アリラン [DVD]

監督 : キム・ギドク 
出演 : キム・ギドク 
  • マクザム (2012年9月27日発売)
3.38
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4932545986722

感想・レビュー・書評

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  • 制作年:2011年
    監 督:キム・ギドク
    主 演:キム・ギドク
    時 間:91分
    音 声:韓:モノラル


    カンヌ、ベルリン、ヴェネチア、世界三大映画祭で高い評価を獲得してきた鬼才キム・ギドク。年1本以上のペースで精力的に映画を作り続けてきた彼が、2008年の「悲夢」を最後に表舞台から姿を消した。
    3 年間、彼は一体どこで何をしていたのか…?
    なぜ映画を撮らなかったのか…?
    その謎が明かされる。
    隠遁生活をおくる雪深い山小屋、栄光の影で人知れず傷を深めていった人間の心の叫びが、カメラに向かって語られる。
    しかし本作は、一監督の悲痛な心情の吐露だけでは終わらない。
    尋ねる自分と答える自分、そしてそれを客観的に分析する自分と、阿修羅像も顔負けの一人三役を演じるだけでなく、自身の影も登場させるなど、観客を楽しませる仕掛けが満載。
    さらには殺し屋にまでなってしまうという奇想天外な展開もスリリング。
    転んでもタダでは起きない精神と、鬼才の面目躍如な大胆不敵な演出で、異色のエンタテインメントへ昇華してゆく。
    人間誰しも自信をなくし、殻に閉じこもってしまいたくなるほどの痛みを抱えて生きている。
    その痛みと正面から向き合うことで、それもいつしか自分の血肉になるということを本作は証明した。
    ひとりの人間の心の叫びが、唯一無二の作品へと結実していく様はある種の感動を呼ぶ。
    『アリラン』とは、“自らを悟る”という意味を持つ代表的な朝鮮民謡。“アリラン 上り坂 下り坂”という歌詞は、上って下る人生そのものを表現している。
    その旋律は、監督自身の栄光と挫折だけでなく、現代を生き抜こうとする私たちの胸にも染み入ってくるに違いない。

  • 公式サイト:http://arirang-arirang.jp/

     ベルリン映画祭、ヴェネチア映画祭、カンヌ映画祭の3大国際映画祭でコンペティション上映を達成し、世界の映画界から高い評価を得ていた韓国のキム・ギドク監督。だが、2008年にオダギリ・ジョーを主演に迎えた「悲夢(Dream)」の完成後、消息を絶った。

     3年後、カンヌ国際映画祭に突然出品された本作は、「ある視点」部門で最優秀作品賞を受賞。隠遁の3年間を独白し、驚きと衝撃を与えた。

     片田舎の小高い丘に建つ一軒家。寒さを防ぐため家の中にテントを張り、猫一匹とのシンプルな独居生活をしながら、前作「悲夢」で一人の女優が危うく落命しそうになった事故を通して、自己を内観し、「人が事故死しそうになるような事故をお起こしてまでつくる映画とは何なのか」「人生にとって一番大事なものは何か」と厳しく自問自答する。

     やがて、自問自答する“自分”を揶揄するかのように激しい言葉をぶつけてくる“第2の自分”。また“自分”と“第2の自分”との激論を冷静に見つめている“第3の自分”が登場し肯定と内省を直視する。さらには、“影”が登場し、3様の“自分”と対話する。それほどまでに峻厳に自己の内面と存在を問い詰め、呻吟する姿は、苦悩するヨブに言葉を発する友人たちとのシーンさえ想起させられる。

     キム・ギドク監督は、当初は映画として上映する意思はなく、自己を見つめるために撮りためていたという。だが、撮影し自分の内面を表現するということ自体、映像化していくためのテクニックが必要であり、意識化を奮い起こしていく作業が伴っていくものだろう。

     海兵隊を除隊後、神学校を卒業し2年間教会献身し、牧師を目指した経験を持つキム・ギドク監督。このセルフドキュメンタリーにキリスト教的な挿話はほとんどないが、事故を通して人間の命の存在と自己を見つめる姿に、その真摯さを感じさせられる。自問自答の合間に、ときおり挿入される自作の絵画。その中にあるいばらの冠を着けられたキリストの絵。

     エスプレッソコーヒー機を自作するキム・ギドク監督は、何を思ってか、拳銃のユニットも自分で組み立てる。その拳銃を持って夜の街へ車を駆っていくキム・ギドク監督。そして、独白は“映画”になった。 

  • キム・ギドクはあまりに正直に、素直に、ものを作る人間はこうあるべきなのだと語り掛けている。胸を締めつけられました。

  • いやー、とことん面倒くさいおっさんだなぁ、という感想しかないっすね。キム・ギドクは「悲夢」撮影中のアクシデントにショックを憶えて、3年間、山の中で暮らした。そのときの「ドキュメンタリー映画」がこれだというんだけど、セルフ・ドキュメンタリーなんて本人も言っているとおり、半分は芝居ですよ。小芝居。作っているほうには「意外な発見」なんかないわけですからね。もちろん、自作を見て号泣するキム・ギドクの心情は嘘ではないが(それにしても、あそこのシーンで号泣するのかとちょっとびっくりした)、しかし、そこにはやはりつねに演出もあれば、計算も働いている。映画の中で本人が自虐的に言っているとおり、悪役を演じるのはいちばん簡単で、まさにこの映画ではキム・ギドク本人がベタな悪役をやっているわけですよ。まあ、そんなこんなで、監督の自意識過剰をそのまんま見せられる観客もたまったものじゃないが、しかし、このおっさんの面倒くささはそんなにいやじゃないんだよな。昔は日本の酒場にはこういう人ばかりだったしねぇ。というわけで個人的にはとても面白かったです。

  • 内省ってこういうことだよなあと自分の頭の中でなく、キム・ギドク監督の頭の中を見せてもらうことによって再確認した。自分の中には自分を見る沢山の視点があって、非難したり、否定したり、色々してくる。その中で自分を肯定するところまでいくのが癒やしなんだろう。その自分への問いかけから否定癒やしまでの課程がこの「アリラン」という映画なのだと思う。

  • キム・ギドク自身のセルフ・ドキュメンタリーといえばいいのか。でも何かフィクションめいたところもあって、一口には言えないが、この変な作品、愛着がわく。何より、自分自身を客観視する目がつねにあるのがいい。

    この映画は自分について語っているか、食べているか、何かを作っているか(監督の工具の扱いには感心。なんと、エスプレッソマシーンを自作してしまうほど)、の映画だけれども、後半、徐々にフィクションへと浮遊してゆく感じに、今までにない感覚をおぼえた。

  • キム・ギドクによるドキュメンタリーかつファンタジーな世界。

  • 本編にあまり関係ないので申し訳ないが、めっちゃエスプレッソが飲みたくなる!

  • 私が好きな監督で真っ先に名前を挙げるのがキム・ギドク
    『悲夢』以来パタリと姿を見せなくなったギドク氏のことが
    このセルフドキュメンタリーで描かれています。

    『春夏秋冬そして春』の自分が出ているシーンを観ながら
    号泣しているギドク氏に私もつられて泣いてしまった
    早く次の作品をみせて欲しい
    私も新しい作品を待ち望んでいる一人ですから


    【アリラン】予告編
    http://www.youtube.com/watch?v=x9VSOcfSCws

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