人の意思とはほとんど無関係に発生した脅迫的な飢餓感が歪んだ行動に走らせてしまうという構図を観察するような淡々とした視点で捉えている。
日本でのキャッチコピーは「男が隠したい恥(シェイム)とは?」というもので、これだとさも最後になにか凄い事実がわかるんだろうという感じがするが、結局兄妹が抱え込んでいる「何か」は最後まで描かれない。ひどいミスリードでキャッチコピーとしては最低だが、映画としてはこの「何か」を描かない構成にしたのは英断だったと感じる。重要なのは「何が起こったか」ではなく「何らかの要因が人をどのように歪ませるのか」であり、ありきたりなお涙頂戴を回避して原因をブラックボックスに格納してしまうことでかえって主人公の歪みや苦しみが強調され、観客は主人公と自分を重ね合わせやすくなっていると感じた。
ファスベンダーの力演は凄まじく、本当にいい役者さんだと思った。印象的ないくつかの長回しや、セリフ無しに心象を写す映像表現なども素晴らしかった。
この兄妹が救われることを祈らずにおれない気持ちが最高潮に達したところで唐突に幕を閉じるラストシーンの絶妙なさじ加減が見事。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
心をぎゅっと締め付ける、どうしようもなく孤独な映画だった。
音楽も撮り方も全体的に寂しい雰囲気が漂っており、余計に心に浸透するのかもしれない。
マイケル・ファスベンダーの泣きそうな(あるいは泣いてる)顔が悲し過ぎて辛い。
映画であんなに辛そうなセックスシーンは観たことが無い。
ブランドンとシシーがぶつかり合うシーンが痛い。
しかし、孤独を深めあってしまう2人に共感してしまう部分もあれば、圧倒もされる。
ブランドンはシシーのことをどう想っていたのか?
妹として見ていたのか、それとも…?
シシーを見つめる時のブランドンの瞳が印象的。この2人の関係性については永遠の議題にしたい。
好きなシーンはシシーの歌を生で聴いてブランドンが涙を零すシーン。 -
どうしようもなく弱くて、似てるから一緒にいたくないんだろう
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Huluにて鑑賞。
スティーブ・マックィーン監督作品。
セックス依存症の主人公・ブランドン。
でも、情愛のある相手は抱けない、、、つらい、つらすぎる。
困ったことにブランドンは、色男でお金もある。
ひたすら行きずりのセックスにのめりこむ。
結婚については「無意味だと」悟っている。
彼の深い悲しみは、妹の自殺を食い止めた後も、行き場がない。
幼い頃、妹とつくってしまった罪は、癒えぬまま。
「私たちは悪くない、居場所が悪かっただけ」 -
キャリーマリガンが歌うニューヨークニューヨークが最高
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人と深く付き合うことができないけど、ありのままの自分を誰かにさらけ出したい。この欲求を生んだ原因は過去にあるはずが、それは劇中で語られない。この兄妹が過去に背負ったものは一生癒されず、苦痛を燃やしながらその度に折り合いをつけてまた温め続けるしかないと思ったら生き地獄。
日常を切り取った起承転結の無いシンプルな風景が、その裏にあるものを想像させる。この作品の性描写はどちらかというと排泄描写に近くて虚しさが残る。